覆面官僚作家が警告:特定秘密保護法は霞が関を劣化させる
2013年11月19日
第1次安倍晋三政権時の2007年、安全保障や外交上の秘密などのうち、重要項目を「特別管理秘密」とすると定めたが、その数は41万2931件(昨年末)。政府は「絞りをかけるから(特定秘密の件数は)より少なくなる」(11日、衆院特別委での森雅子特定秘密保護法案担当相の答弁)と説明している。若杉さんはこれにも疑いを持つ。「実は昨年6月、『原子力の憲法』と言われる原子力基本法が改正され、『我が国の安全保障に資する』ことも目的にする、との文言が滑り込みました。それを根拠に原発情報を丸ごと特定秘密化することが可能になった。核燃料サイクル推進派の官僚の入れ知恵ですが、事程左様に秘密が『少なくなる』保証なんて何もないんです」
隠された「不都合な真実」を明るみに出すのは、心ある公務員とメディアの共同作業のはずだ。その際、やはり厳罰化がボディーブローのように効いてくるのは避け難いとみる。「元からまともに取材に応じない官僚は『それは懲役10年もの』とか言って記者を蹴散らすだけでしょうが、このままでは話せることは話す誠実な官僚までが怖がって何も言わなくなる。僕だって正直、ビビりますよ。特定秘密は外国からもらった情報だけにすべきです」
「原発ホワイトアウト」では、電力業界の集金・政治献金システム、電力業界に飼い慣らされた政治家と官僚の姿をリアルに描いた。「法案が通れば僕も情報を得にくくなる。もう『告発』小説を書けなくなるかも……」
そうつぶやく若杉さん。晩秋の肌寒さがさらに増したように感じた。
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