巨大与党の前に、あまりにも情けない野党の姿である。このままでは自民党の「補完勢力」どころか「翼賛野党」と言われても仕方あるまい。日本維新の会が、自[記事全文]
女性にも教育を受ける権利が当然ある。パキスタンでそう訴えて闘ってきた16歳の少女、マララ・ユスフザイさんに、価値のある賞が贈られた。人権と思想の自由のための活動をたたえ[記事全文]
巨大与党の前に、あまりにも情けない野党の姿である。
このままでは自民党の「補完勢力」どころか「翼賛野党」と言われても仕方あるまい。
日本維新の会が、自民、公明の与党と、特定秘密保護法案の修正に合意した。
みんなの党に続く妥協だ。
いずれの修正も実質的な意味は乏しく、問題の根幹はまったく変わっていない。
与党は、4党で修正案を共同提案し、26日の衆院通過をめざすという。野党はこれを許してしまうのか。
愕然(がくぜん)とするのは、維新との修正合意で、特定秘密の指定期間が後退したことだ。
維新は当初、「30年以上延長できない」と主張していた。ところが、合意では「60年たったら原則として解除」と期間が2倍に延びてしまった。
しかも60年を超えても延長できる7項目の例外まで、できてしまった。
まるで与党側の焼け太りだ。これでは、維新もみんなの党も利用されるだけではないか。
維新は秘密指定できる行政機関を絞り込む案も主張したが、与党にはねつけられた。「首相が有識者の意見を聴いて政令で限定できる」との合意では、およそ実効性に乏しい。
秘密指定のチェックについても、大きな疑問符がつく。
法案の付則に「第三者機関の設置検討」を盛り込むことで合意したが、付則に書いても実現の保証はない。どんな機関になるかも不明確で、期限も区切っていない。
与党とみんなの党との合意では、首相が「第三者機関的観点」からかかわることで客観性が担保されるとした。最大の当事者を「第三者」とする意味不明。与党が真剣に問題を受けとめているとは思えない。
維新の内部からも「後退している」などの批判が噴出している。当然だ。今からでも対応を見直すべきだ。
野党ではほかに、民主党が対案を出している。
秘密の範囲は外交や国際テロに限る▽国会が委員を指名する第三者機関「情報適正管理委員会」を設置し、個々の秘密指定が適当かどうかも調べる▽罰則は政府案が最長懲役10年だったのを懲役5年以下とする――などの内容である。
政府案との隔たりは大きい。そこを埋める努力もせず、4党の修正案で突き進むのでは、巨大与党にすり寄っているとしか映らない。
与党に都合のいい修正をするのが野党の役割ではない。
女性にも教育を受ける権利が当然ある。パキスタンでそう訴えて闘ってきた16歳の少女、マララ・ユスフザイさんに、価値のある賞が贈られた。
人権と思想の自由のための活動をたたえる「サハロフ賞」である。欧州議会が1988年に創設し、毎年選考している。
新興国の経済発展が著しい21世紀といえども、女性を男性の下に置こうとする古い因習が残る国や地域はまだ多い。
また、戦乱や貧困のため、初等教育を受けられない子どもたちが世界に約6千万人いるといわれる。
今回の授賞を機に、男女の平等と、子どもの教育の権利は、現代世界において侵すことのできない普遍的な原則であることを再確認したい。
マララさんは、パキスタンで父親が設けた学校にかよっていた。女子教育を阻む反政府勢力パキスタン・タリバーン運動(TTP)の脅しに屈することなく、ブログを通して教育の権利を主張し続けた。
昨秋、下校途中にTTPに狙われ、銃で頭を撃たれた。幸い英国の病院に移されて回復し、今は英バーミンガムの学校に通い、講演活動を続けている。
サハロフ賞の初代受賞者は、南アフリカで人種差別と闘ったネルソン・マンデラ氏だった。その後も、ミャンマーのアウンサンスーチー氏や中国の民主化運動家・胡佳氏など、独裁や弾圧の下でも平和・非暴力と寛容の精神を貫いた人びとを選び、称賛の光をあててきた。
マララさんも、その系譜に連なっている。この夏の国連本部での演説では、タリバーンの兵士を憎まず、彼らの子どもたちにこそ教育が必要と訴えた。
今回の授賞式の演説でも、世界の子どもたちの思いを代弁した。「空腹と渇きに苦しみ、教育に飢えている」「欲しいものは、iPhone(アイフォーン)でもチョコでもない。1冊の本と1本のペンだけです」
パキスタンでは、小学校学齢期の女子の3分の1が未就学で、識字率も女性の方が低い。
宗教や文化にかかわらず、女性と子どもが虐げられる現実は世界各地に広く残っている。貧困から生まれる戦乱の最初の犠牲は女性と子どもであり、未来の希望を断つ悪循環となる。
「すべての子どもたちに教育を」。そんな目標を胸に、アジアやアフリカなど各地で地道に汗を流し続ける人々は数多い。
今回の賞は、そんな人々全員に贈られたに等しい。教育こそが世界の可能性を広げていく。その信念を共有したい。