猪瀬知事:「個人的な借用」徳洲会から5000万円

毎日新聞 2013年11月22日 22時06分(最終更新 11月22日 23時04分)

記者の厳しい質問に、時折言葉に詰まりながら答える猪瀬直樹東京都知事=東京都庁で2013年11月22日午後3時34分、梅村直承撮影
記者の厳しい質問に、時折言葉に詰まりながら答える猪瀬直樹東京都知事=東京都庁で2013年11月22日午後3時34分、梅村直承撮影

 東京都の猪瀬直樹知事(67)が、公職選挙法違反事件で幹部らが逮捕された医療法人「徳洲会」グループ側から昨年12月の都知事選前に5000万円の資金提供を受けていた問題で、猪瀬氏は22日の記者会見で「個人としての借り入れで、選挙に使うつもりはなかった」と釈明し、公職選挙法などには抵触しないとの見解を示した。返却が今年9月に同グループが東京地検特捜部の強制捜査を受けた後になった点については「たまたま」とする一方で「返済するのがやや遅れてしまったのは大変申し訳なかった」と謝罪した。【川口裕之】

 ◇収支報告書に記載なし

 都の条例は都知事に対し、知事に就任した時点の借入金などを資産報告書に記載するよう定めているが、猪瀬氏は5000万円について記載しておらず、同日に修正した。条例違反に対する罰則はない。

 猪瀬氏によると、資金提供を受けたのは昨年11月。徳田虎雄・前徳洲会理事長が入院する神奈川県鎌倉市の病院を訪れ、知事選出馬のあいさつをした。その後、徳洲会側から連絡を受けて徳田氏の次男である毅衆院議員から現金で5000万円を受け取り、借用書を書いた。無利子・無担保だった。場所は「議員会館だったかもしれない」と述べ、虎雄氏への訪問の際には仲介者として新右翼団体「一水会」の木村三浩代表が立ち会ったという。

 受け取った現金は、妻(今年7月に死亡)名義の貸金庫に入れたまま使用せず、選挙後の今年1〜2月に徳洲会側へ返済する旨を伝えたという。だが、妻の病気や徳洲会側の都合などで返済が遅れ、強制捜査後の9月になって特別秘書が現金をそのまま返却。この経緯を知っているのは「自分と妻だけ」で、選挙責任者や会計責任者にも伝えていなかったという。

 また、5000万円の受領は「申し出を断るのは失礼」との思いがあったと説明。選挙費用や便宜の見返りを期待しての提供だったことはないと強調。一方で「自分の預金が底を突くかもしれないという思いがどこかにあった」「当時は政治家としての意識が弱かった。借りるべきではなかった」とも述べた。

 知事選の収支報告書によると、猪瀬氏は自己負担の3000万円と後援組織からの寄付50万円を運動費用に充て、2113万円余を使った。猪瀬氏の資金管理団体の2012年収支報告書にも徳洲会関連の寄付や借入金の記載はなかった。

最新写真特集