特集ワイド:お帰りなさい、神足裕司さん くも膜下出血で倒れて2年−−

毎日新聞 2013年11月18日 東京夕刊

 ◇復帰第1作は「一度、死んでみましたが」

 ◇リハビリの日々も「笑い」に 「小泉元首相の会見、行きたかった」

 コータリンこと神足裕司(こうたりゆうじ)さん(56)が帰ってくる。くも膜下出血で倒れて2年、まだしゃべれない。体も思うように動かない。でも筆を走らせる。もうすぐ復帰第1作が出るらしい。死地をさまよったちょうネクタイのコラムニスト、オムツのコラムニストになって何を書く?【鈴木琢磨】

 いつもちょっとハイテンションだった。行きつけの東京・神保町のバーで飲んでいると、陽気なハゲ頭がふらっと現れる。週刊誌のコラムをようやく書き上げた深夜だったり、コメンテーターをしている大阪のテレビ局からの直行だったり。常連には著名な作家もたくさんいたが、コータリンには華があった。「笑わせなければ、コラムじゃない」。飲んでは言っていた。

 そのバーもなくなり、止まり木を求めてさまよっていた頃である。2011年9月3日、神足さんがくも膜下出血で病院の集中治療室に搬送された、とくだんのバーのマダムから知らせがあった。広島での仕事を終え、羽田空港に着陸する直前だったらしい。頭蓋骨(ずがいこつ)を外しての手術は成功したものの、高次脳機能障害と左半身まひが残った。リハビリ病院などに転院したが、介護施設へ入るのを家族はきっぱり断り、昨秋から自宅で療養している。必ずよくなる−−と信じて。

 そもそもインタビューできるのかどうか。ためらいがちにインターホンを押した。夫人の明子さん(53)が居間に通してくれた。まったりした昼下がり、NHKの連続テレビ小説「ごちそうさん」が流れている。「見てるんだか、見てないんだか。『あまちゃん』はしっかり見てたみたいですけど」。車椅子のコータリンがまばたきする。だいぶやせた。こちらの話はしっかり聞こえているようだが、言葉は返ってこない。明子さんの以心伝心「通訳」が頼り。

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