ECC Cannula Database
人工心肺の病態生理(新見能成:心臓手術の麻酔.3版,東京,メディカル・サイエンス・インターナショナル.2004.
より抜粋)
T. 灌流システムとしてのCPB
A. 正常な循環系のホメオスターシス
B. CPB中の循環系の管理
1. 体血流量
2. 動脈圧
3. 静脈圧
4.
血流の分布
C. CPB中の循環系の変化
1. CPB開始時の変化
2. 低体温のCPB中の循環動態
3. 再加温時のCPB中の循環系の変化
4. 常温CPB
5. CPB中の微小循環の変化と適切な組織灌流
6. CPB中の拍動流と非拍動流
U. 酸素運搬システムとしての人工心肺
A. 人工肺の機能
B. CPB中の血ガスモニタリング
V. 適切な灌流
A. 定義の仕方
B. モニタリング
1. 全身のモニタリング
2. 適切な組織灌流を確認するためのCPB中の特定臓器機能のモニタリング
W. 低体温と人工肺
A. 生化学的反応における低体温の影響
B. 血液粘稠度に対する低体温の影響
C. 低体温と関連する血液ガスの変化
1. 酸素ヘモグロビン解離曲線の変化
2. 酸素とCO2の溶解度の変化
3. 水の中性
4. CPB中の血液ガスの測定と管理方法
X. CPBの全身に対する影響
A. 血液
1. 凝固系
2. 細胞成分の変化
3. 血漿タンパク質の変化
4. 体液カスケード系の活性化
B. 人工心肺中の体液バランスと細胞間質液の貯留
C. 心臓
D. 中枢神経系
E. 腎臓能
1. CPB中の尿量の意義
2. 尿細管機能の低下
3. 腎血流
4. ヘモグロビン尿
5. 腎不全
F. 内臓や肝臓への影響
G. 肺機能
1. 完全体外循環と部分体外循環
2. CPB後の肺の死空、喚起血流比不均衡
3. 肺における好中球の集積と血管作動性物質の放出
4. 肺の代謝機能
5. 肺における麻薬の集積
6. 肺血管抵抗と低酸素性肺血管収縮の変化
7. ポンプ後の肺機能不全
H. 炎症と免疫に対する影響
1. 全身炎症反応
2. 適応免疫系の抑制
I. 内分泌、代謝、電解質への影響とストレス反応
J. 人工心肺の薬理に対する影響
Y. 小児と大人の人工心肺
Z. まとめ
[. 参考文献
T. 灌流システムとしてのCPB
一般の人はもちろん、医療従事者でさえも、人工心肺(CPB)を日常の当たり前の業務と思いがちである。これは、膨大な症例数にもかかわらず、CPBに関連した合併症の発生率や死亡率が比較的低いことによるものと思われる。
CPBの技術は比較的新しいということを忘れてはならない。人工肺の設計上の改良、さまざまなフィルターや除泡装置の付加、抗凝固系のモニタリングの改良、高流量とずり応力による血液の損傷に対する理解の深まりなどが、現在のCPBの安全性に寄与している。しかし、CPBに関連した合併症の発生率が低いのは、CPB技術そのものの安全性よりも、生理的損傷に対応する人体の順応能力によるところが大きい。
CPBが生体にもたらす三つの大きな変化は、@拍動流から非拍動流パターンへの交替、A非生理的表面とずり応力への血液の曝露、Bストレスに対する過剰反応である。さらに、今日のCPBはさまざまな程度の低体温と低血圧、それに伴う生理的変化を生じる。CPBの安全性の改良には、この生理的変化に対するより深い理解が必要である1)。
A. 正常な循環系のホメオスターシス
正常な状態では、十分な心拍出量、酸素輸送量の維持および代謝産物の除去は、生体の代謝需要によって制御されている。心拍数、心室充満圧、心筋収縮力、体血管抵抗は、自律神経系の緊張度と体内を循環しているカテコールアミンレベルによって調整されている。
血圧、PH、PaO2、PaCO2の変化に対する自立神経系の活動は、
中枢および末梢のさまざまな圧受容体と科学受容体によって調整されている。これらの変化は、直接組織代謝を反映している。代謝需要が増大すると、交換神経系の緊張度が高まり、その結果、心拍出量と酸素輸送能が増大する。
B. CPB中の循環系の管理
CPBでの”心拍出量”はポンプ流量であり、思いどおりのレベルにセットできる。動脈圧および静脈圧は、患者の自律神経の緊張度に多少は依存するが、脱血量を増加または減少させたり、血管収縮薬または血管拡張薬を投与することで簡単に操作できる。このように、CPB中の循環は灌流士と麻酔科医がその大部分をコントロールしている。
1. 体血流量
体血流量は、灌流士の設定した人工心肺装置のポンプ流量によって決定される。この流量は、患者の年齢、体温、麻酔深度、ヘマトクリットをもとに決定する。軽度低体温(約35℃)において大人でヘマトクリットが約24%であるとき、一般に流量は麻酔された患者の酸素需要を満たす2.4L/minm2にセットされる。”ファストトラック”プロトコールによる浅いレベルの麻酔中にこの流量設定が正しいかどうかは、これから明らかにしなければならない。ヘマトクリット値の低下に対する正常な生理的反応は心拍出量の増加である。特に正常の体温で低いヘマトクリット値の場合、流量を選択する際にこの生理反応を考慮する2)。CPB中の最大流量は患者からの静脈還流によって制限されるが、静脈還流は、人工心肺装置と手術台の落差、脱血管の位置と抵抗、血液容量、静脈の緊張度などによって影響される。最大流量は、人工心肺装置の許容量と送血管のサイズによっても制限される。送血管に高流量が通過すると、大きい圧較差と乱流を生じ、血液を破損し、悪いジェット効果(アテローム性塞栓源を移動させる)を生じる。著明な大動脈弁逆流や気管支側副血行路が存在すると、ポンプ流量が体循環から奪われるため、ポンプ流量を適切に増加させなければならない。
2. 動脈圧
正常な状態では、動脈圧は心拍出量(CPB中のポンプ流量)(上記の項目1参照)と体血管抵抗で決まる。後者は、血液粘稠度と細動脈の平滑筋の緊張度によって決定される。粘稠度は原則的にヘマトクリットと体温に影響されるが、両者はCPB中しばしば大きく変化する。ヘマトクリット(%)と体温(℃)が同じ値であれば、すっと一定のままである。(ヘマトクリット35%で35℃の粘稠度は、ヘマトクリット27%で27℃、ヘマトクリット20%で20℃の粘稠度とほぼ同じである)。正常体温で、ヘマトクリットが40%から20%に低下したならば、粘稠度(と体血管抵抗)は50%低下し、一定のポンプ流量(心拍出量)では、平均動脈圧は50%低下する。
体血管抵抗は血管の緊張度によっても決定され、この緊張度は拍動(拍動流で体血管抵抗はより低い)、交換神経系の活動性、麻酔深度、カテコールアミン、アンギオテンシンとアルギニンバソプレシン(AVP)、酸塩基と電解質、全身炎症反応のさまざまな伝達物質、血管作動薬の投与などによって影響される。
CPB中の最適な動脈圧とその重要性に関しては結論が出ていない(下記参照)。圧が低すぎる場合、特に血管病変が存在する場合は、病変部の血管床の灌流は障害される可能性がある。反対に、過剰な動脈圧は、動脈遮断中の冠血管以外の側副血行路の血流を増加させ(心筋保護のための心停止液を”洗い出し”)、肺への気管支血流を増加させる(左心への血液還流を増加させる)。また、動脈遮断や縫合線に緊張が生じる。平均動脈圧が低すぎると思われる場合、平均動脈圧を上昇させる最もよい方法についても、結論が出ていない。(たとえば、ポンプ流量を増加させることがよいのか、ヘマトクリットをあげたり、血管収縮薬を投与するほうがよいのか)。
3. 静脈圧
静脈圧は、血液容量、静脈の緊張度(交換神経系、麻酔深度、血管作動薬)、脱血管から流出する抵抗(位置、サイズ、屈曲、心臓の変形)、手術台の高さ、全流量などによって決定される。静脈還流は通常、重力(サイフォンの原理)に依存するが、静脈ラインにバキュームや吸引を使用して静脈還流を増大させることもある。
静脈圧の上昇は臓器灌流をひどく障害し、抹消の浮腫をまねく可能性もある。
4. 血流の分布
全血流に加え、個々の臓器血流についても考えなければならい3)。最近の研究で、全血流の減少により、正常体温と低体温時に血流分布がいかに変化するかが報告されている4、5)。”正常な血流”(すなわち、2.4L/min/m2)でさえ、CPB中の筋肉の血流は著明に減少する。流量がさらに減ると、最初に内臓の血流、次に腎血流、最後に(きわめて低い流量においてのみ)脳血流が減少する。
C. CPB中の循環系の変化
1. 体血流量
CPB開始時には、いくつかの理由により動脈圧の低下がみられることが多い。
a. 通常ポンプ流量はCPB開始前の心拍出量に等しいので、”心拍出量”の減少による血圧の低下はまれである。
b. CPB開始時の血圧低下の大きな原因は、体血管抵抗(SVR)が急激に減少することである。これは以下の理由による。
(1)ポンプのプライミング液による血液希釈に伴う血液粘稠度の低下
(2)体内を循環するカテコールアミンの希釈、一時的な低酸素血症(循環開始後にポンプのプライミング液による血液希釈のため、低酸素血症が起こり、その結果、血管の緊張度が低下する)、プライミング液の低いpH・カルシウム・マグネシウム値
2. 低体温のCPB中の循環動態
a. 体血管抵抗の増大:CPB中の体血管抵抗は患者間で大きなばらつきがある。しかし、一般に流量を一定に保てば、CPB施行中、体血管抵抗が徐々に増大するために、灌流圧も徐々に上昇する。しかし、体血管抵抗がCPB開始前の値より増大することはまれである。CPB施行中に見られる体血管抵抗の増大は、おそらく以下の理由によるものと思われる。
(1)微小血管系の閉塞による血管横断面積の事実上の減少
(2)低体温。体内を循環するカテコールアミン、AVP、アンギオテンシンUレベルの増大による血管収縮。
(3)低体温に伴う血管粘稠度の増大とヘマトクリットの上昇(尿量の増加、あるいは細胞間隙への体液の移動による)
b. 体血管抵抗の減少:一時的な体血管抵抗の減少と血圧の低下が、心筋保護液注入直後に見られる。特にnitroglycerinを含んでいるときに、よくみられる。
c. 流量:ポンプ流量は、体外で完全にコントロールされ、ポンプへの静脈環流の範囲内で随意に操作することができる。ポンプ流量は、通常、ml/kg/min、またはL/min/m2で表され、後者のほうが頻繁に用いられる。覚醒している患者では、一般に心係数が2.0〜2.2L/min/m2以下になると、十分な酸素供給ができない。これは常温体外循環時の灌流量の下限でもある。低体温が進むにつれ、患者の酸素需要は減少し、それに応じてポンプ流量を有意に減少させることができる。KirklinとBarratt-Boyesは6)、異なる体温下での酸素消費量とポンプ流量の関係を示す曲線を計算した(図20.1)。この双曲線様曲線は、以下の式で表される。
VO2=0.437(Q-62.7)+71.6
図20.1 酸素消費量(VO2)と灌流量(Q)および温度の関係を示すモノグラム
いくつかの動物実験から、さまざまな流量(非拍動流)で測定したVO2の”最適”曲線が得られている。曲線上の小さなxは、アラバマ大学の臨床で用いられている種々の温度での流量を示している。正常温度でのポンプ流量を2.2L/min/m2以上にすると、酸素消費量は増大することなく、早いずり速度により血液が損傷される。酸素消費量の意義については後述する。
d. 動脈圧:CPB中の適正灌流に関してはかなり確立されているが、適正動脈圧に関してはいまだ議論がある。流量に関係なく、患者間で動脈圧の著明なばらつきがみられる。低血圧時の主な関心事は、臓器灌流が十分であるかどうかである。脳と腎臓は最もリスクの大きい臓器である。短時間であれば、平均動脈圧(MAP)が30mmHg以下の低血圧にもよく耐える。Foxら7)は、中等度の低体温時のCPB中、脳循環の自己調節はかなりよく維持されていることを実証している。Govierら8)は、術前の血圧が正常で、低体温CPB中にα-stat式血液ガス管理を用いた場合、MAPを約30mmHgまで低下させても脳血流は比較的一定に保たれることを示した。この研究では、流量が一定なので、低血圧は体血管抵抗が小さいことを反映している。さらに最近の研究は、脳の自己調節能が本質的に損なわれないことを支持している。しかし、pH-stat式血液ガス管理を用いると脳血流は圧依存性に傾く9-11)。これらの知見にもかかわらず、多くの麻酔科医は、CPB中の平均動脈圧を特に根拠のない50〜100mmHgに保つために血管収縮薬や血管拡張薬を使用する。一部の施設は前述したよりも低い灌流圧を日常用いているが、死亡率が他と比べて高いわけではない12)。
3. 再加温時のCPB中の循環系の変化
a. 患者を再加温するために灌流液の温度を上昇させると、使用されている麻酔薬、患者のヘマトクリット値、基礎疾患およびその他の要因により、さまざまな循環系の反応がみられる。再加温中、体温が25〜32℃のとき、しばしば体血管抵抗とMAPが上昇する。32℃を超えると、体血管抵抗とMAPは低下することがある。
b. 大動脈クランプをはずし、心臓を再灌流させると、通常体血管抵抗とMAPの低下がおこる。心筋保護液と低体温にもかかわらず、虚血期間にもある程度の代謝活動は進行し、心筋エネルギー貯蓄は利用され続ける。心臓が再灌流されると、蓄積した代謝産物が心臓から体循環へと洗い出される。これらの代謝産物のいくつか、特にアデノシンは、血管拡張薬として働き、体血管抵抗の著明な減少を引き起こす。
4. 常温CPB
近年、ほぼ常温でCPBを行う傾向がある13)。推定できる利点は、低体温の副作用の回避、冷却と加温に必要な人工心肺時間の短縮、加温中の過剰な加温による弊害の回避(得に脳において)、出血の減少、おそらく早期抜管が行いやすいことなどである。常温の人工心肺は、酸素需要(VO2)と酸素運搬(DO2)の差を縮める。すなわち、低体温のCPB中よりもヘマトクリット値とポンプ流量を高く維持する必要がある。体血管抵抗とMAPもまた低くなる傾向にあり、その結果、多くの輸液と血管収縮薬を投与し、より多いポンプ流量を使用することになる。また、深い麻酔レベルが必要となる。底流量または循環停止が必要である場合は、その安全時間は明らかに短くなる。脳の予後が問題となっている。このことにより、軽度の低体温(約35℃)を使用する施設が多い。これは、”生ぬるい(tepid)”バイパスと呼ばれ、深い低体温の欠点を避けながら、かなりの脳保護が期待できる。それぞれ30℃と35℃で維持された患者では、認知機能の予後は同等であることが確認されている14)。
5. CPB中の微小循環の変化と適切な組織灌流
a. CPB中、心拍出量と動脈圧を”正常”範囲に維持することは容易である。しかし、次にあげるいくつかの点で組織灌流と酸素運搬の障害が示唆される。
(1)一時的あるいは永久的な術後臓器不全
(2)流量と灌流圧をCPB前と同じ値に維持しても、常温CPB中に酸素消費量がさまざまな程度に減少する。
(3)血清乳酸値のさまざまな程度の増加
b. 微小循環は前毛細管動脈と後毛細管静脈の間にあり、毛細管床、細胞間質液および微小リンパ管を含む。しかし、以下によりCPB中に微小循環系の機能が障害されることは明らかである。
(1)動静脈シャントの有無に関係のない前毛細管動脈括約筋の収縮(カテコールアミン、アンギオテンシン、バソプレッシン、トロンボキサン、一酸化窒素の分泌減少による)
(2)細胞間質液の増加(浮腫)
(3)リンパ環流の減少
(4)拍動流の欠如
(5)低体温による微小血管内の”血流うっ滞”
(6)赤血球変形能の変化
(7)接触相での活性化と全身炎症反応(後述)による白血球、血小板、フィブリンの内皮への付着と微小凝集
(8)心腔内吸引が大きな原因である微小塞栓(ガス、脂肪、白血球・血小板・フィブリンの凝集塊、体外物質)、CPB中の微小血管系の機能を最大限に発揮させる方法としては、細動脈収縮を抑制するための血管拡張薬の使用、細胞間質液の貯留を抑制するためにポンプのプライミング液にmannitolを追加すること、拍動流の使用、微小血管の血流の最適化をはかるためにヘマトクリット値を20〜30%に維持するよう血液希釈すること、微小物質の濾過の使用、人工心肺装置に直接入る未処理の心腔内吸引血液を最小にする、抗炎症反応対策などがあげられる(下記参照)。
6. CPB中の拍動流と非拍動流
CPBによって引き起こされる大きな生理的障害に、拍動流の欠如がある。直感的には、できるだけ正常に近い血流パターンをCPB施行中に再現するほうが望ましいようにみえる。しかし、従来の非拍動性灌流と比較して、拍動性灌流が優るかどうかについては議論がある。
a. 拍動流のつくり方:CPB中に動脈性の拍動を維持するために、いくつかの方法がしようされる。
(1)部分体外循環であれば、脱血量を減少させることで心臓に駆出力を与えることができる。
(2)体動脈バルーンポンプが留置されていれば、血流に拍動を加えるために使用する。
(3)回転速度を変化させるよう設計されたローラーポンプを使用して拍動を生じさせる。
(4)心室補助ポンプの使用
b. 動脈カニューレのダンピング効果:最初の二つの方法が、拍動を生じさせるのより効果的である。というのは、大動脈内に拍動を生じさせるからどある。ポンプの流出に効果的な拍動を生じさせるために数々のポンプが使用されているが、細い動脈カニューレ、膜型人工肺、動脈マイクロフィルターによるダンピング効果によって拍動のエネルギー量が制限される。このため、ローラーポンプによって大きな拍動力を患者に伝えることは難しい15)。
c. 脈波の波形の特徴:正常な動脈圧波形のエネルギーと動力学はかなり複雑である。脈波形が正常な動脈波に似れば似るほど、体外灌流と動脈波の生理学乖離は少なくなるということが明らかになりつつある。初期の多くの研究では拍動・非拍動の間に有意な差異がなかった。これは、拍動波として、急峻な収縮期の駆出とゆっくりとした拡張期の流出といった正常拍動波とは異なるサインカーブ状に近い脈波形を使用していたことによる。
d. 利点
(1)微小循環へ伝わるエネルギーがより多くなる。(a)毛細血管の閉じる臨界圧力を減少させる(b)リンパ流を改善する(c)組織灌流を改善する。酸素と他の基質の拡散を増加させ、細胞の代謝を高める。
(2)圧受容体、腎臓、内皮(一酸化窒素の分泌の制御)から発生する非拍動流に対する神経内分泌系の悪い反応(主に血管収縮)の減少
(3)上記二つの効果は、脳や心臓や腎臓の灌流の改善、合併症の発生率や死亡率を減少させる可能性をもたらす。
e. 不利な点
(1)経費と複雑さの増加
(2)より大きな動脈カニューレの使用の必要性
(3)動脈カニューレからの速い流出速度(細胞や血管内の損傷、血栓塞栓症のリスク)
(4)ガスの微小塞栓と人工肺回路の破損のリスク
f. 臨床予後:臨床予後については論争中である16、17)。明確な利点がないことにより、拍動流は臨床のCPBではあまり普及していない。
U. 灌流システムとしてのCPB
A. 人工肺の機能
人工肺の構造上の詳細と効率については、第19章で詳しく述べている。人工肺は肺の役目を担う。すなわち、酸素化と静脈血中のCO2の排出である。CPB中は、複雑な肺の生理は除かれ、ガス交換は単に血液とガスを直接接触させるか(気泡型人工肺)、ごく隣接させること(膜型人工肺)によって行われる。PaO2とPaCO2は、混合ガスのFiO2と人工肺を通過する混合ガスの流量によって決まる。人工肺を通過する混合ガス中のCO2を付加することもある。
B. CPB中の血液ガスモニタリング
現代の人工肺はガス交換器としては大変効率的で、動脈ガス分圧は簡単かつ正確に灌流士によってコントロールされている。回路内に組み込まれた血液ガスモニターの導入により、頻回の血液ガス分析の必要性はなくなっている。正常体温時のCPB中の動脈血液ガスは、pH7.40、PaCO2(35〜45)mmHg、PaO2(100)mmHg以上の、いわゆる正常値付近に維持される。
V. 適切な灌流
A. 定義の仕方
1. 現実的な解答は、患者が臓器障害の証拠もなく生きているのであれば、人工心肺は適切であったということになる。レトロスペクティブな評価に加え、この評価は、術後の臓器機能検査の感度に大きく依存する。しかし、術後臓器機能の特性の研究は、CPBの改善を促す多くの有用な情報をもたらしている。
2. すべての臓器に適切な酸素供給を維持する。
3. 望ましくない反応(神経内分泌系のストレス反応や全身炎症反応など)の活性化を避ける。
4. 適切な全身血流、動脈圧と静脈圧、動脈の拍動、動脈と静脈の血液ガス、動脈の酸素量とその供給を維持する。「適切である」という定義は、患者の年齢と温度、麻酔の種類と深さによって影響を受ける。
B. モニタリング
1. 全身のモニタリング
a. 酸素消費量(VO2)の測定は、臨床では頻繁に行われないが、実験的には適切なCPBの使用に多くの見識を与えてきた。酸素消費量は、同時に測定される動脈と静脈の酸素含量とポンプ流量から容易に計算できる。
VO2=ポンプ流量×(CaO2-CVO2)
KirlinとBarratt-Boyes6)は、
VO2を所与の温度で予想される最大量の85%に維持することが適切な酸素輸送であることを示した(図20.1)。
b. 酸素輸送(DO2)は、CPB中に容易に計算できるが(DO2=CaO2×ポンプ流量)、あまり行われない。
c. 混合静脈血酸素飽和度(SvO2)、混合静脈血酸素含量(CvO2)、酸素抽出率oxygen extraction ratio(OER)は、酸素需要(VO2)と酸素輸送(DO2)の適切なバランスの手がかりとなる。OERはVO2/DO2という比率である。通常、SvO2は約75%であり、OERは約25%である。この二つの値が50%に近いと、酸素供給は著しく障害されている。静脈血酸素飽和度の脱血ラインでのモニタリングは、通常、CPB中に行われる。残念ながら、血管床が小さい場合、または灌流の乏しい血管床からの酸素飽和度の低い血液がこの静脈血酸素飽和度に影響しないほど少ない場合、静脈血酸素飽和度のモニタリングで局所の虚血を発見することはできない。このように、低い静脈酸素飽和度は常に治療しなければならないが、静脈酸素飽和度が正常または高くても必ずしも安心できるわけではない18)。
2. 適切な組織灌流を確認するためのCPB中の特定臓器機能のモニタリング
a. 大脳機能:脳波、誘発反応、脳血流(経頭蓋ドプラー)、脳酸素測定法は、脳灌流をモニタリングするのに用いられるが、麻酔薬と低体温の影響により、その有用性は限られる。頸静脈酸素飽和度、頸静脈圧、頸静脈温により、どの程度まで脳が維持されているかについて情報が得られる。
b. 腎機能:尿量は、最も簡単な腎機能の指標である。しかし、異なる血流パターン、灌流圧の違い、低体温の影響、ポンプのプライミング液中の利尿薬の有無の影響を受け、組織全体の灌流のしては不正確である。
c. その他の内臓機能:現時点で臨床的に使用されているモニターはないが、胃内圧測定法(生理食塩水が空気、pH、PCO2)、ドプラー法を用いた粘膜血流の評価、肝血流の測定、肝静脈酸素飽和度のモニタリングについて臨床研究が行われている。
W. 低体温と人工肺
A. 生化学的反応における低体温の影響
科学反応におけるQ10は、温度を10℃変化させた場合の反応速度の変化率を表す。ヒトの組織では、Q10はおよそ2である。つまり、体温が10℃下がるごとに、反応速度(代謝速度や酸素消費量)はおおむね半減する。
B. 血液粘稠度に対する低体温の影響
低体温により血液粘稠度は増加する。CPBの使用が始まったころ、合併症の発生率や死亡率が高かった(脳梗塞や臓器梗塞)のは、血液希釈をしておらず、おそらく粘稠度が高かったことに起因している。今日では、CPB中のヘマトクリット値が20〜30%になるよう血液を希釈する。血液希釈により酸素輸送能は低下するが、粘稠度が減少して微小循環系の流れがよくなるため、酸素供給は改善される。
C. 低体温と関連する血液ガスの変化
1. 酸素ヘモグロビン解離曲線の変化
温度が低下するにつれ、酸素とヘモグロビンの間の親和性または結合力は増大する。低温では、ヘモグロビン1分子に一定量の酸素を供給するのに必要な酸素分圧が低くなる。酸素ヘモグロビン解離曲線は左方に移動する。組織レベルでのヘモグロビンの酸素放出は効率が下がる。
2. 酸素とCO2の溶解度の変化
温度が低下するにつれ、気体は液体に溶解しやすくなる。ある一定量の酸素あるいはCO2が存在するとき、より多くの気体が血漿中に溶解すると、気体分圧は低下する。CO2において、これはより顕著である。というのは、CO2はどんな温度でも血漿中によく溶けるからである。
3. 水の中性
中性の水では、[H+]と[OH-]が等しい。37℃では、中性の水のpHは6.8であるが、25℃では7.0になる。”中性”の状態にある水のpHは、温度が下がるにつれ直線的に変化する。温度が1℃下がるごとに、pHは0.017ずつ上昇する(図20.2)。
図20.2 体温変化に伴う恒温動物と変温動物の血液pHと中性水とpHの変化
4. CPB中の血液ガスの測定と管理方法
血液ガスは、血液ガス分析器で37℃で測定される。患者の体温が37℃より低い場合は、pHとPaCO2は、患者の体温での実際の値を決定するために補正する(または補正できる)。患者の体温が27℃で、37℃時に測定されたpHとPaCO2がそれぞれ7.40と40であると、体温27℃に修正したpHとPaCO2はおよそ7.55と25である。逆に、37℃で測定されたpHとOaCO2が7.25と55であると、27℃に修正したpHとPaCO2はおよそ7.40と40である。
低体温中の温度補正したpHとPaCO2の適正値は未解決である。ある方法(pH-stat法)では、温度補正したpHとPaCO2をそれぞれ7.40と40に保つようにする。別の方法(α-stat法)は、酵素系が適切に機能するようにOH-/H+のイオン比を一定に保つようにする。37℃で測定される未補正のpHとPaCO2が7.40と40ならば、イオン比は一定である。
この二つの方法の原理と賛否両論については、第23章を参照。
X. CPBの全身に対する影響
その一部については述べてきたが、CPBは、種々の病態の”連鎖的発生”を引き起こす。きわめて非生理学的な侵襲である(図20.3)
図20.3 人工心肺により引き起こされる種々の病態の”連鎖的発生”
A. 血液
1. 凝固系
凝固カスケード、血小板、線溶カスケードにおける変化については、第18章を参照。
2. 細胞成分の変化
a. 赤血球
(1)CPB中、赤血球は堅くなり、伸展性がなくなる。この変化により、微小循環系の血流が妨げられる。赤血球が堅いと溶血も起こりやすくなる。
(2)CPB中、赤血球は非生理的な表面に接触し、ずり応力を受ける。CPB灌流の増大とそれに伴うずり速度の上昇、気液界面の増大により、溶血が進行する。酸素由来のフリーラジカルもCPB中の溶血一因であろう。赤血球が溶血して生じた遊離ヘモグロビンは、ハプトグロビンと結合する。遊離ヘモグロビンがハプトグロビンの結合能を上回ると、血清ヘモグロビンの濃度が上昇し、腎臓で濾過され、ヘモグロビン尿となる。
b. 白血球:CPBは主として好中球[多形核白血球(PMN)]に影響を及ぼし、わずかではあるが単球にも影響を及ぼす。CPB開始直後に、循環しているPMNの著明な減少が見られる。膜型人工肺の使用時のほうが減少の程度は大きく、持続も長い。この理由はわかっていない。好中球は主として肺循環系に取り込まれる。しかし、辺縁局在化、血管外遊出、血管内外でのPMNの蓄積は、心臓および骨格筋の微小循環系でもおこることが報告されている。PMNから放出された物質によって引き起こされる微小循環系の障害やPMNによる血管の閉塞は、CPB後の臓器不全へとつながる可能性がある。
CPBの進行とともにリバウンドによる好中球増加が現れ、これはコルチコステロイドを投与されている患者ではより顕著になる。好中球増加は低体温中はさほど目立たないが、循環しているPMN値は再加温時に著明に上昇する。肺循環系から放出される好中球と骨髄から放出される幼若な細胞の両者が、この好中球増加の一因となっている。
PMNの宿主防御機能の対するCPBの影響については、結論が出ていない。走化性および凝集刺激に対するPMNの反応性低下を示してる研究からは、防御機構の障害が示唆される。しかし逆に、CPB後の3日間、PMNの殺菌活性が上昇したことを示す研究もある。
白血球の他の効果については、炎症反応についてのH項(614ページ)で延べる。
3. 血漿タンパクの変化
タンパク質は、非常に特異な構造をもつ球形の分子である。一般に、極性のある親水性のグループが細胞の外側に位置し、極性のない疎水性のグループが内側に位置する。タンパク質が気液面界に接近すると、強い静電気力によって内部のスルヒドリル結合や水素結合が分解し、さまざまな程度に分子の構造変化が生じる。
a. タンパク質変性の結果
(1)酵素機能の変化:変性したタンパク質は、一部あるいはすべての機能を消失する。
(2)タンパク質の凝集:変性したタンパク質は凝集する傾向があり、沈殿物を生じることもある。IgMの凝集物は、補体カスケードの強い賦活物質である。
(3)溶解度特性の変化:変性したタンパク質は血清に溶けにくくなり、血液の粘稠度の上昇が起こる。
(4)脂質の放出:リポタンパク質とカイロミクロンのタンパク質分画の変性は、循環系にカイロミクロンの凝集と遊離脂肪滴を生じさせる。これらの脂肪塞栓は、小さい血管を塞ぐのに十分な大きさになることがある。
(5)変性したタンパク質の細胞膜への吸着:赤血球は”粘り気を増す”。結果として赤血球が凝集すると、毛細管がつまり、微小循環系の機能不全につながることがある。
b. 膜型人工肺は、直接的な気液界面がないことから、タンパク質の変性は少なくなるといわれている[訳注:膜の微小孔を介して血液と酸素との直接的な接触があり、気液界面は皆無ではない]。
c. 膠質浸透圧:膠質液をプライミングに加えないと、心肺装置に血液を含まない充填液使用することによる血液希釈のため、血漿タンパク濃度、ひいては膠質浸透圧(COP)がCPBの開始とともに低下する。CPB中のCOPの低下が体液バランスに与える影響は、下記B項で検討する。プライミングにアルブミンや人工膠質液(デキストラン、スターチなど)を使用してCOPの低下を避ける必要性とその利点については議論がある。
4. 体液カスケード系の活性化
a. 凝固およびフィブリン溶解カスケード系:第18章(547ページ)を参照のこと。
b. 補体系:H項(614ページ)を参照のこと。
c. カリクレイン-キニンカスケード:H項(614ページ)を参照のこと。
B. 人工心肺中の体液バランスと細胞間質液の貯留
Starling仮説にもとづく以下の式は、微小循環レベルでの体液の流出を説明していると考えられる。
細胞間質液の貯留=K[(Pc-Pis)-σ(πc-πis)]-Qlymph
K:毛細管膜の透過係数(”透過性”),Pc:平均毛細管内圧、Pis:平均間質静水圧、σ:高分子の反射係数、πc:毛細管浸透圧、πis:間質浸透圧、Qlymph:リンパ流
CPBは、上記のいくつかの因子に影響を与え、体液バランスを細胞間質液の蓄積の方へ移動させる傾向にある。膜透過性は、全身炎症反応と間欠性の虚血(低灌流または微小塞栓)/再灌流の多くの要素が活性化することにより亢進する19)。一方、血漿浸透圧は、大量のコロイドや血液成分のないプライミング液を使用することにより、常に低下する。間欠的(心臓の挙上など)あるいは持続的に静脈環流が障害されると、平均毛細管内静水圧は上昇し、流れの消失、拍動流の欠如、胸腔内陰圧の消失によりリンパ流は妨げられる。
C. 心臓
現代の心臓手術では明らかな心筋梗塞の発祥は比較的まれであるが、衰弱した患者(ベースラインの機能が限られた患者など)では心筋スタニング、心機能障害、合併症などと関係する小さな心筋傷害や細胞壊死は普通に起こっている。
心筋傷害の原因となる因子は、一般に微小血管の灌流に影響を与える因子だけではなく、心室の膨満、長時間の心室細動、冠動脈の空気塞栓、低血圧、カテコールアミン、エンドトキシン血症、動脈クランプ、一過性の冠動脈閉鎖による虚血/再灌流などである。心筋肥大や重度の冠動脈疾患をもつ患者では、CPBで上行大動脈がクランプされていない間、高い灌流圧とおそらく拍動流(大動脈バルーンポンプ)が適切な心筋の灌流を維持するのに理想的である。
心筋の傷害とその予防は、第22章(641ページ)でさらに議論する。
D. 中枢神経系
CPB後に脳機能不全(神経精神的障害や認知障害から明らかな脳梗塞や昏睡に至るまで)が起こるのはまれではなく、重大な関心事となっている。その病因は、多源性であり、低灌流、大きな塞栓、微小塞栓、CPBに対する炎症反応などである。
CPB中、能灌流と酸素運搬は最優先事項であるが4,5,20-22) 、(ポンプ流量自体よりもむしろ)平均動脈圧、頸静脈圧、温度、ヘマトクリット、pH/PaCO2の管理、術前の脳血管病変の存在に影響される。
脳機能不全の原因と脳の予後が悪くなるのを最小限にする方法は、第23章(661ページ)でさらに議論する。
E. 腎臓能
1. CPB中の尿量の意義
尿量は腎機能の大まかな指標である。CPB中の尿量と術後の腎不全発症率とは何の関連もない。平均動脈圧が高いとき、拍動流を使用しているとき、mannitolがポンプのプライミング溶液に加えられているとき、尿量は多くなる。
2. 尿細管機能の低下
尿細管の機能は、低体温のみでも低下する。CPB中、尿細管の機能はさらに低下するので、尿量も減少する。
3. 腎血流
流量や厚の減少あるいは拍動流の欠如により、CPB中の全体的な腎血流は減少する。他の原因による低灌流やショック様状態でも見られるように、皮質から外側髄質への腎血流の再分布が起こる。この血流の再分布は、拍動流のときは軽度になる。
4. ヘモグロビン尿
ヘモグロビン尿の原因となる血管内の溶血は、急性の尿細管壊死を引き起こす。そのメカニズムが、尿細管での色素の沈殿による尿細管流の阻害なのか、あるいは溶解したRBCから遊離した赤血球の基質や他の物質よって引き起こされる糸球体と尿細管の傷害であるのかは明らかでない。
5. 腎不全
CPB後の腎不全は、心臓手術患者の合併症と死亡の根強い原因の一つである。その発生率は、成人の患者では1%以下であると報告されているが、開心術を受けた乳児では2〜10%に達する。腎不全の発生は、CPB中の尿量維持のために行われたさまざまな処置よりも、術前および術後の血行動態に依存する。
F. 内臓や肝臓への影響
臨床的に認識できる主な消化管の合併症(出血、潰瘍、偽性閉塞、腸間膜の虚血、梗塞または穿孔、無石胆嚢炎、膵炎など)の発生率は低い(1〜2%)が、起こると高い死亡率(36〜65%)を示す。
リスクファクターは、高齢、開心術、緊急手術、長時間のCPB、昇圧剤の使用、CPB後の低心拍出量症候群である。
CPB中、全身の臓器灌流(および肝静脈酸素飽和度)は、だいたいのところよく保たれるようであるが、局所血流の優先度からみると、CPB中の体血流が減少すると内臓の血流は早期に障害され、phenylephrine、norepinephrine、AVPのような主要な血管収縮薬の投与で減少しがちであることを覚えておく。さらに、全体の血流が適切であるように見えても、多くの因子が腸管の透過性を亢進し、浮腫の進行、胃や腸管の粘膜のpHの低下とPaCO2の上昇(トノメトリー法による)、粘膜血流の減少(ドプラー流量計)、エンドトキシン血症を起こす。これらのことから、CPB中に消化管系で粘膜虚血が頻繁に起こっていることが示唆される。この虚血の原因はよりいっそうの解明を待たなければならないが、虚血の発生は全身炎症反応症候群や他の消化管の合併症の発生に一役買っていると思われる。
黄疸はCPBを使用する手術の患者の23%までに生じるが、重症の黄疸(ビリルビン値>6mg/dl)が生じる患者はわずか6%である。腎不全と同様に、肝機能不全も、CPBの直接的な影響よりもCPB前後の血行動態に依存する。右房圧の上昇、手術中の著明な低酸素症、CPB後の低血圧の持続、大量輸血などで術後黄疸の発生率が高くなる。術後の血行動態および栄養状態が正常に保たれれば、肝機能は徐々に改善することが多い。
G. 肺機能
1. 完全体外循環と部分体外循環
完全体外循環では、すべての体血管の血液は人工肺に入り、右房あるいは肺循環へはまったく血液が流れない。完全体外循環では、右房の血液が流入しないように、2本の静脈カニューレを”テープ”(ターニケットに類似)で締める。部分体外循環では、テープなしの1本あるいは2本のカニューレを使用する。部分体外循環中は、さまざまな量の血液が右房および右室に流入し、肺を通り、やがて左心室に達する。部分体外循環中、低酸素の血液が左心室に流入するのを避けるために、最小限の換気を維持する麻酔科医もいる。
2. CPB後の肺の死空、喚起血流比不均衡
CPB後、肺の機能不全がさまざまな程度でみられる。CPB中、肺の血管外に水がたまるのはほとんど避けられない。肺内シャントと死腔換気の増大は、換気血流不均衡をもたらす。大多数の患者では、死腔の増大は、CPB後の呼気終末動脈CO2較差の増大として反映される。換気血流比(V/Q)不均衡は、肺胞動脈血O2較差の増大をもたらし、PaO2を低下させる。これらは、CPB後に最も頻繁に認められる異常である。
3. 肺における好中球の集積と血管作動性物質の放出
CPB中、肺に取り込まれたPMNは種々の血管作動性物質を放出し、限局性の強い血管収縮や膜損傷から浮腫を形成し、ひいては死腔の増大やV/Q不均衡をもたらす。
4. 肺の代謝機能
a. カテコールアミンの不活性化:正常環境では、肺はノルエピネフリンの主な不活性化部位である。CPB中、肺をバイパスすることによって肺でのカテコールアミンが分解されなくなることが、CPB中にみられるカテコールアミン値の上昇の一因かもしれない。CPB後、再び肺動脈に血液が流れると、カテコールアミンの不活性化が再開する。しかし、この間のカテコールアミン値の減少は、主として産生量の減少によるものである。
b. 肺は、レニン-アンギオテンシン系、プロスタグランジン、セロトニンの代謝においても役割を果たしている。これらの機能に対するCPBの生理学的影響はあまり知られておらず、いっそうの研究が待たれる。
5. 肺における麻薬の集積
この現象は、心臓麻酔で広く使用されているfentanylで起こることが報告されている。肺はfentanylに対して高い親和性をもつ。CPB中、血清中のfentanylレベルはゆっくり減少する。肺が再灌流されると、肺に集積しているfentanylの放出により、血清中のfentanyl濃度は上昇する。
6. 肺血管抵抗と低酸素性肺血管収縮の変化
a. 肺血管抵抗:多数の因子がCPB後の肺血管緊張に影響を及ぼす。多くの先天性心疾患では、肺血管抵抗の上昇がみられる。肺血管抵抗(PVR)の上昇を制限し、肺血流を維持するために、過換気、アルカリのpHを維持するための重炭酸溶液の投与、適切な酸素化の維持を必要とする。CPB中・後のカテコールアミン値の上昇により、PVRが上昇する可能性もある。同様に、カテコールアミンの持続投与は肺血管収縮を引き起こす。例外としてよく知られているのは、isoproterenolとdobutamineである。基礎疾患に関連するPVRの上昇に対するCPBの影響ははっきりしない。
b. 低酸素性肺血管収縮:低酸素性肺血管収縮に対するCPBと低体温の直接的な影響はほとんど解明されていない。しかし、CPB後の揮発性麻酔薬と血管拡張薬の使用は、低酸素性血管収縮を阻害し、V/Q不均衡やPaO2の減少をもたらす。
7. ポンプ後の肺機能不全23)
CPB後の肺機能不全は広範な術後無気肺による軽度のPaO2の低下から、成人呼吸窮迫症候群に似た高度の呼吸不全にいたるまで、さまざまである。ほとんどの患者では術後すぐにPaO2の減少が認められるが、どの患者が重症な肺機能不全になるかを予測するのは困難である。CPB中の肺の管理については議論がある。
CPB後の高度の呼吸不全は現在では比較的まれであるが、その発生率は、術前の肺機能不全、CPB時間、術後の血行動態と直接の関係がある。肺の機能不全を進行させるCPB中の出来事には、以下のようなものがある。
a. 以下の理由による肺血流の減少
(1)限局性V/Q不均衡や浮腫の形成をもたらすさまざまな成分の塞栓
(2)内因性カテコールアミンの上昇、カテコールアミンの持続投与、肺毛細管に閉じ込められたPMNから放出される物質などによる限局性の血管収縮
b. 以下の原因による膜損傷と浮腫形成の増大
(1)補体の活性化:活性化された補体成分は毛細管の透過性を増大させる。
(2)PMNから放出される血管作動性物質:これらは毛細管の透過性を高め、限局性の細胞間隙の浮腫をもたらす。
(3)酸素フリーラジカル:直接的な細胞毒素より、毛細管レベルでの透過性が変化する。
c. 以下の理由による肺の静水圧の上昇に続いて起こる浮腫の形成
H. 炎症と免疫に対する影響
1. 全身炎症反応
CPBは生来の免疫系の非生理学的な活性化と関係し、肺血症や外傷による全身炎症反応に似た体全体の炎症反応をきたす24-26、28)。すなわち、ほぼ普遍的炎症反応(発熱、白血球増加症)からもっと重症な徴候(頻脈、発汗、心拍出量の増加、酸素消費量の増加、体血管抵抗の減少、細胞外液の増加を伴う毛細管の透過性の亢進)、臓器不全(凝固不全、DIC、血管内血栓症を伴う心不全、腎不全、肺機能不全、消化管機能不全、肝不全、脳機能不全)、さらには比較的まれな多臓器不全症候群や死に至る一連の反応を呈する。なぜさまざまな患者がさまざまな程度にこの症候群を呈するのかという疑問に対する解答はほとんど得られていないが、患者の術前状態、年齢、手術の程度と時間が要因となる。すべての大きな手術は全身炎症反応を刺激しうるが、CPBは有意に全身炎症反応を増悪させる。
これまで示唆されている重要な刺激として、接触による活性化(CPB回路や心腔内吸引での血液と人工表面との接触)、非生理学的な血流(非拍動流、高いずり速度など)、組織傷害(特に虚血再灌流)、エンドトキシン血症がある。接触による活性化は、副経路を介して補体を活性化し、アナフィラトキシン(C3aとC5a)を生産する。
アナフィラトキシンは、肥満細胞や好塩基球から伝達物質を放出させて毛細管の透過性を亢進し、マクロファージからはTNF(tumor necrosis factor)を放出させ、内皮上に白血球接着分子P-セレクチンを発現させる。補体の活性化の最終産物(C5b-9複合体)は細胞膜障害複合体(終末傷害複合体とも呼ばれる)であり、細胞の融解を起こす。CPBに関連する血漿補体タンパク濃度の上昇は、全身炎症反応で最初に認識される症状の一つであり、悪い予後と相関するように思われるが29)(図20.4)、現在、この相関の重要性はあまり明確ではない。
接触相では、凝固、線溶、カリクレイン-ブラジキニンのカスケードも活性化される。カリクレインは、炎症反応の活性化と増幅に大きな役割を果たしている(第]U因子の活性化を促進、補体の活性化、線溶、レニンの形成、ブラジキニンの放出促進)。ブラジキニンは血管の透過性を亢進し、組織プラスミノゲンアクチベータの放出を増加させる。
虚血再灌流、特に心臓と肺の虚血再灌流も全身炎症反応を活性化する。エンドトキシン血症は、CPB中にしばしばみられ、(CPB中によく起こる)内臓の低灌流と虚血による腸からのエンドトキシンの移動が原因とされてきた。エンドトキシン(リポポリサッカリドとしても知られている)はリポポリサッカリド結合タンパクと結合し、この複合物はマクロファージを強く刺激してTNFを放出させる。
全身炎症反応症候群の発生には、体液性の伝達物質と活性化した細胞を必要とする。補体タンパクとカリクレイン-ブラジキニンに加えて、伝達物質にはサイトカイン[TNF、インターロイキン1、6、8、(IL-1、IL-6、IL-8)、インターフェロン-γ]、ロイコトリエン、トロンボキサン、プロスタグランジン、血小板活性化因子、組織因子があり、これらはマクロファージ、内皮細胞、リンパ球、血小板など、さまざまな細胞で生産される。内皮細胞、好中球、マクロファージ、リンパ球、血小板の活性化は、全身炎症反応の重要な要素である。内皮細胞と好中球の接着分子(p-セレクチン、細胞間接着分子、CD11a/CD18など)の発現は、好中球を内皮に接着させ、続いて血管外遊走と脱顆粒を起こさせる。これにより、酸素フリーラジカル、エラスターゼ、他の毒性物質の放出による微小血管の閉塞と組織の障害が起こる。全身の内皮細胞は、サイトカイン(TNF、IL-1)、エンドトキシン、C5a、低酸素、酸素フリーラジカルによって活性化する。接着分子の発現と内皮細胞の活性化は、より多くのサイトカインの放出と一酸化窒素(血管拡張を起こす)の生産の増加を引き起こす。
これらの体液性伝達物質と活性化した細胞は、微小血管閉塞、血栓症、線溶、毛細管の漏出と浮腫、酸素フリーラジカルによる直接的損傷、好中球エラスターゼ、細胞膜の傷害複合体など、多くのメカニズムによって、さまざまな臓器(心臓、肺、腎臓、中枢神経)の損傷を起こす。酸素フリーラジカルは(スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシル基)は、虚血-低酸素状態における細胞と膜の損傷に関与する。酸素フリーラジカルは、活性化されたPMNと低酸素の組織におけるキサンチンオキシダーゼの活性化によって産生される。
初期の全身炎症反応は、ほとんどの患者で、刺激の停止、伝達物質の消失、自然発生するアンタゴニスト[TNF-α受容体、IL-1受容体アンタゴニスト、抗エンドトキシン抗体]の作用の結果、著明な障害を残すことなく治癒する。過剰な抗炎症反応は、防御的な炎症のメカニズムを圧倒し、感染の原因となる。この競合状態の症候群は、逆行性または代償性抗炎症反応症候群compensatory antiinflammatory response syndrome(CARS)と呼ばれる。
全身炎症反応症候群をできるだけ減弱するために、さまざまな方法が奨励されてきた。その方法には、heparinコーティング回路の使用、遠心ポンプ、拍動流、膜型人工肺、低体温、コロイドの充填、限外濾過、白血球除去または白血球濾過、ステロイドまたはaprotininの投与、抗サイトカイン療法、抗エンドトキシン療法、消化管汚染対策、接着分子やその活性化を抑える抗体の投与などがある。しかし、これまで臨床的に効果が証明されているものはほとんどない。
図20.4 年齢の異なる小児患者におけるCPB時間に関連した合併症の発生率
2. 適応免疫系の抑制
CPBは、適応機構を抑制し、患者の免疫力を低下させて、感染を生じさせる。この抑制の重症度は、手術の程度と長さ、および輸血の量に関係する。このことは、部分的に前述のCARSと関係がある。免疫抑制の原因となる。他の要因として、希釈による免疫グロブリンと補体の減少、タンパク質の変性、消耗があげられる。白血球は脱顆粒し、遊走機能や代謝機能が低下する。ナチュラルキラー細胞、Tリンパ球、Bリンパ球、網内系は機能が低下する。免疫細胞は抗体の産生を減少させ、植物性血球凝集素、IL-2への反応は低下する。CD3+、CD4+、CD8+Tリンパ球の数も減少する。
I. 内分泌、代謝、電解質への影響とストレス反応
CPBはすべての手術に伴うストレス反応を著しく強調する。このことは、epinephrine、norepinephrin、AVP(あるいは抗利尿ホルモン)、副腎皮質刺激ホルモン、コルチゾル(主にバイパス後)、成長ホルモン、グルカゴンの値が大きく上昇することにより明らかである。カテコールアミンレベルの上昇は、局所および臓器血流パターンに悪影響を及ぼすこともある。カテコールアミンはまた心筋の酸素消費量を増加させ、再灌流の大事な時期に心筋の酸素需給バランスに悪影響を及ぼす。他のストレスホルモンも異化作用を促進し、結果としてエネルギー消費の増加、組織破損が起こり、創部治癒が障害される可能性がある。
CPB中、特に糖尿病患者の場合、高血糖はしばしばみられ、神経学的機能障害と創感染の原因となっている可能性がある。インスリンで血糖をコントロールするのは困難であり、このため心臓手術中はブドウ糖を含む輸液は避けられている。高血糖の原因としては、インスリン生産の低下、インスリン抵抗性(おそらく、ストレスホルモンに関係している)、消費の減少(インスリン抵抗性と低体温による)、糖原分解と糖新生の増大(ストレスホルモンに関係する)、腎臓による糖再吸収の増加などがある。
レニン、アンギオテンシンU、アルドステロン値は、すべてCPB中に上昇する傾向にある。一方、心房性ナトリウム利尿ペプチド値は、一般にCOB開始時に低下するが、再加温時やバイパス後に上昇する。多数の患者がいわゆる病的な正常甲状腺機能症候群となり、トリヨードサイロニン(T3)、サイロキシン(T4)、フリーT4は低下するが、甲状腺刺激ホルモンは正常である。これは、病因のはっきりしない低心拍出量症候群の患者に甲状腺ホルモンを投与する理論的根拠となっている。トロンボキサンやプロスタサイクリン値はCPBとともに上昇する。
CPB中、イオン化カルシウム値、総非分画マグネシウム値は双方とも一般に低下するが、カリウム値は大きく変動する。カリウム値は、利尿薬、カテコールアミン、術前のspironolactone、β遮断薬、カリウムを含む心筋保護液、腎機能障害と関係して変動する。筋肉と心機能を正常に保ち、不整脈を防ぐために、これらのイオンを正常に保つことは明らかに重要である。
J. 人工心肺の薬理に対する影響
CPBは、血漿薬物濃度、薬物動態、薬力学に対して大きな影響を及ぼす。原因となる要因として、急な血液希釈、タンパク結合の変化[heparinの効果(タンパクに結合する遊離脂肪酸を放出し、結合した薬物を強制的に置き換える)]、低体温、血流分布の変化、肺循環の除去、CPB回路への吸収などがある。
薬物濃度の変化は、手術の時期、投与様式(一回投与か持続静注か)、投与場所(末梢、中心静脈、ポンプ内)によって影響される。脱血に2本のカニュレーションが使用され、薬物が中心静脈から投与される場合、全身に効果が現れるのに5分程度遅れることもある。したがって、薬物は心肺装置から直接投与する。人工肺での吸入麻酔薬の取り込みは、ガスの種類と人工肺のモデルによって異なると思われるが、十分に解明されていない。
したがって、CPB中の個々の薬物の薬理について一般化することは困難である。CPBの開始とともに、通常、血漿の薬物レベルは血液希釈により低下する(しかし遊離している場合は増えるかもしれない)。一方、分布容積とクリアランス率はCPB中に低下し、排泄率はしばしばCPB後に低下する。興味のある読者は、特定の薬物のデータについてHall30)やMets31)の著書を参照するとよい。
Y. 小児と大人の人工心肺
新生児、小児における大人の多くの相違点は、CPBへの病態生理学的な反応を悪化させる傾向にある32)。相違点としては、まだ熟成していない臓器系、温度調節の障害、反応性のある肺血管系、頻繁にみられる動脈管開存症の存在、卵円孔開存、左上大静脈遺残、大動脈肺動脈側副血行路の存在と気管支側副血流の増加(最後の二つの存在により左心への血液の環流が増加し、血液を脳から奪う可能性がある)などがある。大人と著しく異なるのは、体外循環回路の充填量が患者の血液量と同じか、数倍も上回ることあがあり、結果として、すべての血液成分が極端に希釈されることである。動脈カニューレと静脈カニューレは患者の体格と比べて大きい。バイパスの管理としては、しばしば極端な低体温や底流量が施行され、循環停止が行われることもある。
他方、小児は、老人に特徴的なさまざまな後天性疾患や変性疾患(アテローム硬化、慢性高血圧、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患など)をもつ可能性は低い。小児の中枢神経系は”適応性が高く”、おそらく酸素の欠乏に対してより耐性がある。
Z. まとめ
本章では、主としてCPBによって引き起こされる正常な生理的変化に焦点を当て、特定の臓器不全に関しては補助的に述べた。本章で述べた病態生理学のすべてが、CPBを施行されたすべての患者にみられるわけではない。多くの患者は、まったく影響を受けないようにみえる。実際、著明な臓器不全のないことが、おそらくCPBが成功したことの最も良い指標であろう。CPB後の臓器不全は、一つあるいはそれ以上の臓器の軽度不全から、死にいたる多臓器不全まで広範囲にわたる。顕著な合併症の発生率は、CPB時間の長さと小児患者の年齢の低下とともに上昇する(図20.4)。
術前から存在する臓器不全がCPB後の合併症に与える影響についてはあまり明らかになっていないが、CPB前の全身状態が悪いと、CPB後により重篤な合併症に陥りやすいようである。理由は分からないが、女性では心臓手術後の合併症の発生率および死亡率は上昇するように思われる33)。
最後に、患者をCPBにのせるということは、大きな生理学的侵襲であることを忘れてはならない(図20.3)。CPBによって顕著な損傷が引き起こされるかどうかは、その侵襲によってもたらされる障害を克服する個々の患者の能力にかかっている。
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