ベラルーシ共和国ゴメリにおける小児甲状腺がん登録 年次別 事故当時年代別 山下俊一氏 2000年

 

 第13回県民健康管理調査検討委員会(2013年11月12日)が福島の子どもたち58名が小児甲状腺がんおよびがん疑いと発表しました。その中で、福島県立医科大学 鈴木眞一教授はチェルノブイリでの小児甲状腺がんの発症年齢のピークは0から5歳(事故当時)、今回の福島の小児甲状腺がんの患者の事故当時の平均年齢は16.8歳。だから福島の子どもたちの小児甲状腺がんは放射線の影響ではない、と説明しています。

 しかし、長崎県立医科大学で福島県放射線健康リスク管理アドバイザーであった、更に、今年2月までこの県民健康管理調査検討委員会の座長をつとめていた、山下俊一氏は2000年「被爆体験をふまえた我が国の役割-唯一の原子爆弾被災医科大学から国際被ばく者医療協力-」題した論文の中で、「ベラルーシ共和国ゴメリ州における年次別 事故当時年齢別 推移」の小児甲状腺がん登録数を発表しています。

 これを見ると、チェルノブイリ原発事故が起きた1986年に小児甲状腺がんを発症し登録されたのは事故当時13歳の子ども。事故翌年に登録された子どもは事故当時11歳、12歳、14歳、16歳の子どもです。

 事故から3年目に初めて事故当時0~5歳の子どもが小児甲状腺がんと登録されます。事故当時1歳、5歳の子ども。そして14歳、15歳、16歳の子どもです。

 事故から5年目以降は小児甲状腺がんの子どもたちが爆発的に増加し、また、事故当時0~5歳の子どもたちの割合が増えてきます。

 今回の福島での小児甲状腺がんの発症年齢は、チェルノブイリ事故とまったく同じ経過を辿っているのではないでしょうか。

 福島でも0~5歳の子どもは穿刺細胞診をやろうにもじっとしていることができず、かといって全身麻酔をかけることもリスクとの関係でなかなかできない、という実態があるようです。

 ですから、事故当時0~5歳の子どもが甲状腺がんにかかっているかどうかはもっと大きくなって穿刺細胞診が受けられるようになってからです。

 しかし、2013年3月にベラルーシを医療現場で研修を受けた際、ベラルーシの医師は、小さな結節3~4mmでも結節の形状から悪性である疑いがある場合は穿刺を行う。小さな子どもでも3~4人大人が押さえつけてでも穿刺を行う。全身麻酔を使うこともある、とベラルーシの医師は語りました。それは子どもの小児甲状腺がんは放射性物質誘発がんであり、転移が早いからである、と。

 チェルノブイリでは初期に甲状腺がんがリンパ節や肺に転移し、子どもが15人亡くなっています。自死した子どももいます。初期にはこんなに早く転移するとは思わなかったので、甲状腺を全摘出することもしなかった。しかし、この小児甲状腺がんは放射性物質誘発がんであるから転移しやすいのでベラルーシでは法律で甲状腺の全摘出、および、放射性ヨウ素治療で残った甲状腺細胞を殺すことが定められています、とベラルーシの医師は語っています。(ベラルーシ訪問 2013年3月)

 ベラルーシのゴメリ州と日本の福島との人口密度を考えると、年間1000人の小児甲状腺がんの子どもたちが出ておかしくありません。年間1000人を超える小児甲状腺がんの子どもたちがでたら、受け入れる病院もなく、子どもたちが手術とその後の放射線治療を受けることができません。 いつまでも「この小児甲状腺がんは放射線の影響ではない」などと言ってごまかしているのではなく、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアの先例に学び、早急に診断と治療のための体制を整えるべきです。