秘密保護法案:「知る権利」になお残る懸念
毎日新聞 2013年11月19日 07時30分
◇恣意的運用に余地
特定秘密保護法案を巡る与党と日本維新の会、みんなの党との修正協議が大詰めを迎えた。与党は野党の一部を取り込む形で同法案を週内に衆院で可決し、会期内成立に道筋をつける構えだ。しかし、政府が特定秘密を恣意(しい)的に指定し、国民の「知る権利」が侵害されるのではないかという懸念は払拭(ふっしょく)されていない。慎重審議を求める世論は強く、修正内容によっては批判は野党にも向けられることになる。【木下訓明】
◇秘密拡大…永久延長も
特定秘密保護法案は「別表」で特定秘密として(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動(スパイなど)防止(4)テロ防止−−の4分野23項目を並べた。政府はこれを「限定列挙」だとして、秘密指定の範囲が無原則に広がる恐れはないと説明する。しかし、別表には「その他」という用語が11カ所含まれており、野党側は政府の裁量の余地が大きいと反発している。
一方、日本維新の会は、特定秘密の指定権限を内閣官房と外務、防衛両省だけに認めるよう主張する。これに対し、岡田広副内閣相は18日の参院国家安全保障特別委員会で「(政府内で)情報保全レベルに差異が生じ、秘密保護の共通ルールの確立という法案の趣旨を没却しかねない」と改めて否定的な見解を示した。
特定秘密の有効期間は5年以内で、延長が可能。30年を超える場合は内閣の承認を得る必要がある。政府はその後も最長5年ごとに内閣承認を義務付けることで、「永久に秘密になる」という批判をかわしたい考えだ。維新は30年を経過した特定秘密の全面指定解除を求めているが、与党幹部は18日、「情報提供者の問題があるし、暗号は30年後も使われているかもしれない。全部オープンにするのは無理だ」と語った。
◇指定 外部チェックなし
安倍晋三首相は16日、特定秘密の恣意的な指定を防ぐ観点から「第三者的な仕組みによって適切な運用を確保することも重要な課題だ」と表明したが、具体案には踏み込んでいない。
森雅子特定秘密保護法案担当相は国会で、維新の質問に対し「行政機関の内部に第三者的な機関を設けることを検討したい」と答弁した。しかし、政府・与党内では「政府が指定した特定秘密を外部の人がチェックするなんてあり得ない」(政府筋)という消極論が大勢。第三者機関を設置しても、秘密指定の妥当性を検証する権限まで認める可能性は低い。