GPSによる研究は非常に大事だと思いますが、地震予測にただちに結びつくものではないと思う」
一方、こうした指摘に、村井氏は反論している。
「たしかに電子基準点のデータというのは季節や豪雨によっても変動しますが、一定以上の大きな変動は、地殻の動きと関係していると見ていいはずです。
それに、ここが地震の研究者と私たちの一番の違いだと思うのですが、我々は地震のメカニズムを追究しているわけではない。GPSのデータと地震との相関関係を分析するという、工学的アプローチなんです」
科学用語を翻訳すると、つまり、こういうことだ。理由はともかく、地震が発生するまでの、GPSで測った地面の動きのデータをたくさん集めてくると、「こう地面が動いたときに地震が来ている」という関連性がわかるはずだ。自然科学者である地震学者は「なぜそうなるのか」と考え始めるが、人間社会での応用を重視する工学者は、「とにかくそうなるのだから、どうにか手を打てないか」と考える。村井氏は言う。
「たしかに、システム上の限界もあります。たとえば地震の兆候をリアルタイムに監視したくても、国土地理院がリアルタイムに観測データを出してくれない。気象庁など一部の機関には情報提供しているようですが、私たちがお願いしに行っても、ダメの一点張りでした。データに間違いがないか確認してから一般公開するということなのでしょうが、観測から2週間経たないとデータを出してくれない。でも、それで人命を救える可能性が少しでもあるのだったら、ときには間違いがあっても、情報を出していったほうがいいんじゃないかと、私たちは訴えているんです」
予測技術の実社会での応用を重視する村井氏らは、精力的に政府や企業にこの技術をアピールしている。
「先月には内閣府の審議官から、ぜひ話を聞きたいという打診をいただいて、説明に行きました。
また、東日本高速道路(NEXCO東日本)の取締役に説明する機会もあったのですが、これは非常に残念な結果に終わりました。
その方は、『地震予測のデータなどもらっても、どうしようもありません』と驚くべきことをおっしゃる。『私たちは地震が起きたときにいかに交通を復旧するかが仕事であって、地震の予測などには興味がない』と言うんですね。自分たちが地震を止められるわけでもないし、そんなことは自分の仕事ではないと。
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