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P.L.A.M. PLAM プラム | 照明設計サポート設計知識とツール 照明設計資料

照明設計資料

照度

1.照度の重要性

 照明の目的は種々の場所、作業において見ようとするものを見やすくして、その結果、作業能率の向上に、また同時に安全で快適な視環境の形成に寄与することです。
 したがって、照明の設備はその目的に対して合理的に設計、設備され、運用されなければなりません。
 一方、ものの見え方などは人間の生理・心理的視覚特性に基づいて照明条件と視対象物、および周囲環境の諸特性とによって影響されますが、特に照明のレベルが基本的に重要です。
 たとえば、暗い場所では視覚の能力が低下し、認識できる視覚情報が少なくなります。照明のレベルに最も関係の深い照明要件は照度です。
 したがって、照明環境における作業性、安全性、快適性を維持、向上するためには照度の検討がたいへん重要です。

2.照度の効果

1 照度と視力
 照度の効果のひとつとして、視力の向上があります。
図1は順応輝度と視力の関係を示す一例です。(順応輝度は眼が順応している面の照度と反射率の積に比例すると見なされますので、反射率を一定とすれば照度とおきかえてもよい)図1では、視標の輝度対比がパラメータになっていますが、この大小にかかわらず順応輝度(照度)の増加により視力の向上がみられます。これは小さいものを見分けるには高照度が必要なことを意味しています。また、同じ順応輝度(照度)でも輝度対比が低下すると、視力も急激に低下しますので、輝度対比の低い対象物では、照度を高くして、順応輝度を上げることが見え方をよくする方法だといえます。

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 ただし、ここでいう「視力」とは、たとえば視力測定に使用される図2に示す「ランドルト環」のようなものを用いて環の切れ目の方向を識別させ、その最小の角度θを求め、この角度(θ) を分で表わし(1分=1/60度)、その逆数を「視力」としたものです。すなわち、θ=1分のランドルト環の切れ目の方向が何とか見分けられる目の視力は1.0以上で、もし、これの2倍の開き角のランドルト環しか見分けられない場合の目の視力は

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となります。

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2 照度と文字の読みやすさ
 文字の読みやすさを心理学的に計量化し、照度が文字の大きさと読みやすさに及ぼす影響を調べた結果が図3です。
 仮に長時間作業を続けるためには、それぞれ精密な作業は2o、普通の作業は3o、やや粗な作業は5oの大きさの文字を容易に読める(図3の読みやすさ70)程度の照度が必要であると考えますと、

 精密作業 3,000 lx
 普通作業 900 lx
 粗い作業 130 lx

の照度が作業面上に必要であることになります。作業面が水平に近い場合は、室内の平均照度をこの照度の値に設計すればよいのですが、作業面が垂直面であるような場合には、この照度を作業面上に与えるための室内の平均照度は、ここに示した値の2倍前後の照度が必要となります。この値はJISの照度基準の照度値によく一致しています。

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 実際の読書では視線が動いて、文字を走査しながら認識や判断を行っており、一つの指標の上に滞在する時間は非常に短くなります。この場合視力が低下することが知られていて、その例を図4に示します。実際に文章を読む場合の視線の動きから判断すると、一文字当たりの視認時間は、1/20〜1/100秒と言われています。
 照度が高い場合と照度が低い場合を比較すると、同じ視力を得ようとすると、照度が低い場合は文字を見る時間を長くする必要があり、作業性の低下につながります。

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3 照度と作業能率
「1 照度と視力」にて示されているように、照度が高い程視力がよくなりますので、それに伴い作業能率も上がるのが普通です。
図5はグレアのない状態で、作業面における水平面照度と、作業遂行上示された速さと正確さを加味した作業成績との関係を示す一例です。これは米国の研究データですが、観測者として若年齢者(20歳代)と高年齢者(60歳代)の場合が例示されています。いずれの場合でも照度の増加に伴い作業成績は向上しています。とりわけ、青年に比べ高年齢者の方がはるかに照度の依存性が強く、その重要性が顕著であります。

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 5種類の作業状態における照度と作業量の測定結果例を図6に示します。
 これらの曲線が示すように、やはり明るいほど能率が良くなっていることがわかります。ただし、これには照明の質の良いことが必要で、せっかく明るくしたとしてもまぶしい光が目に入ったり、あるいは周辺が暗すぎたりすると、かえって作業能率の低下をきたしますので注意しなければなりません。

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表1に照明改善効果の測定例を示します。
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4 照度と疲労
 細かい字を読んだり、記号を選別するような視作業を長い時間にわたって続けると、目は疲労してきます。
図7はいろいろな照度でこまかい抹消作業を30分間行わせた後の、毛様筋の疲労による調節時間の変動率(作業前を1.0とする)を測定したデータです。同図(a)は対比の強い抹消用紙、(b)は対比が弱く見にくい抹消用紙を用いた場合です。両者のデータとも、500 lxは目の疲労の少ない最低照度であり、できれば1000〜2000 lxが望ましいという結果を示しています。

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5 照度と安全性
 照度が不足していますと、安全標識の誤認や疲労を招きやすく、したがって事故が増えます。作業者の安全を守るためにも適切な照度の確保が必要です。

3.年齢と照度

 高齢になると、目の水晶体の弾力性の低下や濁り、および網膜の機能が低下します。このため、全体に視覚機能すなわち、視力、遠近調整力、輝度対比の弁別力、色の識別能力が低下します。
 このような事情を勘案すると、視覚系の機能を必要なレベルに保つには、照度のレベルを若い人に対する場合よりもかなり
高くする必要があります。
 図8は、年齢層による「十分に読み易い文字の大きさ」と照度の関係を示しています。
 図9は、視力の測定距離と視力の関係を示します。50cm以下になるとその差が大きくなるのが分かります。
 年齢の増加に伴う視力の低下の例を図10に示します。これは観測距離30cmの条件での近距離視力データです。
 年齢別に表わした順応輝度と視力の関係の例を図11に示します。

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 これらの結果から、年齢の増加に伴う必要照度の上昇をまとめると表2のようになります。この表から分かることは、年齢がおよそ40歳代後半を超えると必要な照度の上昇が大きくなります。また、高い視力を得るにはさらに高い照度が必要になります。

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 従って、高齢者が細かい視作業を行う場合には、若年者の場合の1.5〜4.0倍程度の高い照度が必要になります。
 なお、これらの値は文字を見る作業に言えることです。日常の生活における環境の必要照度についてはその他の研究が必要です。

4.照度の法規

 作業場所の照度の最低値が、労働安全衛生規則によって定められています。
労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)
第3編 衛生基準 第4章 採光及び照明
(照度)第604条
image  事業者は、労働者を常時就業させる場所の作業面の照度を、右の表の左欄に掲げる作業の区分に応じて、同表の右欄に掲げる基準に適合させなければならない。ただし、感光材料を取扱う作業場、坑内の作業場、その他特殊な作業を行なう作業場については、この限りでない。

5.照度の選定

 照度には、作業に直接必要な照度と、安全確保および快適な生活環境をつくるのに必要な照度があります。高い生産性を要求される精密作業には高い照度を必要としますが、全般照明をそのレベルまでもっていくのは経済的にも省エネルギーの点からも大変なので、局部照明を併用して高い照度を確保してもよいとされています。
 照度の選定については、各国において自国の経済状況や生活レベルに応じて自国に最も適した照度基準が決められており、我が国では、JIS Z 9110:2010照明基準総則の中で、場所別、作業別に必要な照度が定められています。
 したがって、まずその値を基準にした上で、施主の意向などを考慮して照度を選定する必要があります。

[参考文献]
1)池田紘一ほか:低輝度対比ランドルト環視標を用いた視力の測定、電気関係学会光応用・視覚研究会資料 LAV-80-18 ほか
2)印東太郎、河合悟:適正照度に関する心理学的実験、照学誌、49-2、pp.52-63(1965)
3)河合悟、黒沢凉之助:照度と読みやすさとの関係を表わす簡単な実験式、照学誌、57-9、pp.580- 583(1973)
4)(社)照明学会編:照明ハンドブック(1978)
5)Illuminating Engineering Research (USA):Annual Report 1976, Project 30B-75, Visual Performance Effects of Age Dynamic Visual Studies.
6)International Lighting Review 1996 Vol 17-4〜5
7)(社)照明学会照明普及会編:照明教室 No.46 合理的な工場照明
8)長南、加藤:第19回交通眼科学会予稿集、16
9)(社)照明学会編:新時代に適合する照明環境の要件に関する調査研究報告書(1985)
10)(社)照明学会編:オフィス照明基準、照明学会技術基準 JIEC-001(1992)

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