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“知る権利”なお残る懸念

11月19日(火) 21時40分


●川上キャスター
ここからは、現在、審議が続いている特定秘密保護法案についてお伝えします。

●池尻キャスター
この法案はどんなものなのか、坂田キャスターお願いします。

●坂田キャスター
この法案は、簡単に言うと、機密情報を漏らした公務員らの罰則を大幅に強化するものです。

これまでの法律では、例えば、国家公務員法では最長で懲役1年、自衛隊法では最長で懲役5年でしたが、特定秘密保護法案では最長で懲役10年となっています。

そして、この法律は、特定秘密を知り得た側にも適用されます。

法案では、報道や取材の自由に十分に配慮するとされていますが、具体的にどんな方法による取材が違反行為にあたるかは示されていません。

特定秘密となるのは、こちらの4つの分野(防衛・外交・スパイ活動防止・テロ行為防止)です。

しかし、どのような情報が指定されるのかは明示されていません。

また、いったん、指定されれば、永久に解除されない可能性や、誰が秘密指定の妥当性をチェックするのかなど、さまざまな問題が指摘されています。

こうした中、きょうも与野党の修正協議が続くなど、審議は大詰めを迎えています。

●中国漁船衝突事件
(音)

特定秘密保護法案のきっかけになったとされるのが、2010年に尖閣諸島沖で発生した中国漁船衝突事件で、海上保安官が捜査資料のビデオ映像をインターネット上に流出させた事案です。

これを受け、当時の民主党政権が、秘密保護の法律整備に向け準備を始めました。

●安倍晋三首相(今月7日)
「情報漏えいに関する脅威が高まっている状況や外国との情報共有は情報が各国において保全されることを前提に行われていることにかんがみると、秘密保全に関する法制を整備することは喫緊の課題であります」

先月25日に法案を提出した安倍政権。

背景には、秘密の保護をより厳格化しなければ、アメリカを中心としたほかの国から安全保障にかかわる情報を得られなくなるのではないかという懸念があります。

●法案に抗議する市民団体
「国家の情報にアクセスし、それについて判断し、そして意思表示をするための情報を隠ぺいしようとしている」

審議が本格化する中、全国で法案に反対する動きが広がっています。

福岡県内でも法案に反対する市民団体が街頭活動を行いました。

「秘密は戦争の始まり」だと主張しています。

●「特定秘密保護法案を廃案にする会・福岡」・脇義重さん
「戦争の直前には、たくさんの情報統制の法律ができました。それと、今は似かよっているのではないかと。情報が秘匿されてしまうんじゃないかと。そうした秘匿が、すなわち戦争につながっていくんじゃないかと思います」

●北九州市での抗議活動
「外交秘密だとして、TPPの情報など政府に都合の悪い情報は、何でも秘密にされます」

法律の専門家の組織、日本弁護士連合会も法案に反対しています。

●話す福岡県弁護士会・近藤恭典弁護士
「安全保障に関する情報というのは、すなわち戦争ですよね。戦争に関する情報ですよね。最も国民に利害のあるそんな大事な情報を、一切、国民の目から隠してしまう」

政府は、国会審議を通じて、国民への説明を尽くすとしています。

●菅義偉官房長官(先月25日)
「いろんな不安については、審議過程の中でしっかりと、審議を通じて、国民の皆さんにも説明していきたいと」

玄海原発の運転差し止めを求める裁判を起こし、6700人あまりの原告団の団長を務める元佐賀大学学長の長谷川照さん。

テロや武力攻撃の対象ともなりかねない原発に関する情報は、特定秘密に指定されるのではないかと懸念しています。

●元佐賀大学学長・長谷川照さん
「安全保障に関する機密だと思う。その機密の中に、確実に組み込まれる」

Q原発も?
「原発も」そのうえで、秘密が多い世の中は発展しないと主張しています。

●長谷川照さん
「秘密だと、ある恣意的なものだけを守ることになっちゃうでしょう。そうじゃなくて、公開して、こんなことがあるというようなことがわかれば、そのうち、国民が『どういうものが大切なんだ』と、『これは守ろう』と言い出す。それで発展する」

憲法や情報公開制度に詳しい福岡大学の井上禎男准教授は、秘密指定の妥当性を検証する第三者機関が設置されない点を問題視しています。

●福岡大学法学部・井上禎男准教授
「秘密を指定する者が『秘密だ』と言ったものが秘密になるわけですよね。従って、秘密っていうのは、やっぱり指定する者の恣意的にならざるを得ない。国会であるとか、裁判所のチェックの仕組みがないことを考えても、完全にブラックボックスの中に入って、我々には全然、見えないっていうおそれっていうのは、かなり危惧はしていますね」

同様の声は国会からも上がっていて、安倍総理も、第三者機関の設置に理解を示す発言をしました。

●安倍晋三首相(今月16日)
「第三者的な仕組みによって(秘密指定の)適切な運用を確保する。そういう仕組みを作っていく。そのことも私は重要な課題であると」

また、いったん、秘密とされた情報が永久に指定解除されない可能性がある点については、修正協議の中で、与党側から指定の期間を「原則30年以内」とする案も出ています。

しかし、国民の不安を払拭できたとは、とても言えません。

福岡大学の井上准教授は、今の国会でこの法案を成立させるのは、拙速すぎると言い切ります。

●井上禎男准教授
「もっと十分な市民、国民、あるいはメディアでの議論を深めたうえで、さらに、国会での議論、今、行われていますけれども、国会での議論もさらに詰めて、深めて、行ったうえで、本来は成立すべきか否かを判断すべきものであろうと思います。だから、少なくとも、私は、拙速にすぎるので、今国会での成立というのは見送って、十分な議論をもっと尽くすべきであるというふうに考えます」

今の国会は、来月6日までの予定です。

衆議院での審議は、今週がヤマ場になるとの見方が強まっています。

※スタジオ※

●川上キャスター
VTRの中にありました市民からの不安の声に対しては、政府関係者の立場で見ますと、「そういう情報は秘密には指定されないよ」という内容もあったかもしれません。

しかし、それは裏を返しますと、この法案に対する国民の理解が深まっていないことの表れとも言えそうです。

今の国会にこだわらず、議論を続けるべきではないでしょうか。

2013年11月19日(火)のニュース