はみだし解説 |
■“光”とは? “色”とは??
「光そのものには色は付いていない.」(Sir Isaac Newton )・・・ということで,
目に入って視覚を起こす“光”とは,波長380 nm ⇔ 780 nm の放射電磁波であった.これが可視光である.ちなみに,
300 nm くらいまでが近紫外,2500 nm くらいまでが近赤外,となる.
波長の差によって感じるのが,種々の“色”であった.従って,ふつうに言う“光”とはいろいろな波長成分の合成である.
■ あかるさ
brightness
光源色に対する強さの感覚.
明るさが弱い⇔暗い,強い⇔明るい,非常に強い⇔まぶしい,など.
■光の測定
光に物差しを当てて測ろうとする時,そのスタンスは,光源のサイドから考えることのできる光束・光度と,被照射面から見た照度・輝度がある.
@放射する物理量:空間に放射される出力エネルギー.ワットあるいはジュールで表わす.W=J/S
A光束 luminous flux:光の進行方向の「ある面」を単位時間内に通過する光量(放射束)を標準比視感度によって評価したもの.
記号は F .単位はlm;ルーメン.
B光度 luminosity:光源からある方向への単位立体角内に放射される光束.単位面積で測る発光能力,あるいは発光体そのものの明るさ.
記号は I .単位はcd;カンデラ.
C照度 illumination intensity:光を受ける単位面積当りに入射する光束(物体に照射される光の量).光源によって照射される面上の明るさ(光束密度).
記号は E .単位はlx;ルクス=lm/u.
D輝度 luminance;brightness:光を受けた面を発光面とし,それをある方向から見た物のあかるさ.この発光面のある方向への光度を,その方向から見た見かけの面積で割った光量.あるいは,単位立体角当りの球状の光度分布(光束放射)をする光束.
記号は B または L .単位はcd/u.cd/平方メートルをニト(nt),cd/平方センチメートルをスチルブ(sb)という.
光は,どれだけの量(光束 = ルーメン)が空間に放射されるかで光度という単位になり, どれだけの量が面に当たるかによって照度の単位になり, どれだけの単位密度で放射されるかにより輝度という単位になる.
■光の単位
光度とは,光源から出る光の強さを表わす.
照度とは,ある面に達する光の量を表わす.
輝度とは,物体に反射してヒトの眼に入る光の量を表わす.
光度は,
点光源からあらゆる方向に出る光束の,単位立体角当たりの割合.
輝度は,
照らされている面の明るさ(反射される光の強さ)を,その面の垂線(法線)に対して角度θ 方向からみて表わしたもの.
★【カンデラ】 candela;光度の単位 cd = lm/sr
周波数540×1012 Hz(波長 555 nm )の単色光放射をする光源の,放射強度がステラジアン(sr:単位立体角)当たり683分の1ワット(ジュール毎秒)である光度を1カンデラとする.
そのほかの放射周波数に対しては,目で感じた明るさに「照度」が合うように(心理物理量),ヒトの光に対する感度(標準化比視感度)を考慮したものになっている.
全方向均一である1cd の点光源は,単位立体角当たり1ルーメン(lm)の光束(1lm/sr )を放射する.
言い換えると,1cd=4π ルーメン.
光 度 I( lm/sr )= | 光 束 |
――――――― | |
立体角 |
★【ニト】 nit;輝度の単位,あるいはカンデラ毎平方メートル.
みかけの単位面積(d S)から立体角当たりにどれだけの光(光度;d I)が放射されるかを表す.
輝 度 L( cd/u )= | d I |
――――――― | |
d S |
面積1m2あたり1カンデラであるとき(1cd/m2 ),1ニト(nt)となる.
快晴の空の輝度は,2〜6×103 nt ほど.
☆【スチルブ】 stilb;輝度の単位 sb =1cd/cm2 = l04 cd/m2
面積1cm2あたり1カンデラであるとき(1cd/cm2 ),1スチルブ(sb)という.
快晴の空の輝度は,0.2〜0.6 sb ほど.
★【アポスチルブ】 apostilb;輝度の単位 asb =1/ π cd/m2 = lm/m2
面積1m2あたり1ルーメン(1/ π カンデラ)であるとき,1アポスチルブ(asb)という.ラドルクスと同じ.
1/ π nt に相当.
☆【ランバート】 lambert;輝度の単位(または,ランベルト.Lambert 先生はドイツ人だそうです.) L = lm/cm2
面積1cm2あたり1ルーメンであるとき(1lm/cm2 ),1ランバート(L)という.
1/ π sb に相当.
☆【フート・ランバート】( lm/ft2)
ランバートは cm2 を単位面積とするのに対し,
フート・ランバートは ft2 を,
ラドルクスは m2 を単位面積とするもの.
単位面積面に投射される光束の密度.単位はルクス,あるいはルーメン.
照度は光源の光度に比例し,光源からの光は距離の二乗に反比例して低下する.
(点光源から発した光は,距離が2倍になると受ける面積が4倍になるので,照度は1/4となる).
★【ルクス】 lux;照度の単位,あるいは入射光束の単位.lx = lm/m2.
面に入射する光束(d Φ)をその面の面積(d Α)で割ったもの.
照 度 E(lx)= | d Φ |
――――――― | |
d A |
1m2当たり(単位面積)にどれだけの光束(ルーメン)が照射されているかを示す.
1カンデラの点光源から発する光線に対し,半径1m の球面上でのあかるさが1ルクス(lx)となる.
★【ルーメン】 lumen;光の量(光束:Φ)
すべての方向に放射される1カンデラの点光源に対し,立体角1ステラジアン内の光束を1ルーメン(lm)という.
1ルーメン=1cd/sr または,
1m2あたり1ルーメン(1lm/m2 )であるとき,1ルクス(lx)となる.
放射エネルギー(単位 w )を視感度で測ったもので,一般に光の量を表わす.
☆【ラドルクス】 radlux;光束発散度.単位はルクスと同じ.1rlx=1asb
光を反射する面の単位面積あたりの光束発散度の単位.
面から出る光束(d Φ)をその面の(みかけの)面積(d S)で割ったもの.
光束発散度 M(rlx)= | d Φ |
――――――― | |
d S |
1m2当たり 1ルーメンの光束を発散する時,1rlx(非SI単位)=1lm / m2.
照度Eに対し拡散面の反射率ρによって,M=ρE
完全拡散面では輝度に相当し,M=πL.
●換算
●照度と輝度との関係
輝度と照度の関係は、物体面の吸収の度合いと π が仲立ちしている.すなわち,
L = ρ・ E/π
これは
1) 光度 I(カンデラ)の,距離 r での照度E(ルクス)は,
E(lx)= | I |
――――――― | |
r 2 |
2) 完全拡散面(ρ=1,距離 r での単位面積は π r 2)の輝度L(cd/m2)は,
L(cd/m2)= | I | = E/π |
――――――― | ||
π r 2 |
L: | 輝度(cd/m2) |
ρ: | 物体の反射率K.黒いほど値が低く,100%反射は1.0 |
E: | 照度(ルクス) |
π: | 円周率 |
輝度の基本単位は,単位面積あたりの光度で[cd/m2]という単位を用い,これが nt(ニト)である.光っているものを完全拡散面と見なす時,輝度に π の補正を加えてアポスチルブ[asb](もしくはラドルクス)として照度(ルクス)と換算しやすい値にできる.
●完全拡散面
どの方向から見ても同じ輝度である表面のこと.
●ステラジアン steradian 立体角
立体角は球の表面積で3次元的角度を定義したもの.
球表面上の部分的面積に対し,球の中心に頂点が有るような円錐の頂点まわりの広がり角が立体角である.
(ここで,S は球の表面積m2 ,r は半径m ,立体角Ω はsr,)
S =4πr 2
Ω =S/r 2
Ω =4π( ≒ 12.566)ステラジアンは,全平面角でいうθ=2πラジアンと同じく,360°の全周をあらわす.
球表面上の部分的面積 dS〔m2〕は r 2 に比例するから,立体角 Ω のときの円錐形を想定すると,
単位球(半径1 m)の表面積は,4π m2で,全立体角は4π sr,
1 srは半径1 m の球表面上の1 m2 の面積が中心に対して保つ立体角で,全立体角の1/4πということになる.
●SI単位系(国際単位系)
いわゆるメートル法などを含む単位系.
光度はカンデラ,長さはメートル,質量はキログラム,などを用いて表わす.これにより輝度単位は cd/m2 が推奨される.
●でしべる(dB)
エネルギー密度で,2つの値の差(比)を表わす単位.人間の感覚は音圧や光量などの物理量に対して対数的に感じる,という法則による.
10進法との変換の都合?で常用対数が用いられる(視角のlogMAR値も常用対数だ).
log10 2 ≒ 0.301,log10 3 ≒ 0.477,log10 3.16 ≒ 0.5,log10 10=1,log10 100 = 2,log10 1000 = 3,・・・・・となる(log10 A=B ⇔ A=10B).
元の単位はベル(B)であるが,その1/10のデシベル(dB)が一般的である.
輝度をいうときも,対数の差であらわす.ということで,・・・・・
ⓐ 絶対デシベル:
Humphrey視野計では,最大視標輝度は 10,000 asb である.これを 0 dB とする.
10 dB(1 log unit)の輝度減弱は 1/10
,20 dB(2 log unit)の視標輝度は 1/100
,30 dB(3 log unit)では 1/1000,
40 dB(1/10000)くらいがヒトの限界らしい.
これの見方を変えると,元の値との倍率を表わすことができる.
ⓑ 相対デシベル
比 | 倍率 | 所詮 近似値ではあるが・・ |
---|---|---|
-7.0 dB | 0.2 倍 | |
-6.0 dB | 0.25 倍 | |
-5.0 dB | 0.316 倍 | |
-4.0 dB | 0.4 倍 | (0.3981) |
-3.0 dB | 0.5 倍 | |
-2.0 dB | 0.63 倍 | (0.631) |
-1.0 dB | 0.79 倍 | (0.7943) |
0.0 dB | 1 倍 | |
1.0 dB | 1.26倍 | (1.25898) |
2.0 dB | 1.58倍 | (1.58489) |
3.01 dB | 2 倍 | |
4.0 dB | 2.51倍 | (2.51189) |
4.77 dB | 3 倍 | |
5.0 dB | 3.16倍 | (3.16228) |
6.02 dB | 4 倍 | |
6.99 dB | 5 倍 | |
10.0 dB | 10倍 | |
17.0 dB | 50倍 | |
20.0 dB | 100倍 | |
30.0 dB | 1000倍 |
ⓒ そうすると,・・・・・
1 asb(40 dB)→ 2倍 → 2 asb(37 dB)
1000 asb(10 dB)→ 2倍 → 2000 asb( 7 dB),ということで
2倍あるいは半分の変化とは 3 dBの差ということになる.5倍のぶんは 7dBの差であるから,
20 asb( 27 dB)→ 5倍 → 100 asb( 20 dB)とか,
2000 asb( 7 dB)→ 5倍 → 10000 asb( 0 dB)で,計算が合う.
そういう訳で,
+1 dB は125%/−1 dB は80%,+2 dB は160%/−2 dB は63%,+3 dB は200%/−3 dB は50%,となる.
ⓓ Goldmann視野計は
照明 1,429 lx(ルクス)×反射率 70%=視標輝度 1000 asb(最大なので 0 dBとする.相対デシベル,だな).
これに ×0.8=−1 dB , ×0.63=−2 dB , ×0.5=−3 dB , ×0.4=−4 dB , ×0.316=−5 dB ,
×0.316×0.316=−10 dB , ×0.316×0.316×0.316=−15 dB ,−20 dB ,−30 dB ,
等の減光フィルタで視標が出来ている.ちなみに,
(0.8)2=0.63,(0.8)3=0.5,とか,(0.316)2=0.1,となる.
端数をどうするかというのは,どの教科書にも出てこない.たとえば,+1 dB を125%とするか126%とするか,1000 asb に対する−15 dB を 31.6 asb とするか 31.5 asb とするのか,などなど.
さてどうしたものか......
ⓔ 背景輝度は
視野計測は背景輝度対視標輝度のコントラストに依存することで,一定の順応状態と瞳孔サイズが要求される.元祖たる Goldmann視野計の背景輝度は 31.6 asb(10.1 cd/m2 )で設計されており,HFA もこれに準じている.
小さい瞳孔径や透光体混濁では網膜照度に影響がでる.また視野計同士での比較が厳密にはできない理由のひとつもこのへんにあるのだそうだ.
ⓕ 網膜照度は
瞳孔面積が 1 mm2 であるときに,
輝度 1 cd/m2 の光源が網膜上に生じる照度で表わす.
luxon ルクソン=troland トロランド=photon フォトン(1916).
例:
10 cd/m2 の輝度面を見ている観察者の瞳孔面積が 50 mm2 であるとき,網膜照度は 500トロランド( tr )である.