秘密保護法案:「知る権利」になお残る懸念
毎日新聞 2013年11月19日 07時30分
一方、政府・与党は18日、特定秘密の指定、延長、解除に首相の同意を義務付けるみんなの党の修正要求に対し、すべての特定秘密に対する首相同意は「現実的ではない」と否定したものの、統一的な運用基準案の作成や行政機関への指揮監督権を法案に明記する妥協案を示した。ただ、現行の「特別管理秘密」は約42万件に上る。政府は特定秘密はこれより少なくなるとしているが、総数の見通しは明らかになっていない。
◇国政調査権「下位」に
国会の国政調査権と特定秘密保護法案との関係も十分に整理されていない。同法案は、傍聴を認めない「秘密会」に限って国会に特定秘密を提供できると定めているが、情報を漏えいさせないための「保護措置」が設けられていることが前提。しかも、保護措置は行政機関の長が政令で決定し、国会にはそれを踏まえたルールの細目作りを委ねるに過ぎない。
国会法では、政府が国政調査権に基づく国会からの情報提供を拒む場合、まず国会に理由を釈明し、受け入れられなければ内閣が「国家の重大な利益に悪影響を及ぼす」旨の声明を出す必要がある。野党は「立法府より行政府が上位にある」(民主党の大島敦氏)と特定秘密保護法案への批判を強めている。
森雅子担当相は国会で「保護措置を講じた場合は原則提供する。(国会法より)国会に配慮した規定だ」と反論したが、保護措置の決定権を国会に譲る考えはない。一方で、国会議員が秘密会で知った特定秘密を本会議や委員会で故意に公表する場合について、森氏は「憲法の免責特権はたいへん重い」とも答弁しており、情報保護を巡ってはあいまいな部分が残る。
政府・与党は、特定秘密の指定、解除件数などの国会への報告を義務付ける法案修正で立法府の理解を得ようとしている。