最高裁 去年の衆院選は違憲状態 制度整備を11月20日 17時17分
去年の衆議院選挙で選挙区ごとの1票の価値に最大で2.43倍の格差があったことについて、最高裁判所大法廷は憲法違反の状態だという判決を言い渡しました。
選挙の無効を求める訴えは退けましたが、「構造的な問題は解決されていない」として、格差の解消に向けた抜本的な取り組みを国会に求めました。
去年12月の衆議院選挙では、選挙区ごとの1票の価値に最大で2.43倍の格差があり、2つの弁護士グループが選挙権の平等を保障した憲法に違反するなどとして、選挙の無効を求める訴えを各地で起こしました。
判決で最高裁判所大法廷の竹崎博允裁判長は判決で、「格差は、憲法が求める1票の価値の平等に反する状態だった」と指摘して、憲法違反の状態だという判断を示しました。
判決はそのうえで、小選挙区を5つ減らす『0増5減』が行われたことについて、「格差が2倍未満に抑えられたことは一定の前進で評価できる」と指摘しました。
一方で、人口の少ない県への配慮からすべての都道府県にまず1議席を割り当てる「1人別枠方式」について、「法律上は廃止されたが、多くの都道府県では以前の区割りがそのまま維持されていて、構造的な問題が解決されているとはいえない」として、選挙制度の整備を国に求めました。
去年の衆議院選挙に対しては、各地の高等裁判所で「選挙無効」や「憲法違反」の判決が相次ぎましたが、最高裁の結論はおととしと同じで小選挙区制が導入されてから2回目となる「違憲状態」となりました。
また審理に加わった14人の裁判官のうち3人は、さらに踏み込んだ「憲法違反」だとする反対意見を述べました。
判決は、これまでの取り組みがなお不十分だと指摘していて、国会に対し格差の解消に向けた抜本的な取り組みを求めるものとなりました。
原告「違憲状態との判断これまでより後退」
判決のあとの記者会見で、原告の1人の山口邦明弁護士は「全国16件の裁判のうち、14件で高等裁判所が憲法違反だと判断しているなかで、最高裁が国会の『0増5減』の取り組みを高く評価して憲法違反ではなく違憲状態だと判断したのは、大変遺憾であり、これまでの判断から後退している。今月28日から相次いで各地の高等裁判所で言い渡されることし7月の参議院議員選挙を巡る裁判の判決に大きな影響を与えると大変危惧している」と述べて、最高裁の判決を批判しました。
また、伊藤真弁護士は、「今の国会議員に民主的な正当性がないことを指摘した判断は重大で、国会は司法の判断をしっかり受け止め是正する責務を負うと明示した点は評価できる。1票の格差はわれわれを一人前扱いしていないという意識を国民ももっと持つことが重要だ」と話しました。
識者「格差2倍未満に保つ仕組みを」
20日の判決について、一橋大学大学院の只野雅人教授は、「全国の高裁で違憲の判断が相次いだことを考えると、最高裁の判断はやや後退したとも感じるが、最高裁が前回の選挙に続いて『違憲状態』と指摘しているのは相当に重いとみるべきだ」と述べました。
そのうえで、「最高裁は、1票の格差の解消について、国会の一連の対応をやむをえなかったものとして認めたが、それでもなお『0増5減』では不十分だと厳しい注文をつけている。国会は格差を2倍未満に保つ仕組み作りを継続していくことが求められている」と指摘しました。
首相「厳粛に受け止め」
判決について、安倍総理大臣は総理大臣官邸で記者団に対し、「判決を厳粛に受け止めている。これから判決内容を精査していきたい」と述べました。
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