ネパールの脳神経外科医療サービスの現状と今後必要
広島大学脳神経外科
江口 国輝
ネパールの地方都市の多くにはまだ脳神経外科医はいません。こうした都市で脳神経外科治療を担っているのは、一般外科医だということです。脳神経外科医療を行っている一般外科医たちの学会発表を拝聴し討論する機会が第2回Nepal-Japan
Neurosurgery Conferenceでありました。
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脳外科の手術を受けられた
元患者さんたち |
一般外科医といっても、聞くとその他にも多くの疾患の治療をこなしていますので、総合外科医と呼んだほうがしっくりくる感じがしました。これら総合外科医の中には脳神経外科のトレーニングを数年受けた人もあり、深部にある腫瘍の摘出術など相当なレベルの手術までこなしているように見受けられましたが、多くは頭部外傷や感染性疾患に対して一例一例を大切に診断、治療を行っているように見受けられました。診断機器はといえば、CTは地方都市に1台程度は普及しているようです(MRIの普及はこれからというところでしょう)。でも、CTがあっても診断が難しかったり、こうした疾患の診断はできても、手術適応を決めるのが難しかったり、系統的なトレーニングを受けていない総合外科医には荷が少し重い状況もあるようです。彼らはそんな状況にありながら脳神経外科医と同レベルの脳神経外科医療を施すことができるよう日々努力されていることが感じられました。彼らも脳神経外科の素養をもう少し身につけるべく努力しているのですが、何と言ってもトレーニングを受けた脳神経外科医が少なく、そのために身近に聞く人もいない、そのような印象を受けました。ネパール国内にいくつか医学校はありますが、脳神経外科講座をもつ医学校は少なく、そのため、トレーニングを受けようにも必要な機会が得られないようです。
こうした状況を鑑みるに、これまで私たちはネパールに行って支援してきましたが、これからは日本に短期間でも来てもらい、日本の脳神経外科医療の集中的な研修をすることが今後私たちがネパールのために必要と思われるサポートではないかと考えました。例えば年に1人1ヶ月の短期研修でも効果があるように思われるのですが、AANIの皆様どうでしょうか。 |