韓国軍の合同参謀本部(合参)は22日、次期戦闘機(FX)の作戦要求性能を「先端ステルス性能」と「電子戦能力」に修正した。現在、世界で購入可能なステルス戦闘機は米国ロッキード・マーチン社のF35Aしかない。
韓国軍のステルス機選択は不可避の決定だ。ステルス機は、有事の際、ひそかに北朝鮮の戦略目標を攻撃できる。中国、日本、ロシアなど周辺国がいずれもステルス戦闘機を開発中、もしくは配備を予定している状況で、韓国だけがFXを非ステルス機にすることはできないのだ。さらに北朝鮮指導部は、米国のステルス戦闘機が韓半島(朝鮮半島)に展開すれば動きを隠すほど、恐怖心を抱いているという。F35Aが2018年から実戦配備されれば、北朝鮮の挑発を抑制する役割も果たせるだろう。
問題は、これから始まる導入交渉だ。F35A導入決定まで紆余(うよ)曲折を経たのは、価格があまりに高かったからだ。最先端の戦闘機は60機必要だが、確定した予算は8兆3000億ウォン(約7900億円)で、これでは40機しか買えない。配備後の運営維持にも巨額の費用が掛かる。しかし現在、F35Aの価格をめぐる追加交渉は容易ではないといわれる。
となると、できる限り技術を獲得し、22日に次期戦闘機と並んで合参が決定した韓国型戦闘機(KFX)開発事業に役立てなければならない。F35Aは、競合機種だったF15SEやユーロファイター・タイフーンに比べ、技術移転面で最も厳しかった。F15SEやユーロファイター・タイフーンは、AESAという最先端のレーダー技術を移転するという破格の条件も提示していた。日本は、配備するF35の9割を国内で生産する。韓国も、何があろうと、航空技術を画期的に高められるこのチャンスを逃してはならない。
しかし韓国の場合、「F35A以外に選択の余地はない」事態に追い込まれることで、金を出す「甲」のはずの韓国が、「甲」ではなく立場の弱い「乙」になってしまう可能性も否定できない。ステルス戦闘機は必要だが、その配備に国の死活が懸かっているわけではない。北朝鮮の空軍力は、現在の韓国軍の戦力でも十分に制圧可能で、北朝鮮地域の戦略目標は弾道ミサイル・巡航ミサイルでも攻撃できる。FX配備が遅れれば韓国空軍の戦力に空白が生じる恐れがあるが、利用可能な戦力を最大限運用し、韓米連合戦力を活用すればこの空白は埋められる。国民が納めた8兆3000億ウォンの税金をつぎ込みながらも技術移転がなされないという事態になった場合、韓国政府は思い切ってF35Aの配備決定を白紙にするという姿勢を持つべきだ。