足立中学生自殺 いじめ原因の1つ11月21日 17時52分
3年前に自殺した東京・足立区の中学3年生が学校でいじめを受けていた問題で、足立区の第三者調査委員会は、いじめとの因果関係が分からないとした当時の教育委員会の調査結果を覆し「長期にわたるいじめが自殺の原因の1つだった」とする報告書をまとめました。
平成22年10月、足立区の中学校に通う3年生の男子生徒が自宅で自殺し、当時の調査で、この生徒が複数の生徒から言葉によるいじめを受けていたことが分かりましたが、足立区教育委員会は「いじめによって自殺したかは不明だ」として因果関係については認めていませんでした。
調査が不十分だとする生徒の両親の要望を受けて、ことし2月、外部の学識経験者らによる区の第三者調査委員会が設けられ、再調査した結果を21日、足立区に提出しました。
それによりますと、生徒の遺書の中に「自分が一番辛いと思ったのは、あざけりと同情。それも多人数の中でのそれだった」「死にたいと思う原因はこれくらいのものであり」などと書かれていたことが分かったということです。
このため、調査委員会は「いじめの深刻さに教師たちが気づかないまま、長期間にわたって侮辱的な呼び名で呼ばれるいじめを受けたことが自殺の原因の1つだった」と結論づけました。
調査委員会の委員長を務めた中央大学の横湯園子・元教授は「いじめと自殺の因果関係は不明とした当時の教育委員会の対応は不適切だった。学校は子どもたちの態度や言葉の変化に常日頃から気づいて見えにくいいじめも早期に発見できるようにしてもらいたい」と話しています。
調査委員会設置し再調査進める
この問題を巡っては、3年前、生徒が自殺した直後にも、両親からの要望を受けて区の教育委員会が原因を究明するための調査をしていました。
そのときの調査では、教員や生徒から聞き取りを行った結果、生徒は中学1年生のときから、複数の同級生から侮辱するような呼び名で呼ばれていたことが確認されました。
しかし、足立区教育委員会は「いじめによって自殺したのかどうかは不明だ」として、因果関係については認めていませんでした。
去年7月、大津市で中学生がいじめによって自殺した問題で、教育委員会の調査が不十分だという声が上がるなか、警察が全容解明を目指して生徒が通っていた中学校と教育委員会を捜索しました。
その後、足立区で自殺した生徒の遺族も、調査は不十分だったとして外部の第三者によって改めて調査をやり直すよう求めました。
これを受けて足立区はことし2月、教育問題に詳しい専門家で作る調査委員会を設置して再調査を進めてきました。
区長「不明恥じている」
再調査の結果を受けて足立区の近藤やよい区長は記者会見を開き、「調査委員会の結論を重く受け止め、改めてご遺族に深くおわび申し上げます」と陳謝したうえで「調査委員会と当時の教育委員会の調査でなぜ導き出される結論が違ってしまったのか、当時の報告を受け入れたみずからの不明を恥じています」と話しました。
そして「周囲にいた教師ら学校側がいじめに気付かなかったでは済まされない。どんなささいないじめでも自殺に結び付いてしまう可能性があるという思いで相談態勢を充実させるなど一人一人の生徒に寄り添った対応をしていきます」と話しました。
遺族側弁護士報告は評価
自殺した生徒の遺族の代理人の関哉直人弁護士は記者会見で、「遺族からも丁寧に聞き取りをするなど詳細な調査をして、いじめと自殺に因果関係があることや、教育委員会の当時の対応に問題があったことにも言及しているなど、調査報告は評価できる」と話しました。
そして、両親のコメントとして「調査委員会の方々が私たちに寄り添って調査してくれたことに深く感謝しています。いじめと自殺の因果関係を明確に認めていることや、長期にわたるいじめがなければ自殺には至らなかったと言及している内容は納得できるものでした。もっと早く原因を究明してもらいたかったとは思いますが、今は子どもたちが安心して学校で過ごせるように二度とこういうことが起こらないようにしてほしい」と読み上げました。
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