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第1章の2 【メリル城奪還】
姫様の秘密
 洞窟の外の建物が建築途中なので、ひとまず俺の部屋として割り当てられたさして広くない部屋。
 その部屋に家宰さんとシンシアさん、そして俺と姫様の4人が集まっていた。
 まだ本調子でない家宰さんとシンシアさんだが俺が呼びつけたのだ。
 さきほど部屋に入るなり固まった直立不動の二人。扉の側で、なんともいえない諦めにも似た達観した表情をしている。
 理由は単純。姫様だ。

 俺のベッドにすわっている姫様の姿は異形のものになっていた。
 上半身は今までの姫様と変わりはない。すこしエキゾチックな魅力を備えた可愛い女の子だ。
 だが、下半身。腰から下が問題だ。
 彼女の下半身は、きれいな光沢のある虹色の鱗に覆われているのだ。足はなくなりまるで蛇のような姿だ。
 半人半蛇。ラミアという種族らしい。先ほど姫様が自分でそう告白した。

 先代のルーグ卿、つまり姫様のお父さんは、レムレースという女性に一目ぼれしたらしい。この女性が姫様のおかあさんであり、つまるところ、メリルの町に隠れ住んでいたラミアだった。
 ラミアという種族は女性だけの種族の上、その生態から美形ぞろいなので一目ぼれ自体は無理も無いことだとは思う。姫様だって凄いかわいいし、奥さんとやらも評判になるぐらい美人だったらしいからね。
 ここで妾くらいにしておけば何にも問題はないのだが……。
 無駄に情熱と行動力のあった先代のルーグ卿は様々な困難を乗り越え彼女を后とした。
 めでたしめでたし。
 ……物語ならそこで終わりだけど、生憎と現実にはその続きがある。
 当然コレは公には出来ない。
 この世界は別に獣人やその他のファンタージな種族の人に偏見や差別なんかはないらしいのだが、それでも貴族。それも小なりとはいえ土地持ちの貴族が、その高貴な青い血にラミアなんぞという穢れた血を入れるのは許されないというのだ。
 しかも、このラミアという種族こまった習性がある。
 人の血を吸うのだ。
 といってもたいした量ではない。
 普段は人と同じものを食べるから吸血は一週間に一度か二度で十分。
 それも健康な成人であれば毎日吸血されても自然に回復する程度の量しか吸わない。
 ただ、この習性のタメなのか、ラミアという種族はあまり好かれる種族ではないらしいね。
 蚊に刺されて死んだって話は聞いたことがないけど、蚊が好かれているという話も聞いたことはないしな。

 今まではシンシアさんか家宰さんから吸血していた。
 でも、先日二人揃って倒れたからな。姫様はお腹をすかせていたのだ。
 非常食ということで白い犬を飼ってはいるけど、姫様によると、犬の血は酷く不味いんだそうだ。
 その状態の姫様は、生まれて初めてお酒を飲んだ。俺からすればジュースと変わらないものだけど、姫様はちょっと酔っ払ってしまった。
 それで無意識のうちに俺の血を吸ってしまったということらしい。
 もともと、婚約前には言わなくてはいけないから、もう少したってから俺に告白するつもりだったみたいで、姫様は清々とした感じだ。
 驚く俺が落ち着くのを待って色々と話してくれた。

 以前姫様を鑑定した時にスキルが見えなかったのは、ラミアの一族が作り出すことが出来る指輪の力。
 その指輪は探知の魔法を妨害する効果があるとのこと。
 俺の<究極鑑定>のスキルも妨害しているところからしてかなり強力な効果だ。
 人と共に生きるしかない彼女達のいわば必需品なのだとか。
 まあ、そんなことを話した後で、俺は二人を呼んだのだ。

 じっと二人をにらみつけると、二人は押し付けあうように見つめあった後、家宰さんがとりなすように喋りだした。

「ひい様のことを隠しておりましたのは本当に申し訳ありませんでした。ただ、ウルドにこのことを知られるわけにも行かず、やむを得ず……」

 どうやらウルドの3男さんとの結婚を渋っていたのはここいら辺にも理由があったらしい。
 だけど、俺が聞きたいのはそんなことではない。

「問題はそんなことでは無いでしょう?」

 それを遮る俺。

「……はい。伝統あるルーグ家の青い血に……」
「いや、そうじゃなくてさ。姫様の足は元に戻るんですか? まさかずっとこの状態なのですか?」
「えっ! いや、足の方は姫様が自由にもどせますが……」

 なんだよ。
 心配して損した。それなら何の問題もないな。俺には無敵のスキル<獣だって大丈夫>があるのだ。蛇も獣のうちに入るのか、全然嫌悪感とかわかないしな。むしろ鱗が七色に輝いていて綺麗だとすら思う。
 ただ、蛇スタイルだとさ、どうやればいいのか分からないから困っていたのだ。どこに穴があるんだという話しだ。

「ああ、もどせるんだ。じゃあ何の問題もないですね」

 俺がそういうと、姫様がクスクスと笑い出した。
 年頃の女の子らしく、なかなか笑いやまない。
 笑いすぎて目のふちに涙がこぼれているのな。

「ほら。爺もシンシアも心配しすぎだったんですよ。シノノメ様はお父様と同じにおいがしましたし、大丈夫だと言ったでしょ?」

 においって……。
 加齢臭じゃねーよな? まだ俺は大丈夫なはずだ。
 いや、それは置いといて。
 この二人が心配していた理由は他にあるんだと思うぞ?
 だってもしも姫様の秘密を知って婚約解消にでもなれば、俺に口止めしなくてはならないし。
 自分で言うのもなんだけど、俺は深層冒険者。腕が立つ。
 お金で片がつかなければ、あるいは俺が信用できないと判断すれば殺さなくてはいけないからな。そりゃ慎重にもなると思う。
 というか、そう思えば二人は二人なりに俺のことも気遣ってくれたといえるかもしれないな。

「シノノメ様の血は凄く美味しかったし、私達は良い夫婦になれそうですね」

 ちょっと身じろぎしながらそんなことを言う蛇姫様。舌はそのままなのか、チロッと赤い舌が唇を舐めた。
 ゴキゲンだな姫様。
 つーか、ちょっと今までと印象が違うな。おそらく猫被ってたんだなこの子。

「成人が本当に楽しみですわ」

 そう言った姫様の下半身が見る見るうちに収縮し、二本の足に戻っていく。
 ちょっと期待してたんだけど、なぜかスカート着用済みだ。

「そういえば……成人というのは何歳なんですかね?」
「いえ、貴族の女性の成人は年齢というわけではございません」

 なぜか少し恥ずかしそうなシンシアさん。

「年じゃない?」
「はい。あの、なんというか、その。……あの日が来れば成人とみなされます」

 あの日……。
 ……
 ……
 ……!
 なんと言う犯罪臭。
 姫様まだだったのか……。



 【名前】 レイミア
 【職業】 貴族
 【レベル】 5 

 【ステータス】
 HP 20/20
 MP 40/40
 筋力 10
 体力 10
 器用 20
 知力 20
 敏捷 15
 精神 20
 運勢 10

 【装備】
 右手 
 左手
 頭部 
 胴体 可愛いパジャマ
 脚部 
 装飾 ≪白蛇神の指輪≫ 
 装飾 


 【スキル】
<ラミア>・・・レベルアップ時にいくつかの能力に追加ボーナス
<美貌>・・・ラミアの専用スキル 異性に対して若干の魅了効果を有する 
<生命吸血>・・・ラミアの専用スキル 7日に1回程度の吸血を行なわないとHPが徐々に減少する
 料理・・・おいしい料理が出来るといいですね
 毒の爪・・・素手の攻撃時低確率で毒の状態異常付与 浮気?したければすれば?
 魔の素質・・・初歩的な魔法の習得が可能
 依存・・・いろんな意味で依存します
 不運・・・不運になる


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