フィリピン中部を襲った台風30号による深刻な被害に対し、人命救助、救援物資の提供はまさに一刻を争う。支援は今後、長期にわたり、幅広い分野で必要になるだろう。今こそ日本が貢献する時だ。
現地からの報道などによると、台風30号はフィリピン中部を直撃した後、ベトナム、中国にも上陸し多くの被害者を出している。
被害の深刻なフィリピン・レイテ島では、家屋、建物が倒壊、至る所にがれきの山ができている。行き場を失った人たちが救援を待ち望んでいる。
道路、通信網は遮断され、被害の全容はまだわからない。日本人を含め安否不明な人も多くいる。被災地は、衛生状態の悪化で病気の発生も懸念される。
国連や各国政府は緊急支援に乗り出した。わが国は、国際緊急援助隊として医療チームを派遣、被災者の救援に当たり始めた。自衛隊も派遣する。医薬品、水、食料など必要な物資は多い。官民を挙げた、さらなる支援が必要だ。
台風30号は、上陸した中で史上最大級の大きさだったという。最近は地球温暖化の影響もあり、海面温度が上がり、台風の発生が増え、大型化している。海面水位の上昇による高潮の被害も懸念されている。
レイテ島も高潮が被害を拡大させた。中心気圧が八九五ヘクトパスカルと非常に低くなったため、海面が大きく吸い上げられ、強い風が相乗効果となり、三メートル以上の波が沿岸部を襲った。一九五九年に発生、高潮で五千人以上の死者・行方不明者を出した伊勢湾台風と同じだ。
名古屋地方気象台などがまとめた伊勢湾台風の教訓によれば、当時も台風の進路などの情報は十分にあり、正しかった。一方で、避難勧告を含め、住民への情報の徹底が不完全だったという。避難勧告を受けても逃げずに被災した人もいた。
今回の台風は想定を上回る大きさで、これまでの対策の効果が出なかったのかもしれない。しかし、どうしてここまで被害が大きくなったのか。
今後の対策、被害の未然防止のために、気象分析や避難法などのソフト面では日本に貢献できることは多いはずだ。
東日本大震災の際、フィリピンは、医療チームの派遣や義援金の提供など、温かい支援をしてくれた。アジアの友邦として、今こそ日本が貢献する時だ。
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