磁気テープを活用している、静岡県藤枝市です。
住民データを管理する責任者、情報政策課の永田正秀さん。
東日本大震災をきっかけに、磁気テープを活用した、データの安全な保管を始めました。
被災地の自治体では、津波によって多くの住民情報が流され、その後の復興の大きな妨げになりました。
東海地震が起きれば、大きな揺れが想定される藤枝市。
目をつけたのは、磁気テープでした。
市民14万人分のデータが、3本のテープに収まるからです。
藤枝市は、これを友好都市の沖縄県宮古島市に送り、保管してもらっています。
藤枝市 情報政策課 永田正秀さん
「万が一、被災してしまった場合、このデータが守られて、いち早くシステムが復旧できる。
市民の安心安全を、確実に担保できる。」
大量のデータを記録する磁気テープを作る技術を持つのは、日本だけです。
そのメーカーの1つ、写真のフィルムなどを製造してきた会社です。
いったん、磁気テープが廃れたあとも、地道に研究を続けてきました。
その結果、7年前、性能を大幅に伸ばす技術を確立しました。
磁気テープの表面には、“磁性体”という小さな磁石の粒があり、これでデータを記録します。
その粒が小さいほど、より多くのデータを記録できます。
この会社では、粒の大きさを1ミリの5万分の1、20ナノメートルにすることに成功しました。
それまでの半分以下の大きさです。
鍵を握ったのは、切符の裏などに使われている“バリウムフェライト”という素材でした。
これを写真のフィルム製造で培った技術で、テープに薄く、均等に塗り、大容量化に成功したのです。
耐用年数も、ハードディスクの2倍以上です。
富士フイルム 記録メディア事業部長 柴田徳夫さん
「この磁石の粒は、まだまだ細かくしたり、特性を上げることができる。
こうしたプロセスは、非常に高度な技術が必要で、日本企業に優位性があると考えている。」
こうして生まれ変わった、磁気テープ。
飛躍のきっかけとなったのは、ビッグデータ時代の到来でした。
データ保存をビジネスにする、世界トップクラスのIT企業です。
保存すべきデータが急速に増える中、磁気テープへの注目が世界中で高まっているといいます。
その理由は、コストの低さです。
この会社の試算では、ハードディスクに比べ、10分の1で済むといいます。
日本オラクル 常務執行役員 飯尾光國さん
「(磁気)テープのいちばんのメリットとは、安価であるということ。
ディスク装置は、常に高回転している。
テープは使用しない時は、電源を消費しない。
つまり、電源をとめておける。
長期で、安価にデータを保存する意味では、今、マーケットで非常に需要が高まっている。」
専門家は、磁気テープの生産は、これからの日本の大きな武器になると指摘します。
国立情報学研究所 佐藤一郎教授
「磁気テープは、IT分野で日本が唯一、高いシェアを持っている製品といえる。
今後も、磁気テープの需要は、データ量の増加とともに増え続ける。
日本が果たす役割も、ますます大きくなる。」
鈴木
「こうして日本が生み出した、磁気テープ。
いち早くビッグデータ時代を迎えた欧米から先に、バックアップ用として利用が広がっているとしていますが、日本でも、銀行や病院など、なくしてならないデータがあるところで導入が始まっていて、私たちの生活を支えているということです。」
阿部
「日本の技術が新しい時代を支えているということで、メイド・イン・ジャパン復活の新しい希望になってほしいですね。」