安重根:「英雄視」韓国と「反発」日本が応酬 深まる溝
毎日新聞 2013年11月19日 20時13分(最終更新 11月19日 21時48分)
初代韓国統監を務めた伊藤博文を1909年に暗殺した安重根(アン・ジュングン)の評価が日韓両国の新たな火種となっている。安重根を英雄視する韓国は、暗殺現場のハルビン駅(現・中国黒竜江省)に記念碑を作るよう中国に働きかけているが、日本政府はこれに反発。日韓両政府は19日、この問題をめぐって応酬を繰り広げた。
きっかけは韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が18日、ソウルで会談した中国の楊潔篪(よう・けつち)国務委員に、記念碑設置が「両国の協力でうまく進んでいる」と謝意を示したことだった。朴氏は6月の訪中時、習近平国家主席に、記念碑の設置を要請していた。
これについて、菅義偉官房長官は19日の記者会見で「わが国は、安重根は犯罪者であると韓国政府にこれまでも伝えている」と語り、容認できないとの考えを強調。「このような動きは日韓関係のためにならないのではないか」と述べ、韓国をけん制した。
これを受け、韓国外務省の報道官は記者会見で「(安重根は)わが国の独立と東洋の平和に命をかけた方だ。犯罪者という表現は大変遺憾だ」と菅氏の発言を批判し、歴史問題で「謙虚な反省」を要求。さすがに菅氏はその後の会見で「過剰反応かと思う」と、やんわり反論するにとどめたが、日韓両政府の溝は一層深まった。
中国外務省の洪磊副報道局長は同日の記者会見で、安重根の石碑を建てる計画について「安重根は歴史上有名な抗日の義士で、中国でも尊重されている」と述べた。【ソウル大貫智子、鈴木美穂】