夏は虫の季節と言いますが、本当ですね
週末に更新する予定が、害虫駆除に時間を取られて遅れてしまいました
まったく……EDFッ! EDFッ!
第百七十三章 筋肉夢の枕
せっかく道を間違えたのだから、という訳でもないが、ひとまず直接魔術師ギルドに向かうのはやめて、まずは商店街に行って対魔術師用の装備を整えることにした。
魔法使いと戦うのなら、属性耐性装備は必須だ。
アクセサリーショップを回って、もう一度しっかりと装備を組み直したい。
その間、歩きながら二人にゲーム時代の魔術師ギルド攻略の話をして、知識の共有を図る。
「……と、いうことがあってだなぁ」
俺が当時の体験談を二人に話し出すと、俺たちの間に漂っていたぎこちない空気も消え去った。
代わりにリンゴはぽむ、ぽむと俺の肩を叩き、ミツキも何だか優しげな瞳で俺を見ている。
これはこれで居心地が悪い。
「よくは分かりませんが、随分と酷い目に遭っていたようですね」
「いや、あれに関してはほとんど自業自得だけどな」
俺はミツキの揺れる猫耳を目で追いながら、ゆっくりと首を振った。
未確認の情報を信じてセーブをしてしまうなんて、『猫耳猫』プレイヤーとしては未熟としか言えない失態だ。
セーブをするなら、せめてパッチの内容を確かめてからするべきだった。
パッチ導入前にイベントをクリアしているとパッチが効果を発揮しないなんてのはまだ序の口、『物忘れの多い騎士団長』バグのように同じイベントを二度受けられてしまったり、修正後に追加されたイベントアイテムが手に入らずにゲーム進行が不可能になるなど、致命的なバグが発生する場合も多いのだ。
修正項目をきちんと吟味し、ネットにあがってくる怒りの声と被害報告に目を通し、予想される危険と享受可能な利益を秤にかけ、それら全てを納得をした上で、「今からするのはゲームプレイじゃない。デバッグ作業だ」と自分に言い聞かせてから導入する。
それが『猫耳猫』の最新パッチというものだ。
当時の俺には、圧倒的にその覚悟が足りなかった。
……いや、もちろん、プレイヤーにそれだけの覚悟を強いる『猫耳猫』スタッフがおかしいのだが。
そして実際問題、ギルドイベントの影響リセットにも色々問題があり、修正の修正が入ることになった。
まず、一番不評だったのは夢オチを含めたイベントの流れのひどさだ。
魔術師ギルドのイベントではイベント内容にも微妙な修正が入っていて、儀式の後、塔の外に出られない代わりに、副ギルド長がやってきて、俺を祝福してくれるというミニイベントが入るようになった。
内容はまあ、大体は塔の外に出た時と同じだ。
副ギルド長が儀式を成功させたとして俺を褒め称え、俺が次代の魔術師ギルド長だと言って祝福の言葉を贈ってくる。
違うのは、その後。
外に出て「王都に誰もいない!」とプレイヤーを驚かせることが出来なくなったせいか、最上階にはベッドと一緒に外の様子が見れる窓が追加されていた。
そして、その街の様子が見れる窓の前で、事なかれ主義で温和だが存在感の乏しい副ギルド長が、その時ばかりは満面の笑みを浮かべて言うのだ。
「これが、新しい王都です。ほら、見えますか? あのギルドの前の狭い道。普段であればそろそろ、あの道をイムを散歩させている少女が通りかかる頃です。元気な子でね。ギルドの中のわたしと目が合うと、『お兄ちゃん、こんにちは!』と嬉しそうに笑いながら手を振っていたものです。……ですが、彼女は二度とあそこを通ることはありません。あの身の程知らずで己の分をわきまえないクソガキは、いえ、それどころか彼女が散歩させていた下等生物も、その家族も、全てがもう過去の遺物となりました。え? なぜって? それはもちろん、この王都にいた全ての生き物は、虫一匹に至るまで、全て死に絶えたからに決まっているではありませんか。……なぜ、そんな顔をされているのですか? もっともっと、お喜びください。イアスキー様と、あなたが行った儀式によって、汚らわしく愚かな民は洗浄されたのですよ!? 魔術師に偏見を抱く無知蒙昧な市民も、魔術師の種としての優越を認めない頑迷な王家も、同じ魔術の徒でありながら高邁な理念を理解しない唾棄すべき裏切り者共も、一人残らず、イアスキー様とあなたの、いえ、ほかならぬあなた様の行った儀式で綺麗に掃除されたのです! いやはや、まったく、非才にして小心のわたしには、何百年かかっても出来ない偉業です! 実に、実に素晴らしい! かつて、王国の歴史の中で、これだけ多くの人間を殺した者はおりません。あなたは確かに歴史を塗り替えた! 新しい歴史を作ったのですよ、操麻様!」
なんというか、最悪の褒め殺しである。
もちろん、字面通りの意味で。
俺は基本ソロプレイなので経験したことはないが、このクエストはソロでしか受けられないため、仲間がいる場合は塔の外で待機になり、彼らが儀式で死んだこともこの時に追加で教えられるらしい。
ないとは思うが、もしこのイベントを純真な子供がやったらトラウマになるんじゃないかと心配になるレベルの性格の悪さである。
副ギルド長は基本、際限なくそんなことをずっとしゃべっているので、大抵の人は耐え切れずに外に出ようする。
しかし、残念ながら塔の外には出られないように修正が入っている。
一つ下の大規模魔法陣の部屋の入り口は出入り出来ないようになっているため、プレイヤーは副ギルド長から逃れられないのだ。
最終的には、最上階に追加されたもう一つの物体、窓の反対側の端に不自然に置かれた、大きなベッドに向かうしかない。
すると今度は、副ギルド長はこんなことを言い出す。
「おや、お疲れになりましたか? では、そのベッドでお休みください。
ただ、気を付けてくださいね。実はこれは白昼夢で、本当のあなたはまだ、イアスキー様の前で儀式の話を受けるかどうか迷っている途中かもしれません。
眠ってしまえば、この素晴らしい夢から覚めてしまうかも。……なんて、ほんの冗談ですけどね」
そんなあからさまな前フリの通り、そのベッドで眠ると最終クエスト直前の状態にもどされるのだ。
最終クエストの始まる直前というのは、イアスキーにギルドの転送魔法陣で塔の中に送られる直前のことなので、眠った次の瞬間には死んだはずのイアスキーの目の前に立っていることになり、これは予想していても心臓に悪い。
ちなみに一度影響リセットをすると、最終クエストどころか儀式関連のことが全てなかったことになり、塔の中には入れなくなるし、イアスキーに儀式のことを訊いても、
「儀式? 粛清? それは何の話じゃ?
対立する者を排除するなどという考え方は感心せんな。
魔術師は、そうでない人間とも共存せねばならない。
それらを成し遂げるのが、我ら魔術師ギルドの責務じゃよ」
と、何も覚えていないばかりか、すっかり「綺麗なギルド長」的な模範的な言葉を返してくる。
本心なのかどうかは知らないが、影響リセット前と正反対の言動に、何だか胸がもやっとさせられるまでがワンセットと言える。
この魔術師ギルドのイベントも大概だが、戦士ギルドの方も負けず劣らずひどい。
プレイヤーがギルド加入のため、戦士ギルドの象徴であり、ギルドに『脳筋フィールド』を形成する貴重な像、『フルビルド・ボブ』に触れた瞬間、神々しい光に包まれる、というところからイベントスタート。
実はプレイヤーは『超剛筋共鳴体質』というよく分からない特殊体質の持ち主だということが分かり、生きとし生ける物全てに筋肉の加護が行き渡った理想の世界、神筋理想郷の実現のために奔走する、というとんでもストーリー。
まあ要するに、肉体言語しか解さない戦士ギルドの幹部たちとガチンコでぶつかり合いながら、フルビルド・ボブの像をどんどんパワーアップさせ、脳筋フィールドを世界全土まで覆わせればクリアだ。
脳筋フィールドとは中にいる者を脳筋化させる恐怖のフィールドで、システム的に言うと、中の人間はスキルや魔法が封じられ、己の肉体だけで戦うことが義務づけられる。
まさにガチムチのためのフィールドである。
全編ギャグテイストではまれば大笑い出来るのだが、最終イベントをクリアすると脳筋効果も強化され、全世界の人間が、女性や子供、仲間にプレイヤー自身も含めて全員、全ての台詞が「ヌン!」「ハァッ!」「フンヌラバッ!」「オスッ!」「アッー!」「ヤラナイカ?」などといった謎の筋肉語に置き換えられるので、まともなゲームプレイが不可能になる弊害があった。
こちらは魔術師ギルドのイベントと違い、全てのギルドイベント終了後も好きに外を歩き回れるのだが、キャラクターが死ぬ訳ではないのでクエストアイテムもドロップせず、どこに行っても誰と話しても「フンッ!」「ハイィィ!!」「オウフッ!」などしか口にしないので、どうやってもイベントは進まない。
だからパッチの存在は非常に有益と言えたのだが、こちらの修正は魔術師ギルドのそれに輪をかけて杜撰だった。
何しろ最終イベントクリア後、どこかで眠ると、何の前フリすらなく、
「あなたが目覚めると、理想の筋肉郷は消え、街はいつものにぎわいを取りもどしていた。
そうか。あれは、夢だったのか……。
あなたは残念そうにつぶやき、しかし、すぐに自らの上腕二頭筋に力を込めた。
大丈夫、自分の夢は、まだここにある。
あなたは過ぎ去った夢の余韻を感じながら、新たな希望に向かって第一歩を踏み出した」
という、明らかにスタッフの誰かが吹き込んだっぽい素人くさいモノローグを聞かされ、脳筋フィールドが解除されるという手抜きっぷり。
このやっつけ感のある追加イベントは、魔術師ギルドの追加イベントの底意地の悪さと同じくらいの悪評を呼び、スタッフへの大バッシングが巻き起こった。
結果、その後のパッチで副ギルド長のねちねちとした演説や、両ギルドイベントのとってつけたような夢オチ設定はなかったことにされ、メニュー画面から「ギルドイベントの影響リセット」を選ぶ今の形に収まったという訳だ。
さらに言えば、その再修正にも問題があったりするのだが……。
「それで、戦士ギルドの脳筋フィールドとやらは大丈夫なのですか?」
「そっちは問題ない。プレイヤーが協力しないとイベントは進まないはずだ」
ミツキの問いかけに、自信を持って答えを返す。
戦士ギルドのギルドイベントは、基本的にプレイヤーの特異体質に依存して進められる。
ミスリルの収集など、誰でも代替出来る魔術師ギルドの作業とは違って、戦士ギルドのギルドイベントはプレイヤーなしには進行不可能だろう。
「では、魔術師ギルドさえ潰してしまえば、後の心配はない、という事ですね」
「魔術師ギルド、というより、ギルド長のイアスキーだな。
あいつだけは、絶対に止めないといけない。
ただ、あいつを捕まえるためには、いくつか解決しなくちゃいけない問題がある」
一番厄介なのは、あいつの根城、魔道の塔だ。
魔道の塔に入るには、ギルド一階の転送魔法陣を使うか、隠し扉を開くしかない。
ただ、転送魔法陣はイアスキーにしか使えず、隠し扉の開け方はイアスキーと副ギルド長しか知らない。
隠し扉を開けるのに必要な手順はゲームデータごとに毎回違っていて、俺でも特定出来ないのだ。
「ミツキ。前に図書館の前で魔術師ギルドのサアモンとすれ違っただろ?
あいつが今どこにいるか捜せるか?」
「はい。少し待って……む?」
猫耳が、「あ、あれあれー?」とばかりに驚きに揺れる。
「捕捉出来ません。まさか、もう死んでいる、という事は……」
「いや……。ありがとう、たぶん、それで正しいんだ」
魔道の塔は、おそらく独立マップ扱いになっている。
システム的には、普通の建物よりもアーケン家のあった異次元に近い。
外から探知系能力を使っても反応しないし、転移系の魔法やアイテムも無効。
データ的に断絶しているから夢幻蜃気楼での出入りは不可能だし、ワールドマップと地続きの場所でしか使えない転移石も、やはり効果を発揮しない。
ここに立てこもられると非常に面倒だ。
最悪の場合、イアスキーと副ギルド長に塔の中に籠城されたら手出しのしようがない。
それに、不完全な状態でも儀式を強行されたら、一体何が起こるか分からない。
とにかく、相手に行動の自由を与えないことが重要なのだ。
「だから、ゲームイベントを利用する」
この世界では、イベントの強制力は強い。
こっちがゲームイベントと同じ行動を取れば、向こうも否応なしにそれに乗ってくるはずだ。
イアスキーが対応せざるを得ないイベントを連続で引き起こして、相手に行動させない。
それが基本戦略。
「まず、『ギルド加入イベント』を起こして、イアスキーをおびき出す」
ギルド加入イベントである『洗礼の儀式』では、ギルド長が直々に加入者に儀式を行う。
ほかの人間なら、この時期のギルド加入は断られるかもしれない。
だが、プレイヤーである俺が申し込みをしたなら、それは立派なイベントだ。
イベントの強制力が働いて、イアスキーを引きずり出せるはずだ。
「ならば、儀式にやってきた時に捕まえるのですか?」
「いや、儀式は転送魔法陣の上でやるんだ。もし勘付かれて塔に逃げられたら、元も子もない。
だから、そこで『下剋上イベント』を起こして、イアスキーを確実に捕まえようと思う」
『魔術師ギルドに加入』して、『ギルド長に挑戦』する、という二つの条件を満たすと、『下剋上イベント』が起こせる。
下剋上イベントとは、ギルド長の地位を賭けて行う大規模決闘イベントだ。
挑戦を宣言すると、ギルド員たちはギルド長側と挑戦者側に分かれて全員で決闘をして、勝った方のリーダーが次のギルド長になる。
ギルド員がどちらのチームに回るかはそれぞれの友好度にかかっていて、当然、ギルド員になったばかりの俺に味方する人間はいないだろう。
つまり、下剋上イベントで勝利するためには、「魔術師ギルドの全員vs俺」という戦いを勝ち抜かなくてはならないことになる。
「だけど、今の俺なら勝てる。自信があるんだ」
これは嘘じゃない。
昔の話になるが、俺は魔王戦に向けて自分の戦闘力を高めてきた。
万全の態勢で戦えば、たとえ相手が二十人いようが三十人いようが、余裕で撃破出来るという自負がある。
そして、ここが重要なことだが、プレイヤーがイアスキーに勝った場合、失脚したイアスキーは反対派の工作によってその場で騎士団に捕らえられ、城に連行される、というイベントにつながる。
……その反対派も、なぜか友好度が一定以上ないと決闘では敵に回るのだが、その辺りの細かい矛盾は気にしないことにしよう。
とにかく、下剋上イベントに勝利すれば、高確率でイアスキーを無力化出来るのだ。
そして、そのためには……。
「ただ、この二つのイベントは、どっちも一人でこなすものなんだ。
だから悪いけど、二人はギルドの前で待っていて――」
「――ダメ」
俺が言い切る前に、リンゴが俺の腕をつかんだ。
「話、聞いてただろ? 今回は、俺一人でも問題ないって。
だから二人は、おとなしく待っててくれた方が……」
「…ダメ」
リンゴは首を振り、絶対に俺を離さないという意志を全身で示すように、つかんでいた俺の腕を抱え込む。
やはり、リンゴは俺に置いていかれることに対してナーバスになっているのかもしれない。
俺だって最後くらい三人で戦いたいという想いはあるし、だからこそ二人がついてくるのを認めた部分はある。
だがそれでも、これは困る。
「なぁ。別に俺だって、リンゴを置いていきたいって訳じゃないんだ。
ただ、少しだけ……」
「…ちがう。わたしは、おいていっても、いい」
「えっ!?」
予想外の返しに、思わず言葉を失う。
先ほどのリンゴの言葉、「おいていかないで」と口にしたリンゴの表情は、俺の目に焼きついている。
なのに、置いていってもいいとは、どういうことなのか。
混乱する俺の前で、リンゴの視線が一瞬だけ自分の手に、彼女の努力の結晶でもある、指につけられた指輪に向かった。
それでも、リンゴはそれを振り切るようにもう一度俺を見上げ、はっきりと言った。
「…わたしがあしでまといなら、おいていっても、いい」
「リン、ゴ……?」
「…でも、ひとりでいっちゃ、ダメ」
ギュゥ、と、リンゴにつかまれた腕にかかる力が強くなる。
顔を上げたリンゴと視線がかち合う。
そのあまりに必死な瞳に、俺は息をすることも忘れた。
「…ソーマ、『せんれいのぎしき』では、そうびがつかえないって、いってた」
「覚えてたの、か……」
確かに、洗礼の儀式では儀式用の最弱装備を強制的に装備させられ、冒険者鞄も取り上げられる。
もちろん儀式の間だけの一時的な措置だが、今回はそれを取りもどしている暇があるか分からない。
着替えている間にイアスキーに逃げられたら元も子もない。
俺は、儀式が終わった瞬間に下剋上イベントを起こすつもりだった。
最悪の場合、洗礼の儀式の時の装備のまま、数十人の魔術師と戦わなくてはならないかもしれない。
それが今回の作戦の、最大の懸念。
出来るだけ気付かれないように話したつもりだったのだが、甘かったか。
「…そんなあぶないところ、ひとりでいっちゃ、ダメ」
俺を、ただ俺だけを気遣うリンゴの視線に、どう返したらいいか分からなくなる。
リンゴがただ、俺と離れたくないというだけの理由で俺を引き留めているのなら、強引にでも引き離すことも出来た。
だが……。
「……まったく、見ていられませんね」
硬直して何も言えなくなる俺に、スッと影が忍び寄る。
「わっ!? み、ミツキ!?」
突如、リンゴがつかんでいるのとは反対側の腕にやわらかい感触。
見ると、ミツキが俺の腕をリンゴと同じように抱え込んで、ぐいぐいと引っ張っていた。
「貴方は一人でイベントをこなしたい。リンゴさんは貴方を一人で行かせたくない。
なら、解決は簡単です。そのイベントというのは、貴方に任せます。
ただ、私達もついていって、不測の事態が起こったら介入する。
……それで、いいのではないですか?」
「え、いや、それは、そうかもしれないが……」
「…ん」
理路整然としたミツキの言葉に、俺はついうなずかされてしまった。
それを見て、ミツキはよろしい、とばかりに首を縦に振って、視線を横に流す。
「それに、二人共。話に夢中になるのもいいですが、ちゃんと周りを見る事もお忘れなく。……ほら」
ミツキが器用に耳で示した、その先。
そこには、アクセサリーショップと書かれた看板があって……。
「――私が気付かなければ、危うく目的地を通り過ぎてしまう所でしたよ?」
「んなっ!」
お前が言うな、な台詞に俺が思わず絶句すると、ミツキは気取った仕種で片耳を折り曲げ、ペチンとウインクをさせた。
(ドヤ耳ウゼェ! でもかわいい!)
自慢げにふるふる震える猫耳ちゃんの可憐さに夢中になった俺は、その下でミツキが、してやったりとばかりにリンゴに微笑みかけても、何も思わなかった。
二人の同行を渋っていたことも忘れ、ただ、両腕を引くリンゴの手とミツキの胸に誘導されるがまま、三人連れだってアクセサリーショップに入っていったのだった。
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