中日新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

冷え込む日韓 歴史は慎重に語りたい

 日本と韓国の関係は冷え込んだままだ。背景には歴史をめぐる対立がある。自らの歴史認識を主張するだけではなく、具体的な懸案にしぼった外交解決の道はないか、もう一度考えたい。

 日韓両首脳の会談はいまだに実現しない。朴槿恵大統領は「いま会談をしても関係が悪化する恐れがある」と消極的だ。

 経済交流も影響を受けている。今年一〜九月、韓国を訪れた日本人観光客は昨年同期比約25%減、日本企業の対韓投資も約40%減った。円安の影響とみられるが、国民感情の悪化も見逃せない。

 それでも、両国は経済依存度が高く、自治体や民間団体の交流も続く。どこかで歴史をめぐる対立に歯止めをかけねばならない。

 日韓は一九六五年、国交を正常化した。基本条約と付属協定を再確認する必要がある。

 請求権・経済協力協定により、植民地時代の未払い賃金など個人の請求権は「完全かつ最終的に解決された」と明記された。昨年、韓国最高裁が元徴用工らの日本企業に対する賠償請求権を認めたが、これは戦後日韓の出発点となった協定を否定するものだ。

 朴政権は司法の判断にはとらわれず、徴用工らの請求権で日本側の責任は解決済みと明言すべきだ。そうしないと、国際的な信用を失うし、日本企業が韓国への投資をためらう事態を招くだろう。日韓関係の枠組みを崩すことがないよう、慎重な対応を望みたい。

 元従軍慰安婦問題は、より事情が複雑だ。在韓被爆者、サハリン残留韓国人も含めた三つの案件は、日本側も赤十字などが関与して人道的見地からの救済を図った経緯がある。当事者は少数になり高齢化している。国家賠償とは別の救済措置をもう一度考える余地があるのではないか。

 韓国メディアは安倍政権を右傾化と批判してきたが、最近やや変化がみられる。アベノミクスや集団的自衛権への取り組みが注目されているため、韓国政府に対し「対日批判一辺倒では孤立する」と指摘する新聞論調も出てきた。この機運を生かして、官民の対話を重ねて流れを作り、首脳会談への道筋をつけたい。

 二十世紀初頭の独立運動家で伊藤博文を暗殺した安重根を、菅義偉官房長官が「犯罪者」と発言して、韓国側の反発を招いている。歴史の評価は難しいが、関係修復を目指すのなら言動には慎重を期すべきだ。

 

この記事を印刷する

PR情報



おすすめサイト

ads by adingo




中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ