金融の脆弱化
テーマ:アメリカ経済株式会社三橋貴明事務所
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「顔のない独裁者 」のプレストーリーです。よろしくお願いいたします。
10月のユーロ圏のCPI上昇率が2010年2月以来約4年ぶりの低水準(0.7%)となり、アメリカもわずか1.2%(9月)と物価上昇率が低迷する中、欧米の株式市場が史上最高値を更新しています。
『NYダウ、4営業日連続で最高値 一時1.6万ドル超す
http://www.asahi.com/articles/TKY201311190002.html
18日のニューヨーク株式市場は、大企業で構成するダウ工業株平均が小幅に値上がりした。終値は、前週末より14・32ドル(0・09%)高い1万5976・02ドルとなり、4営業日連続で最高値を更新した。取引時間中には一時、1万6000ドルの大台を突破した。(後略)』
『欧州株式市場=続伸、独DAXは終値で最高値更新
http://jp.reuters.com/article/jp_eurocrisis/idJPTJE9AH03520131118
18日の欧州株式市場は続伸し、FTSEユーロファースト300は5年ぶり高値を更新して引けた。ドイツ公益株が上昇をけん引したほか、ユーロ圏の景気見通し改善を示す経済指標や中銀の金融緩和策も引き続き支援材料となった。
FTSEユーロファースト300種指数.FTEU3は6.40ポイント(0.49%)高の1304.25。
DJユーロSTOXX50種指数.STOXX50Eは 26.77ポイント(0.88%)高の3081.30。
公益株に押し上げられる格好で、独クセトラDAX指数.DAXは9225.43と、終値で最高値を更新した。(後略)』
消費者物価指で見たインフレ率が低迷する中、株価がひたすら上昇していく。何が起きているのでしょうか。消費者物価の意味を考えれば、理解できます。
消費者物価とは、文字通り財やサービスが消費されたときの価格です。消費財の物価が上がっているということは、生産者が「生産」した付加価値の金額が高まっているという話です。同じ製品、サービスを生産したにも関わらず、付加価値の名目的な金額が高まるとは、要するに「所得の金額が増えている」という話です。(付加価値=所得の分配の話は、取りあえず脇に置きます)
つまりは、消費者物価の上昇とは、生産者(企業、労働者)の労働の価値の上昇でもあるわけです。
現在、バブル崩壊後のデフレ化を防ぐため(日本はデフレ脱却を目指し)、FRBや日本銀行が量的緩和を拡大しています。なぜかマネタリーベースを「回収」していたECBも、事実上のゼロ金利政策に突入したこともあり、今後は再び量的緩和に向かうでしょう。11年後半からのECBのマネタリーベース拡大は、南欧諸国やアイルランドの財政危機を食い止める目的だったのでしょう。危機が一応、落ち着いたので、マネタリーベースを回収したものの、今後は「デフレ化防止」のために再びマネタリーベース拡大に転じざるを得ないと思います(すでにして遅すぎですが)。
【日本、アメリカ、ユーロ圏のマネタリーベースの推移(2008年1月=1)】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_44.html#Mbase
問題は、中央銀行は発行したお金(マネタリーベース)の行き先を管理することはできないという点です。そもそもの目的は「デフレ化防止」「デフレ脱却」ですので、お金を財やサービスへの消費、投資に使ってもらわなければなりません。ここで言う投資とは、民間住宅投資、民間企業設備投資、公的固定資本形成(公共投資)の三つのみです。株式投資や土地への投資、金融商品への投資は含まれません。
消費に民間住宅、民間企業設備、公的固定資本形成を加えたものとは、要するに名目GDPです。(純輸出、在庫変動は省略)中央銀行が発行したお金が、名目GDPになるように使われれば、デフレ脱却に向かいます。ところが、銀行から借りられたお金が株式、土地、先物取引、為替取引(FX)などに向かうと、名目GDPは増えません(証券会社や不動産会社の手数料収入を除く)。
無論、株価が上昇していけば、キャピタルゲインを得た(あるいは「得る」)人が消費を増やしてくれるかも知れません。そうなれば当然、名目GDPが増えますが、株価上昇「のみ」では消費が増えたことにはなりません。
そして、株価や土地価格、先物価格などが上昇しても、物価に影響を与えないのはもちろんのこと、「雇用」もあまり改善しません。株式、土地、先物などの「商品」は、動く金が大きい割に「雇用」は少ないのです。つまりは、労働者(証券会社の社員など)一人当たりで扱う金額は大きいのですが、
「金額が増えれば増えるほど、雇用が増える」
という話にはなりません。
【アメリカマネタリーベースと失業率の推移】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_44.html#USMU
アメリカはリーマンショック以降、すでに2.6兆ドルもマネタリーベースを拡大しました。ところが、未だに失業率はリーマンショック前を回復していません。
もちろん、上記は「アメリカの量的緩和は無駄だった」などという話では決してありません。と言いますか、リーマンショック以降にアメリカが量的緩和政策に踏み出さなければ、下手をすると「第二次世界大恐慌」になっていたと(個人的に)考えています。
単に、量的緩和のみでは雇用改善や物価上昇のためには力不足(あるいは短期的には力不足)という話です。理由はもちろん、上記の通り、中央銀行はお金が「ストック(資産:株式、土地、金融商品など)」に向かうのか、それとも「フロー(所得:財・サービス)」に向かうのかを管理することはできないためです。
というわけで、公共投資、設備投資減税などの「財政政策」の出番なのですが、このまま主要国の政策担当者が財政均衡主義を貫き、「お金を財やサービスに導く」ための財政支出拡大に踏み出せなければ、どうなるでしょうか。物価が上昇せず、マジョリティの国民の所得が増えない状況でストックの価格だけがひたすら上昇していき、アメリカが量的緩和政策を終了した途端に、再び「○○ショック」ということにはならないでしょうか。
先日来、「国土の脆弱化」という話題を取り上げていますが、現在の世界を見ていると「金融の脆弱化」を感じざるを得ません。そして、この「金融の脆弱化」を引き起こした主犯は、グラス・スティーガル法廃止を代表とする金融の規制の緩和です。
一応、来年の7月にグラス・スティーガル法的な「ボルカー・ルール」がアメリカで適用されることになっています。とはいえ、現在の株式価格の高騰を見ていると、ボルカー・ルール適用前に○○ショックが起きるか、もしくはボルカー・ルール適用自体がショックの引き金になりかねないと危惧しているわけです。
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積極財政による日本経済復活を目指して活動をしているボランティアグループです。
Klugにて「三橋貴明の『経済記事にはもうだまされない』」
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