平成25年11月17日内外記者会見
【安倍総理冒頭発言】
今回訪問した、ラオス、そしてカンボジアは、ともに内戦の苦難を乗り越え、近年目覚ましい発展を遂げています。
高田晴行警視と中田厚仁さん。カンボジアの平和のために命を捧げた、二人の日本人を、私は、心から誇りに思います。
今回、カンボジアとの間で、PKOに関する協力協定を締結致しましたが、お二人の遺志を引き継ぎ、日本は、これからも、この地域のみならず、世界の平和と安定に貢献する国であらねばならないと思います。その思いを、新たにする旅となりました。
今年、カンボジアやラオスでは洪水によって、大きな被害が発生しました。フィリピンでも、台風による壊滅的な被害が発生しています。被災した方々には、心よりお見舞いを申し上げる次第であります。日本は、できる限りの支援を行う決意です。
災害対応は、日本の知見が活かせる分野です。日本とASEANの災害協力の枠組みをさらに強化することも、この地域の平和と安定に大きな役割を果たすものと考えます。
保健・医療分野でも、日本が大きく貢献できる、そういう分野であると考えます。日本が長年支援してきた、カンボジアの「母子保健センター」は、たくさんのお母さんと子どもの命を救ってきました。日本の協力で、乳幼児の死亡率が半減致しました。
江上由里子さんをはじめ、日本人女性が、こうした協力をリードしてきました。江上さんたちの活躍に、強く感銘を受けるとともに、女性の活躍こそが、よりよい社会をつくっていく原動力になる。そのことを、改めて実感致しました。
プノンペンに、日本の医療技術を活かした「救急救命センター」の海外第1号を設立致します。
ラオス、カンボジア両国と、保健・医療分野での協力に関する覚書に署名が行われました。
今後とも、日本の医療システムを世界に展開することで、世界の保健レベルの向上に貢献したいと考えています。
日本が、これまで以上に、世界の平和と安定に積極的に貢献する。こうした「積極的平和主義」の考え方については、今回、ラオスのトンシン首相、カンボジアのフン・セン首相から、力強い支持をいただきました。
これからも、首脳同士が直接話し合うことによって、互いの信頼を築きながら、国際社会の平和と安定に積極的に貢献する。そうした外交を展開していきたいと思います。
ASEANは「世界の成長センター」であり、ASEANの力強い成長なくして、我が国の成長もありません。
ラオスとカンボジアは、東西経済回廊、南部経済回廊の中心に位置し、ASEANを東西につなぐ要衝です。他のメンバー国より遅れて、ASEANに加わった両国の成長の底上げは、ASEANからの要請でもあります。この両国の成長により、ASEAN全体に大きな発展が期待できます。
我が国として、この地域でのインフラ整備を支援するとともに、民間企業の進出を後押ししてまいります。
同時に、「観光立国」を目指す我が国にとって、ラオスとカンボジアの皆さんにも、もっと日本を訪れていただきたいと思います。明日から、両国に対しても、マルチビザを導入します。
1月のベトナム訪問から始まり、ここラオスで、ASEAN10か国すべてを訪れ、直接首脳と話し合う機会を得ました。
さまざまな課題について直接の話し合いで、互いの信頼を築きあげていくことから、理解が深まっていく。これまでの首脳会談で、そのことを強く実感しました。
来月には、全てのASEAN首脳を東京にお招きし、友好協力40周年を記念し、特別首脳会議を開催する。「ASEANの年」の総仕上げとして、友好関係の新たなビジョンを示したいと思います。
これから1か月、私がこれまで10ヵ国で受けた歓待に応えられるよう、日本の「おもてなし」の精神で準備をしてまいります。
【質疑応答】
(共同通信 橋本記者)
安倍総理は今回の訪問で、就任から1年足らずでASEAN10カ国すべてを訪れた。ことし12月に日ASEAN特別首脳会談が予定されているが、対ASEAN関係の発展を目指す総理の戦略的狙いはどこにあるのか。日ASEANの協力関係を将来的にどのようなレベルまで引き上げたいのか。
また、安倍政権は現在、積極的平和主義や集団的自衛権行使容認に関する取組を各国に説明し、理解を求めているが、ASEAN各国から理解は得られたとの認識か。他方、中国は外務省のスポークスマンが、「戦後国際秩序に対する日本のいかなる挑戦も警戒に値する」と発言するなど、批判を強めているが、中国にどのように理解と協力を求める考えか。
(安倍総理)
私は首相に就任以来、地球儀を俯瞰する戦略的な外交を進めてまいりました。ASEANは、常に我が国にとって特別なパートナーとして、その中心にありました。その証に、本年、5回もASEANを訪問し、そして10カ国全て歴訪致しました。
40年にわたる友好と協力によって、日本とASEANの間には、深い絆がある。今や世界経済の牽引役となったASEANは、日本の経済の再生に欠かせない友人である。同時に、アジアの海を自由で開かれた、安定したものにするための重要なパートナーでもあります。
日本とASEANは、互いのための協力にとどまらず、手を携え、地域や世界の平和と繁栄に貢献していく関係に成熟しつつあります。来月には東京で特別首脳会議を開催するが、日本とASEANの関係を、新たな次元に引き上げていくよい機会としたいと思います。
「積極的平和主義」に基づく日本の安全保障政策については、冒頭に申し上げたとおり、カンボジア、ラオスの両首脳から、力強いご支持をいただきました。ASEAN諸国や或いは欧米諸国からも、幅広い支持があります。そして、期待も表明されています。
我が国は、戦後70年近くにわたり、自由で開かれた、豊かで繁栄する、ルールに基づく、国際秩序の構築に大きく貢献をしてきました。我が国の平和国家としての歩みは不変であり、「積極的平和主義」の考えの下、世界の平和と安定に、今後、より一層積極的に貢献をしていく考えであります。この考え方を関係する諸国に対し、今後とも、丁寧にそしてしっかりと説明してまいります。
(ラオス国営テレビ ヴォンチャンビー記者)
ラオス経済の発展のためには、中小企業のような民間セクターの強化が重要。人材育成及び優秀な人材供給が不可欠。この分野での日本の支援の可能性はあるか。
(安倍総理)
着実な経済発展のためには民間セクターの活力が不可欠です。近年、多くの日本企業がラオスに進出し、ラオス経済の発展に貢献をしていることを嬉しく思います。同時に、日本はラオスにおいて、様々なビジネス分野の人材育成プロジェクトや職業訓練を実施してまいりました。
先ほど、トンシン首相との会談でもお伝えしましたが、日本はラオスの経済・社会発展に向けた取組を引き続き支援をしていきます。我々は、人材の育成こそ最も重要な分野であると考えていますが、今後も要請に応じて、人材育成分野の支援を積極的に検討していく考えです。
(NHK 田中記者)
特定秘密保全法案について、修正協議も大詰めを迎えているが、「基本的人権を侵す恐れがあり、修正で済ますべきではない」との懸念もあるが、そうした懸念に対してどう答えるか。また、総理はきのう、「特定秘密」の恣意的な指定を防ぐため、「第三者的な仕組みを作ることも重要な課題だ」と述べたが、日本維新の会が求めている第三者機関を設置するということか。また、みんなの党が求める、特定秘密の指定や解除を内閣が一元的に管理するという提案をどう考えるか。そして、野党側との修正協議が不調に終わった場合、与党だけでも衆議院を通過させる考えはあるのか。
(安倍総理)
外国との情報共有は、情報保全が確立されていることが前提です。また、政府部内の情報共有が促進され、特に、国家安全保障会議の審議がより効率的に行われるためには、秘密保護に関する共通ルールの確立が不可欠です。
一方で、国民の知る権利や報道の自由についての配慮も重要であると認識しています。様々なご意見を踏まえながら、この法案を早期に成立させ、特に秘匿性の高い安全保障に関する情報の保護を図ることにより、我が国及び国民の安全を確保することができると考えています。
特定秘密の指定に当たっては、恣意的な指定がなされてはいけない。これはこの前述べたとおりです。そのために、この法律においては、重層的な仕組みによって、恣意的な指定がなされないようにされています。
一方、昨日申し上げたとおり、現在、与野党で、制度の適切な運用を確保するため、第三者的仕組みによる適切な運用の確保、そして政府における一体的な管理・運用の在り方など、重要な課題について、建設的な議論が行われているところです。このような議論を踏まえて、国民のため、よりよい制度ができることを望んでいる。
今まさに国会において、与野党において修正の協議がなされており、政府としても勿論与党としてもできるだけ多くの方々に、この法案の成立に参加、そして協力をしていただきたいと思います。
(ラオス国営通信 シースラート記者)
ASEANは2015年の共同体発足に向けて取り組んでいるが、ASEAN地域内で開発上の格差が見られる。地域内の公正な競争の実現のため、日本はどのように関わっていくつもりか。
(安倍総理)
日本は、2015年のASEAN共同体発足を支持しています。そして、そのASEANが一体性を高めるためにも、域内での均衡のとれた成長を後押ししていきたいと思います。特にラオスの経済発展に期待をしています。12月の東京での日メコン首脳会議でも議論をしたいと思います。
日本としては、貧困削減、保健医療等の生活水準の引き上げ、各国の国内格差の是正、ASEAN内の連結性の向上のための道路、橋などのインフラ整備、通関制度を始めとする地域のシステム標準化などを引き続き支援してまいります。
(TV朝日 吉野記者)
インフラ支援について。冒頭発言にもあったが、首脳会談では経済回廊の整備や病院の支援等の話も出たと聞いているが、こういった日本のインフラ支援がどう地域全体の活力につながるのか、さらには我が国にどんなプラスをもたらすのか、青写真のようなものはあるか。
(安倍総理)
2015年に共同体を発足させるASEANにとって、地域の一体性を高めていくことが非常に重要です。この一体性を高めていくためのまさにその基盤となるのが、インフラ整備だと思います。
特に、今回私が訪問したカンボジア、ラオスは、メコン地域の交通の要衝に位置しておりまして、日本は、南部経済回廊、東西経済回廊等の整備を積極的に支援をしてきました。
ASEAN内の連結性が向上して、地域のヒト、モノ、カネの流れが一層活発になることは、地域諸国のみならず、ここで活動する日本企業、ひいては日本経済の活性化につながると思います。
まさに、この地域がインフラによって道路や橋や鉄道等によって、結ばれるということは、日本が経済発展していく中でも新幹線があり、高速道路ができて、日本国内・国土の一体性がます中で、ヒト・モノ・カネの流れが一層スピーディに活発化をしたということは高度経済成長に大きく貢献をしたのだから、それがしっかりと成果として上がっていくことにより、この地域の経済が発展していけば、この地域に投資・進出している日本にとっても大きなプラスです。
また、この地域は医療水準の向上も大きな課題であり、日本の成長戦略の一つである、医療分野の国際展開の舞台として、今後協力の余地、可能性は大きいと考えています。