サムスンに巨額賠償の可能性11月22日 11時30分
アメリカのアップルと韓国のサムスン電子がスマートフォンなどに使われる特許を巡って争っている裁判でアメリカ・カリフォルニア州の裁判所の陪審は、21日、賠償額を見直す評決を出し、サムスンは日本円で940億円に上る、巨額の賠償を迫られる可能性が高まっています。
アップルとサムスン電子は、スマートフォンやタブレット端末のデザインや技術など互いの特許を巡って世界各地の裁判所で争っており、このうちカリフォルニア州の連邦地方裁判所の陪審は、去年8月、アップルの主張を認めサムスンに対し、10億4900万ドル、日本円で1060億円の巨額の賠償を支払うべきだという評決を出しました。
これについて連邦地方裁判所は特許侵害の期間の認定などに誤りがあったとして陪審が見積もった賠償額を見直すことを決め、別の陪審のもとで再審理が行われました。
この結果、陪審は21日、サムスンが支払う賠償額を当初の決定から1億ドル余り減額する評決を出し、賠償額は合わせて9億3000万ドル、日本円で940億円が認定されました。
裁判所は、今回の評決を踏まえて最終的に判決を言い渡すことにしていますが、サムスンは携帯端末を巡る特許訴訟では過去に例のない巨額な賠償を迫られる可能性が高まっています。
この裁判はITの分野でシェアを競う2つのメーカーが正面から争う裁判として世界的な注目を集めていました。
アップル「陪審に感謝」
今回の陪審評決についてアップルは「アップルがこの裁判で訴えたいのは、単なる特許や賠償金の問題ではなく、利用者に愛される製品を生み出すための革新性やそのための努力の重要性だ。これを金額で計ることは不可能ともいえるが、サムスンによる特許侵害の損失を金額で表した陪審に感謝したい」とコメントしています。
サムスン「評決の結果に失望」
一方のサムスンは、「評決の結果に失望している。今後、上訴に向けた準備を進めていくが、これからも世界中の利用者に愛される革新的な技術やすばらしい製品を生み出し続けたい」とコメントしています。
アップルとサムスンの巨額特許訴訟経緯
カリフォルニア州の連邦地方裁判所では、去年8月に陪審がサムスン電子に支払うよう命じた賠償額、10億4900万ドルのうち4割に相当する4億1000万ドルについて賠償額の算定の方法に誤りがあったとして先週から、再審理が行われていました。
この中でアップルは、サムスンに対して3億8000万ドルを支払うよう求めたのに対して、サムスン側は賠償額は5200万ドルにとどまると主張し、両社には大きな隔たりがありました。
なかでもアップルは、アメリカのテレビ産業が衰退したのは外国企業から知的財産を守れなかったためだとして、今回、アップルの特許が保護されなければアメリカ経済にも悪影響を及ぼすと主張しました。
これに対し、サムスンは人種差別的な発言だとして審理の無効を訴える場面もありましたが認められませんでした。
また、サムスンはアップル側が特許の侵害だと主張する、携帯端末の画面を2本の指で拡大したり縮小したりする技術に関わる特許は、大部分がアメリカの特許商標庁によって無効とされており、特許の侵害には当たらないと主張しましたが、これも裁判所によって却下されました。
陪審は21日、サムスンが支払う賠償額を1億ドル余り減額する評決を下したものの、アップル側の主張の多くが認められており、アメリカのメディアの間ではアップルの事実上の勝利との見方が大勢です。
今回、特許侵害が認定されたサムスンの商品は旧型のものが大半で、販売に与える影響は大きくないとみられていますが、日本円で940億円に上る巨額の賠償の支払いを迫られる可能性が高まったことで、業績への影響だけでなく、サムスンのブランドイメージにも悪影響を及ぼすのではないかと指摘されています。
アップルとサムスンの特許を巡る裁判は、世界各地で続いていますが、カリフォルニア州の裁判所では今回の審理で対象にならなかった別の製品についても来年、改めて審理が行われる予定で、裁判での争いがどこまで続くのか注目されます。
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