唖然としました。お客さんががけ崩れなどで亡くなるのを防げるかもしれないと私などは思うのですが。百パーセント当たるなら別だが、可能性が高いというくらいでは動けないということなのでしょう」
村井氏自身も、まだこの技術が未完成なのは確かだとしている。
「けれども、もしものことがあったら、どうしようかと準備することはできると思うんですね。それによってずいぶん被害も違ってくるはずなんです」
地震の規模はM7以上
たしかに、予測がはずれて批判されることを恐れ、何かあってからデータを後出ししても意味はない。また、いま政府や地震学者が公表しているように「今後30年以内に70%の確率で巨大地震が起きる」と言われても、何をしていいのかわからず、途方に暮れるしかない。
国民が本当に求めているのは、村井氏らが目指しているような、「聞いて、危険を感じて、備えられる」使える予測なのだ。
ちなみに、村井氏らが予測する南海トラフでの地震の規模は、どの程度のものなのか。村井氏とともに研究を進めている工学者の荒木氏によれば、
「該当する地域の断層の長さから言って、M7以上でしょう。九州、四国から紀伊半島までは津波が高くなる危険性がありますね。沿岸部では、震度6強になる可能性もあります」
南海トラフでの地震が恐ろしいのは、一部分で大地震が起こると、隣り合う他のエリアでも大地震が連鎖的に発生し、全体として巨大な地震となる可能性もあるということだ。
実際、1854年の安政南海地震と安政東海地震は32時間のタイムラグを置いて起こった連動型の巨大地震とされている。場合によっては、九州から東京を含む関東までの各地が激しい揺れと津波に襲われ、高層ビルや巨大な橋などが崩壊するなど、とてつもない大災害に発展してしまう。
内閣府の中央防災会議も今年5月の最終報告書で、南海トラフで巨大地震が発生した場合、最大で死者32万3000人、被災者950万人、経済的損失は220・3兆円と試算している。また大阪府は10月30日に発表した独自の被害想定で死者を最大13万人としている。
刻一刻と迫る、次の巨大地震。占いのように「当たるかな、当たらないかな」と悠長に構えている場合ではない。「何かがおかしい」と伝えようとしている科学者たちの声に耳を傾ければ、心構えだけでもできるのではないだろうか。
「週刊現代」2013年11月23日号より
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