〔クロスマーケットアイ〕逆行高の日本株、日銀緩和期待などで海外勢の買いを誘引
[東京 21日 ロイター] - 早期の米緩和縮小観測や中国経済減速懸念で、欧米や新興国の株価がさえないにもかかわらず、日本株が逆行高となっている。円安に加え、公的年金改革や日銀の追加緩和期待がヘッジファンドなど海外勢の買いを惹きつけているという。ただ、海外材料が日本に無縁というわけではない。足の速い資金だけに、リスクオフムードが広がった場合の売り転換には警戒も強くなっている。
<円安と連動しやすい日本株> 10月29─30日のFOMC議事録では、経済の伸びによって正当化されれば、今後数回のFOMC会合のいずれかで資産買い入れ縮小を決定できる、と一部のメンバーが認識していたことが明らかになった。次期米連邦準備理事会(FRB)議長候補のイエレン氏らハト派の発言で強まっていた米量的緩和の長期化観測は揺り戻されている。12月の緩和縮小も再び視野に入ってきた。
流動性縮小を警戒させるリスクオフ方向の材料であり、ドイツなどを除いて欧米や新興国の株価は軒並み下落。しかしながら、日本株だけは逆行高となり、日経平均 は250円超上昇、約半年ぶりに1万5300円台を回復した。東証1部売買代金も2兆3000億円台とボリュームも膨らんでおり、上値追いの様相をみせている。
日本株独歩高の1つの要因は対ドルで100円半ばまで上昇した円安だ。テーパリング(米緩和縮小)観測の強まりで、10年米長期金利は2.8%台に上昇。米株下落はリスクオフの円高材料だが、米金利上昇や日本株高を背景とした円売りの方が優勢となっている。新興国通貨も安く、ドル高は日本だけの材料ではないが、円安と連動しやすい日本株にとって強い買い材料として受け止められている。
また円安の背景には、日銀の追加緩和期待もある。日銀はきょう開かれた決定会合で政策据え置きを決めたが、市場では緩和期待が根強く残っている。「2%の物価目標を達成するため日銀はいずれ追加緩和に踏み切るとの見方が海外勢には多いようだ。円安期待が日本株買いの要因となっている」とT&Dアセットマネジメントのチーフエコノミスト、神谷尚志氏は話す。貿易赤字の拡大や日米のCPI逆転もあり、円安期待は高まりやすい環境にある。
<軽くなり始めた需給>
こうした材料を背景に日本株買いを進めているのは、やはり海外投資家だ。11月10日─11月16日の対内株式投資は1兆2949億円の資本流入超となり、日銀の金融緩和決定直後の今年4月7日─13日の1兆5688億円に次いで、今年2番目の大きさとなった。「海外勢の大量買いが明らかになったことも、日本株の買い安心感いつながっている」(立花証券・顧問の平野憲一氏)という。
11月は5月高値の信用期日やヘッジファンドの決算もあり、需給悪化が懸念されていたが、ここまで日経平均は約860円(5.9%)上昇。売りを吸収して上昇する地合いの強さをみせている。「一部のヘッジファンドの決算は20日。新年度も日本株買いから入っているようだ。5月高値の信用期日もほぼ通過したとみられ、需給的には軽くなり始めている」(国内証券)とみられている。
政府の有識者会議が国内債券を中心とする公的年金のポートフォリオの見直しを求めた最終報告を20日発表したが、これも「株式などへのシフトが期待できる」として中長期的な需給改善期待につながっている。法改正に約2年かかるとみられ、あくまで中長期の材料だが、「巨大マネーのシフトに期待を寄せる海外勢が多い」(外資系証券トレーダー)という。
日本独自の材料が増えてきたことが日本株逆行高の要因だが、米国のテーパリング観測が一段と強くなり、世界的にリスクオフが広がった場合に、強さを維持できるかは不明だ。今年前半と異なり「アベノミクス」には成長戦略の遅れなどから失望感も出ており、緩和マネーが収縮に入れば、日本も例外ではない可能性がある。
実際、今年5月にテーパリング観測が強まった際には、日経平均は約3000円下落し、海外株以上に神経質なもろさをみせた。今回の上昇相場はまだ初期段階であるが、海外勢の動きが日本株を左右する状況は変わっていない。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は、日本企業の業績は拡大傾向にあり、日本株上昇の理由には裏付けがあるとの見方を示しながらも「足の速い海外勢の買いが主体であり、売り転換には警戒が必要だ」と慎重な構えを崩していない。
<東京市場 21日> ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
日経平均 国債先物12月限 国債331回債 ドル/円(15:00) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 15365.60円 144.77円 0.625% 100.70/72円 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
+289.52円 -0.14円 +0.015% 100.02/04円 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 注:日経平均、国債先物、現物の価格は大引けの値。
下段は前営業日終値比。為替はNY午後5時。
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