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■リスクのある企画にこそパワーが生まれる

 世界的な大ヒット作となった『おくりびと』だが、企画段階では「納棺師が主人公では暗すぎる」と出資者が集まらなかった。タイでのロケを敢行した『闇の子供たち』は「タイの恥部を日本人が映画化するな」と撮影現場が銃撃されかねない危険が伴った。中沢氏がリスクを冒してまで、大手映画会社が扱わない企画にこだわるのはなぜなのか?

中沢 「リスクそのものがパワーとなるからです。セディックインターナショナルは、僕が個人経営している弱小プロダクションです。大手映画会社やテレビ局のように、ベストセラー小説を映像化したくてもなかなかできません(苦笑)。三池崇史監督と組んで『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(07)という全編英語での台詞による和製西部劇を作ったんですが見事に大コケして、目玉が飛び出るくらいの赤字を抱えました。でも、タランティーノも出演してくれ、作っていてあんなに楽しい映画はなかった(笑)。大失敗したけど、そのことがバネになった。「また、やろう」と約束した三池監督は『十三人の刺客』(10)を大ヒットさせて、僕が抱えていた赤字を帳消しにしてくれたんです。僕は自分の企画を進めるときは自腹を切る覚悟でやっています。リスクを背負う覚悟が、人の心に届く映画につながると信じています」

TAP_kanzen01.jpg
松田美智子のノンフィクション小説を原作にした『TAP 完全なる飼育』。オーディションで選ばれた前川伶早が鮮烈シーンに挑んでいる。

 若者たちに観てほしいという意図から『I am ICHIHASHI』は入場料&配信料を1000円に設定。また、FacebookやTwitterを利用すれば、500円で入場できる割引サービスも行っている。ちなみに同日公開される『TAP 完全なる飼育』は女子高生拉致監禁事件を題材にした『完全なる飼育』(99)の第8弾。中沢氏が第1作を手掛けた人気シリーズだ。『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(12)など数多くの実録犯罪映画を放った若松孝二監督に師事した片嶋一貴監督が、南国を舞台に性と死が交錯する青春ドラマに仕上げている。




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