ジュロヴスキーコーチ(右)と並んでランニングする闘莉王=トヨタスポーツセンターで(宮崎厚志撮影)
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名古屋グランパスのDF田中マルクス闘莉王(32)が21日、闘病の末に14歳の若さで17日に亡くなった友人の田沼烈くんの遺志を継ぎ、全力プレーを見せていくことを誓った。昨年難病の手術費用捻出に奔走し、その後も友達として交流してきただけにショックは大きいが、「あの人が頑張った魂は勉強になっているし、これからに生かしたい」と語り、全力で生きていく決意を明かした。
自分のユニホームを枕元に飾って最後まで病気と闘った烈くんを思い、張り裂けそうな感情の中で闘莉王は言葉を絞り出した。「この数日間ずっと悲しかった。オレは絶対あの人のことを忘れないし、オレの心には永遠に生きてる。あの人が頑張った魂は勉強になっているし、これからに生かしたい」。必死で生き抜こうとする少年の姿に接し続けたこの1年半。プロとして、人として、「勉強になった」とかみしめた。
浦和時代から闘莉王の大ファンだったという烈くんは『肝ラブドイド腫瘍』という症例の極めて少ない悪性の小児がんの一種を患い、闘莉王、楢崎、巻スカウトの3人が中心になって手術費用を募る活動を行った。そのかいあって今年1月末に手術が成功し、6月に退院。しかし今年7月に再発し、再入院していた。
最後に会ったのは亡くなる1週間前だった。10日の横浜Mとのアウェー戦に招待し、首位相手に勝利をプレゼントした。烈くんの状態は良くなかったが、どうしても闘莉王に会いたいという思いで来場。GK楢崎、横浜Mの元日本代表DF中沢も含めて歓談した。闘莉王は24日に東京都内で行われる葬儀には「悲しすぎて行けない」と欠席する予定。それでも「自分としては横浜で会えただけでも良かった。元気ではなかったけど、笑ってくれた」と振り返った。
目の前には試合がある。烈くんから受け継いだものを、表現する場所だ。「本当に烈くんが喜んでくれるように、いいパフォーマンスを残り試合は出したい」。苦しい中でも笑顔を忘れなかった小さな友達が天国から見守ってくれると信じて、今季最後の3戦に全力を尽くす。 (宮崎厚志)
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