ゆりだんし・三次元男の娘についてやんわり雑感
2013.08.01 Thursday
ゆりだんしの発売にあたって、「男の娘」という言葉について
ずいぶんと取りざたされたので、
ちょっと思ったことをかいておきますね。
まず、否定からかかっている人は
「男の娘=二次元」のもの、という認識で
生理的に三次元を受付けない傾向が強いです。
ところが、この言葉は女装業界でも一般的に使用されていて
まさしく次元が違う意味を持っています。
表記は違いますが、女装専門誌で
「オトコノコ時代」というものがありますし。
<男の娘の深い溝>
■二次元「男の娘」
→まるで女の子のように見える、中性的な美少年。
■三次元「男の娘」
→若く女の子のような女装男子
または性自認が男でありながら女装する男性。
この、三次元男の娘については女装業界内でも認識が別れていますが。
で、ここがすごく大事なんですが、
二次元男の娘は元々男性の願望をもとに生まれた
「男性のための偶像」なのに対して、
三次元男の娘は自分自身の願望をもとに生まれた
「本人の理想のひとつの形」。
つまり、二次元男の娘は読者の願望、嗜好に沿って
少女に生えただけになったり男らしい僕っ子に変容するのに対して
三次元男の娘の意識は全て自分自身に向いています。
他人のために女の子の格好をしないわけで、
そりゃあもともと相容れない性質のものなんです。
ーー実はこの中間に「男の娘AV」というものがありますが、割愛。
じゃあなんで「男の娘」が多面的な意味を持ったのか?
私が調べた範囲の話で恐縮ですが、
二次元の男の娘に憧れた男性が女装を始めて「男の娘」を目指したり、
従来の「女装子」という表現を嫌った人が「男の娘」と自称したりしたんですね。
ここ数年で女装が大きくメディアに取り上げられ、
「男の娘」という言葉が女装業界の新しいアイコン、
概念となって久しいのですが、
今回のような写真集に反発が大きくある理由のひとつとして
「男の娘」が多面的な意味を持ちすぎていることにあると考えています。
なまじっかラベリングされたばかりに、
「こんなの○○じゃない」とはなから否定してかかられ
悪とばかりに罵詈雑言を浴びせられ、
そのものの本質に全く目を向けられることがないのは
本当に残念なことです。
しかし男の娘という言葉の出自が二次元である以上、
表現する側の立場としてそれを無視できません。
だけれども、言葉は文化の一つで、多様性を持って
はじめて発展するものだと考えています。
女装する男性については、けんかにならない
新しい言葉が自然発生的に出てくるといいなあ、と思っています。
ゆりだんしとは少し違う話題になりますが、
わからないものについて、知っている概念や言葉の意味を
そのままあてはめるのではなく、
わからないものは、そのままそういうものと
いったん見てみてはいかがでしょうか。
あまり認識されていないけど、性別だって
男と女だけじゃなく、その間が無限に近いくらいあるんですよ。
男と男だからホモだとか、
女装だから女に変身しきらないといけないとか、
そういう固定概念がしゃらくさいのです。
また整った顔かたちだけが可愛いのとは違います。
この写真集で読者が感じるものがあったなら、
カテゴライズしないで素直に受け止め、
それから自分が何にひっかかったのか考えてほしいな。
勿論、全面的に認めて褒めて!なんてことは全くなくて、
嫌なら見て欲しくないし、表現が許せないなら
意見をきちんとした形で私に言ってくれれば真摯に受け止めます。
それが、ものをつくる上での責任の一部だと思っています。
ただ、自分が相容れないものを
単純に非難し排除していく姿勢は、
自らの価値観を細らせ、世界が閉じていきます。
女装の賛否はおいても、そこは知って欲しいです。
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しかしゆりだんしが発売されて反響が大きい中で驚くのは、
ネットで何千RTされてコンセプトに賛否両論出ようと、
買った人の好意的な感想数件以外は
リプもメールも来ていないことなんですよね。
もし自分がその文化を大切にしている人を傷つけたのなら
きちんと話し合うつもりがあったのですが・・・。
わざわざコンタクトをとるまで
写真集に関心がないといえばまさしくそうなのでしょうが、
いきりたって「これは違う」と口汚く否定するくらいだから、
「男の娘」によほど思い入れがあるんだな、と思っていたので
少し困惑しています。
私が表現しようと思った「男の娘」によって傷ついた人がいたなら、
きちんと話を聞いて、対応したいと思います。
ただ、モデルさんたちに対して
写真集を見ることもなく、背景を知ることもなく
罵詈雑言を浴びせるのは本当にやめてほしい。
彼女たちは、わたしの気持ちに一生懸命応えてくれただけです。
「男の娘かくあるべき」という意見がある人は
わたしへ直接送ってくれたら、きちんとお返事しますので。
(名前と連絡先くらいは書いてくださいね)
info @ taiyodo.in
大成功おめでとうございます。
この世界には人の嗜好を分類したがったり、正しい、正しくない、と二律背反的に正邪を決めたがる人がいらっしゃるようですが、その人の心が狭いことの裏返しだと思います。
特に女装の世界はマニア度も高いので、とりわけ手厳しい方もおられるようで。
気になさらずご自分の世界の表現を行われてください。
意図しない層からだとしても、人の興味関心を引き、結果的に注目されるのは商業的な意味では成功だと思っています。
これかけ反響があるのははじめてでおたおたしてしまいましたが、脊髄反射的に文句を言う人の多くが「自分の好きなものじゃなかったから駄々をこねる子供」なんだなあと思ってからは、達観しています(笑)
ひきつづき、制作活動がんばります!
コメントどうもありがとうございました。