ナショナル ジオグラフィック日本版 11月19日(火)16時51分配信
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「海底紳士スケおじさん」(作:オクムラサトシ) |
日本の国立科学博物館が中心となった研究グループが、世界で初めてダイオウイカの撮影に成功したことで深海への関心が大いに高まったが、深海にはまだまだ奇妙な生き物が生息している。そこで、ユニークな深海生物を数多く紹介した『深海探検』(洋泉社)の著者である斉藤勝司さんに、これから注目される可能性が高い深海生物のベスト5を推してもらった。
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5位
●ニシオンデンザメ
ツノザメ目オンデンザメ科 水深500〜1200mに生息
通常、水深1200mまでの深海に暮らしているのだが、エサを求めて浅海にまで浮上してくることがある。胃の内容物を調査すると深海性の魚、イカだけでなく、アザラシのような海棲ほ乳類を捕食していることが明らかになっている。ただし、泳ぐ速度が極端に遅く、魚体に速度計を取り付けて測ったところ、速くても時速3km程度。平均すると時速1km程度で“世界一遅く泳ぐ魚”であった。これほどゆっくりとしか泳げないのに素早く泳げるアザラシをどのように捕食したかは明らかになっていない。
4位
●ミズヒキイカ
ツツイカ目ミズヒキイカ科 水深2000〜5000mに生息
巨大なイカというと誰もがダイオウイカを思い出すだろうが、このミズヒキイカも決して引けを取らない。ただし、胴体部(外套)が2m近くにまで達するダイオオイカと違って、ミズヒキイカの外套はわずかに10cm程度しかない。その代りに足が異常に長く、大きなものになると全長は7mにも達する。そのためイカというより、クラゲと呼んだ方がいい見た目で糸を延ばしたような姿からミズヒキイカと名付けられた。
3位
●オオタルマワシ
端脚目タルマワシ科 水深数100mまでに生息
身体がゼラチン質でできたホヤの仲間を好んで捕食するのだが、内部をほじくりだして食べた後、外皮を住処として利用する。外皮が樽のような形をしていることから「大樽回し」と名付けられた。体長はわずか3cmほどの小さな生物だが、ホヤの身体の中に入り込む生体から「深海のエイリアン」と呼ばれることがある。
2位
●デメニギス
ニギス目デメニギス科 水深400〜800mに生息
新種として報告されたのは、今から70年以上前の1939年のことだが、生きた姿が観察されたのは、つい最近の2004年。その時、多くの研究者を驚かせたのは頭部が透明の膜に覆われていることだった。内部は液体で満たされているので、管状の目などが透けて見えるほど。過去、海岸に打ち上げられた死体は見つかっていたが、そのすべてでドーム状の膜が失われていたため、本来の姿が知られぬままにいたようだ。
1位
●ウロコフネタマガイ
ネオンファルス目ネオンファルス科 水深2500mの深海底に生息
2001年にインド洋の深海2500mの海底で発見された巻貝で、貝から出た足がウロコに覆われている。そのため英語では「ウロコのある足(スケーリーフット)」と名付けられた。しかも、ウロコの表面は硫化鉄でコーティングされていたため、「鉄のウロコを持つ巻貝」として注目された。2009年にはウロコが硫化鉄で覆われていない白いウロコフネタマガイも見つかっている。なお、スケーリーフットをモチーフにした「海底紳士スケおじさん」なる微妙なゆるキャラも(一部で?)話題となっている。
ベスト5推し文・斉藤勝司
最終更新:11月19日(火)18時55分
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