[シネマトゥデイ映画ニュース] 映画『ミルク』でアカデミー賞脚本賞を受賞し、さらにクリント・イーストウッドとタッグを組んだ映画『J・エドガー』やテレビドラマ「ビッグ・ラブ」なども手掛けてきた脚本家ダスティン・ランス・ブラックが、監督に挑戦した新作『ヴァージニア(原題) / Virginia』について語った。
ダスティン・ランス・ブラックが脚本! 映画『J・エドガー』写真ギャラリー
同作は、小さな田舎町に住む統合失調症を患う精神不安定なシングル・マザーのヴァージニア(ジェニファー・コネリー)は、妻子のある保安官ディック・ティプトン(エド・ハリス)と20年にもわたって恋愛関係を持ち続けていた。だがある日、ヴァージニアの息子エメット(ハリソン・ギルバートソン)がディック・ティプトンの娘ジェシー(エマ・ロバーツ)と付き合い始めたことで、それまでの環境に変化が訪れていくというドラマ作品。
ダスティン自身もシングル・マザーの家庭に育ったそうだ。「僕はテキサス出身のモルモン教の家庭に育ち、母親はポリオ(急性灰白髄炎=ポリオウィルスが原因で脊髄の灰白質が炎症を起こす)であったために、親戚が僕を育てる手助けをしてくれていた。さらに、母親はこの映画の主人公ヴァージニアが抱える統合失調症の幾つかの症状もあったんだ。だから、多くは僕個人の実体験によるものだが、貧しい家庭で精神的なトラウマを抱えながらも、ユーモアや愛があることを伝えたかったんだよ」と制作理由を語った。
統合失調症を描くうえでどのようなリサーチをしたのか、という質問に「カリフォルニア州ノースリッジ・ホスピタルの女性臨床心理士に会って、彼女に統合失調症の患者を紹介してもらい、ジェニファー・コネリーとともに彼らに会ったんだ。統合失調症の中でも症状の軽い人たちは、仕事をしていたり、家族も居たりするんだ。そんな彼らも、この映画のヴァージニアのようにトラブルに時々巻き込まれるが、そのようなトラブルも家族が居れば乗り越えることもできるんだよ」と答えた。
モルモン教の家庭に育ったことについて「僕は敬虔なるモルモン教徒だが、ゲイでもあるため、当然僕は思ってはいけない考えや、やってはいけない行動をしてきている。そのため育った環境下では抑圧を感じていた。だが、多くの敬虔でストレートな男性も性的な発想に関しては抑えられていた。でも、これほど厳しい信念のもと、性的な発想を退けようとすると、抑圧されていたために逆により性的な探究心を煽ることになると思う」とかなり率直な考えを示した。
また、同性同士の結婚を禁ずるカリフォルニア州憲法の改正を巡る裁判を題材にした朗読劇「8」について「あの朗読劇は、2008年に僕がオスカー受賞のスピーチで、政府にこのゲイ問題を持ち込むことを話し、多くの人から早すぎると反対されたことから始まった。その後、ロブ・ライナーやチャッド・グリフィンらとともに、カリフォルニア州の連邦裁判所に合衆国憲法修正第14条が適用されれば、カリフォルニア州憲法改正案(提案8号)は、ゲイ・レズビアンの人々にとって違法だという訴訟を起こしたんだ。それから、ロブ・ライナーの妻ミシェルが僕らの行動を劇にする必要があると言ってきて、そして僕が脚本を書くことになったんだ」と語り、さらにその朗読劇に参加してくれたハリウッドスターに感謝した。
映画は、統合失調症を抱える人を真摯な観点で描いた作品で、ダスティンは監督としても新境地を切り開いていきそうだ。最後にダスティンは、先日オバマ大統領が同性婚支持を表明したことについて、大きな進歩だと喜んでいたのが印象に残った。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)