輪の真ん中で、締めの挨拶をする上本。和田監督(後ろ)も充実の表情だ(撮影・白鳥恵)【拡大】
来季の青写真を描けない。つまりレギュラーのほとんどが白紙-。それは秋の時点では、間違いなくうれしい悲鳴だ。南国特有の日差しを浴びるたび、和田監督の予感は確信へ変わっていた。
「もちろん、そういう(白紙の)ポジションが多いんちゃうかな。今までどうしても、そこには(レギュラーと)差があったけど、その差が埋まりつつあるね。十分勝負できるんじゃないかな」
来春の競争が待ちきれないとばかり、うなずいた。体力強化を最大テーマに若手を鍛え上げた20日間。オフは2日だけ。新任の掛布DCが積極的に選手を指導し、鼓舞すれば、指揮官自身も24時間、戦闘状態だった。睡眠は1日平均6、7時間だったが、夜中に目が覚め、そのまま朝まで寝つけない日もあった。
若手の台頭が無いと言われて久しい虎。しかしこの秋はうれしい発見の日々だった。MVPに選んだのも1軍出場わずか2試合(1打席)、来季2年目の緒方だ。「打も守も走も3部門で(コーチとの間で)名前があがってきた。1軍戦力の中にほうり込んでも十分やっていける。競争させたときに面白いな、というのをみせてくれた」。16日の韓国LGとの練習試合(安芸)で一発を放つなど来春1軍キャンプ行きを決めた“新鮮力”を引き合いに、チームの新陳代謝へ手応えを得た。