サムスン電子が特許侵害賠償金としてアップルに支払わなければならない金額が2億9000万ドル(約290億円)増えた。米カリフォルニア州サンノゼの連邦北部地方裁判所に集まった陪審員8人は21日(現地時間)、サムスン電子がアップルに追加で賠償すべき金額を2億9000万ドルとする評決を下した。サムスン電子は昨年、アップルに6億4000万ドル(約650億円)を賠償せよとの判決を受けているため、総賠償額は9億3000万ドル(約940億円)になった。
だが、今回の評決に対しては「愛国裁判」「町内会並み」との批判が出ている。アップルの首席弁護士であるハロルド・マクエルヒニー氏は「小さいころは米国で作られたテレビでドラマを見たが、今やメード・イン・USAのテレビは消えてしまった。米国企業の知的財産権を保護しなかったために起こったことだ」と陪審員たちの愛国心に訴える弁論を展開した。さらに、「法を破った代価が罰金数セントだとしたらサムスン電子の『模倣戦略』は成功したということになる」とも言った。サムスン電子側弁護士のビル・プライス氏は「アップルは人種的偏見に直接訴えた。裁判の無効を宣言してほしい」と求めたが、裁判長のルーシー・コー判事はこれを受け入れなかった。弘益大学法学部のパン・ソクホ教授は「今回の裁判は陪審員制度が持つ根本的な問題をよく示している。陪審員制度は愛国心や地域感情が介入する余地が大きい」と述べた。
アップル本社があるクパチーノからサンノゼの連邦北部地方裁判所までの距離は車でわずか20分。米国を代表する企業のアップルは、当然のことながら地元のトップ企業だ。地元住民からなる陪審員がアップルに有利な評決を下すであろうことは十分予想できていた。だが、「そうしたことを考慮しても今回の賠償額算定は行き過ぎだ」と指摘の声が上がっている。米国特許商標庁は19日、サムスン電子の賠償額を定める根拠となる五つの特許の一つ「ピンチズーム」が無効だとの決定を下した。サムスン電子は直ちに裁判を中止するよう要請したが、裁判所はこれを受け入れなかった。ピンチズームとはスマートフォンのタッチパネルに2本の指を置き、押し広げたり狭めたりして画面を拡大・縮小する機能のことだ。
評決結果が出ると、アップルはすぐに「今回の訴訟の争点は金額や特許ではなく、人々が愛する製品を開発するための技術革新や努力をどのように評価するかだった。こうした価値に金額を付けることはできないが、私たちは陪審員団が『まねをするという行為には金がかかる』ということをサムスンに示してくださったことに感謝する」とのコメントを発表した。
しかし、サムスン電子もすぐに反撃を開始した。陪審員団評決が出た直後、サムスン電子は「米国特許商標庁が無効だと判定した特許を主な根拠として行われた今回の評決は受け入れるわけにいかない。異議申立てや控訴することで対応していくつもりだ」との見解を明らかにした。