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家族四代「灯は消さぬ」 日高唯一の映画館・大黒座95年、ファンも後押し

(11/16 14:25)

現在の大黒座。左から雅弘さん、母雪子さん、妻佳寿子さん

現在の大黒座。左から雅弘さん、母雪子さん、妻佳寿子さん

 【浦河】日高管内で唯一の映画館「大黒座」(大通2)は、今や道内でも数少ない個人経営の映画館だ。複合映画施設(シネコン)と違い、座席指定なし、飲食物の持ち込み自由と、昔ながらの映画館の雰囲気を今に残し、道内外のファンに愛され続ける。創業95年を迎えた今年末は、デジタル映写機を導入する予定。人口約1万3500人のマチにある映画の灯は消えない。

 大黒座は、現在4代目館主を務める三上雅弘さん(62)の祖父辰蔵さんが1918年(大正7年)に創業。大工として富山県から浦河に移住した辰蔵さんが「年を取ってもできる仕事」と考えて始めた。

 開業時の名称は「大黒館」。映画以外の興行も盛んに行おうと、辰蔵さんはすぐさま「大黒座」に改称。サイレント映画だけでなく、旅芝居や浪曲などでにぎわいを見せた。

 辰蔵さんの死後は妻ヨネさん、三上さんの父政義さん(2004年他界)へと経営が引き継がれた。戦後の53年に増改築。映画黄金期の50年代は、北洋漁業で浦河に滞在する漁業者なども訪れ、220の客席が常に満員だったという。

 しかし、漁業の衰退や過疎化などから経営は徐々に悪化。60年代末からは副業のクリーニング店が経済的な支えに。現在も映画館の赤字をクリーニング店で穴埋めしている。

 館の前を通る道道が拡幅された94年、座席数を220席から48席に縮小、改築した。当時は周囲から廃業を勧められたが、三上さんは「気が向いたときにふらっと立ち寄り、気軽に映画を見る。大黒座のそんな昔風の雰囲気を残したかった」と営業を続けた。

 1日の来場者がゼロという日もある。だが1人でも客がいれば必ず上映する。住民から自主上映会を開きたいと頼まれれば、可能な限り引き受ける。2005年の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」では、夕張市民グループが選定する「鉄っちゃんシネマ大賞」に大黒座が選ばれた。四代にわたり映画文化を守り続ける三上家が高く評価された。

 ファンの後押しも心強い。地元有志による大黒座祭りは今年で10年目。16日夜に同館で開かれる。今回は1600円の当日券に、同館で16日から12月6日まで上映する「ペコロスの母に会いに行く」の無料鑑賞券を付ける。認知症の母と中年の息子の日々をユーモラスに描いた作品だ。

 苫小牧や帯広にシネコンができ、石油の高騰でクリーニング店も打撃を受け、経営は厳しくなるばかり。映画のデジタル化に対応するため、現行のフィルム映写機に加え、12月初旬にデジタル映写機を導入する。費用の約500万円は、金融機関から借り入れる。

 三上さんは「デジタル化したから必ずお客さんが来てくれるわけじゃない。60歳を過ぎて借金をするのかと悩みました」と胸の内を明かす。それでも三上さんは「いくら苦しくても、上映を続けていくのが大黒座の役目」と笑った。(五十地隆造)

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