特定秘密保護法案に言いたい:米国と同じ失敗するな−−ニューヨーク・タイムズ東京支局長、マーティン・ファクラーさん
毎日新聞 2013年11月20日 東京朝刊
◇マーティン・ファクラーさん(47)
秘密の範囲があいまいで官僚の裁量が大きいことや、国民、国会のチェック機能が不十分なところが問題だ。
ある程度の秘密管理は必要だが、米国ではエドワード・スノーデン米中央情報局(CIA)元職員の事件で分かるように過剰な秘密主義の弊害が目立っている。秘密機関がいったん大きな力をつけると、なくすのは大変だ。日本は米国と同じ失敗をすべきではない。
日本政府は、米国などと情報共有するには法案が必要だと言う。自民党議員は米高官からの要請があると言うが、口実に過ぎないのではないか。日本側に「情報を共有するために体制を作ってほしい」と伝えたとされるアーミテージ元国務副長官らは共和党で、オバマ政権とは関係がない。
確かに米軍は兵隊の命に関わるから情報管理の徹底を要求しているだろう。だが日本の官僚が力を得ることは望んでいない。
罰則の最長懲役10年も重い。本当の軍事秘密、国の安全そのものに関わる情報なら厳しくして仕方がない。だが、沖縄密約事件のように日本国民の知るべき情報が隠される恐れがある。
安倍晋三首相らは、米国に頼らず、英国や豪州のように対等な同盟国になることを目指しているのだろう。「情報管理をしっかりすれば相手にされるのだろう」と考えているのかもしれない。【聞き手・青島顕】=随時掲載
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■人物略歴
1966年、米アイオワ州生まれ。慶応大や東京大大学院に留学。2003年、ウォールストリート・ジャーナル記者として来日。09年に現職。