一つは、価格変動性(ボラティリティ)の低さだ。私募REITは、J−REITのように証券取引所に上場していない。J−REITは、TOPIXをはじめとした株式市場の値動きに強く連動し、「J−REITを買った人は、結果的に株式のリスクを取ってしまっている」(桐谷社長)。GSAMによると、実物不動産のボラティリティ約2%に対し、J−REITは約20%もの変動幅がある。

これに対し、私募REITは年2~4回の不動産鑑定評価額を基に時価を決めるため、投資口価格は大きく変動しない。長期投資を前提としている年金基金などにとっては、日々時価を算出する必要もなく、私募REITは好都合だ。分配金の目標利回りも4~5%とJ−REITに比べて遜色ない。

さらに、投資期限がないことも大きい。私募ファンドのように期限があると、たまたま投資の終了時点(出口)の不動産市況が悪い場合は、ファンドが保有する不動産を安値で売却し、結果的に投資家はキャピタルロスを負う危険性がある。しかし、私募REITの場合は「無期限で、出口の時期が左右されることもない」(三菱地所投資顧問の新井利幸ファンドマネジメント部次長)という。

しかし、課題がないわけではない。最大の問題は、投資家が投資資金を回収したいときに換金できるかどうか。たとえば、三菱地所投資顧問では流動性対策として、定期的な増資やいざというときに売却できる投資金額の小さい住宅を組み入れるなどの手段を用意している。しかし、市場でいつでも売却できるJ−REITと比べると見劣りする。

 

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