第17回 父親 【あるキモい男の出自 ⑤】

AV監督の二村ヒトシさんが愛と性について語る同連載。二村さんがご自身のお祖父さんについて語った前回に引き続き、今回のテーマは二村さんにとっての「父」について。幼い頃にご両親が離婚してお母さんに引き取られたため、女性だらけの環境で育った二村さんですが、かといってまったくお父さんに会わなかったわけではないようで……。

父親とは、なんなのか?

【父という概念】について「人類が生み出した、おそらく社会的・文化的な必要があって生み出された概念であり、すくなくとも自然界には(動物のグループのリーダーの牡や、ハーレムの長としての牡は存在するけれど)子どもに対して【父らしく】ふるまう牡親など存在しない」と言い切る学識者もいる。

女医フミエと新聞記者タカシは昭和38年ごろ赤坂のバー『ちんぐり』で出会い、あっというまに結婚し、あっというまにフミエはヒトシを産み、3年くらいで離婚した。そのあまりの速さに周囲は唖然としたという。

タカシはヒトシを置いてフミエの家を出ていった。

ので、ヒトシは「父とは、家庭に於いて、このようにふるまうものである」という実例を、あまり知らずに育った。

友達の家に遊びにいき、夜まで遊んでいたら、その家のお父さんが帰ってきて「ヒトシくんも晩ごはん食べていきなさい」ということになり、カレーライスが出た。そのカレーの味も、それまで友達と何をして遊んでいたのかもぜんぜん憶えていないのだけれど、その家のお父さんが「おれは、めしはいらない。カレーだけよそってくれ。カレーだけ舐める」と言い放ったことを強烈に記憶している。

たぶんライスぬきカレーをつまみにビールか水割りを飲みたかったのだろう。家庭に於ける【お父さん】というものを知らずに育った幼いヒトシは、それを聞いて「お父さんというのはカレーだけを舐めるものなのか……」と感心したわけではなくて「お父さんというのは、お母さんをめんどうくさがらせるものなのだな」と思った。その家のお母さんが、あきらかに(やれやれ……)という顔をして「はいはい……」と応えたからだ。おそらく【ライスぬきカレーをあつらえる】ことがめんどうくさかったのではなかろう。わざわざ子どもたちの前で「なめる」などと言い出すお父さんが、めんどうくさかったのだろう。
もっともらしい顔で「なめる」と宣言したそのお父さんは、やや変人だったのかもしれないし、わざと子どもたちの前で変人っぽくふるまうのが、あるいは「わざと妻がめんどうくさがるような言い方で言う」のが、彼のダンディズムだったのかもしれない。

ダンディズム?

ケイクス

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