静清合併10年:70万都市の今/中 清水地区の商業機能衰退加速 /静岡
毎日新聞 2013年11月22日 地方版
◇環境整備進み再出発
快晴に恵まれた平日の昼下がり、路線バスや電車利用者の往来があるJR清水駅(静岡市清水区真砂町)西口ロータリーから駅前銀座商店街へ足を向けると、まるで路地裏に入ったような静けさに包まれる。450メートルのアーケード通りで人とすれ違うことはほとんどなく、下ろしたままのシャッターが目立つ。
「人出は落ちるところまで落ちた」。4月まで同商店街振興組合の理事長で、現在は県地域づくりアドバイザーを務める花井孝さん(69)はため息をつく。戦後の闇市として始まった商店街は1960〜70年代には買い物客であふれ、「雨の日でもにぎやかだった」と花井さんは懐かしむ。
全国的な傾向と同様に郊外型ショッピングセンターの台頭で、静岡、清水市による「静清合併」が浮上する前から駅前銀座の衰退は始まっていた。夜間の営業が中心の居酒屋チェーンが多く進出したこともあり、買い物だけでなく、交流の場でもあった商店街の機能が失われていった。旧蒲原、由比町も含めた区全体で見ても、経済産業省の調べでは、小売業年間販売額が97年の約2600億円から2007年は約2200億円に減少した。
03年の合併時、人口は静岡市の約47万人に対して清水市は約24万人。「規模の大きい静岡に買い物客が流れ、一極集中になるのは予想できた」。花井さんは合併が清水地区の商業機能の衰退を加速させたことを認める。
だが、合併前の新市建設計画で約束された清水駅前の再開発や上下水道の整備、小学校の耐震化など清水区のハード整備は旧市時代と比べて大きく進んだ。昨年完成した清水駅東口の清水文化会館マリナートは集客の核となり、花井さんは「街として発展していくために必要な礎ができた。あとはにぎわいをいかに生み出すかだ」と話す。今年5月には、清水駅周辺の経済人や自治会長らと市民団体「都心研究会」を設立し、にぎわい作りを模索している。
追い風要素もある。清水港周辺は施設老朽化や08年のリーマンショックで工場閉鎖が目立っていたが、大型のコンテナ船が入港できるターミナル整備が進み、17年度には中部横断自動車道が山梨県との間で開通する予定。物流拠点を構える企業も出始めた。