マイナビニュース 11月19日(火)12時0分配信
●前田敦子が思春期に抱いていた父との距離感
女優・前田敦子が『苦役列車』(2012年)以来、山下敦弘監督とタッグを組んだ映画『もらとりあむタマ子』が11月23日から公開をスタートする。前田が演じる主人公のタマ子は、東京の大学を卒業後、父親がひとりで暮らす甲府の実家に戻り、就職もせず、家業のスポーツ用品店も手伝わず、ただひたすらに"食っちゃ寝"の毎日を送るずぼら女子。映画では、その日常をリアルに映し出しながら、彼女が新たな一歩を踏み出すまでの一年を四季の移り変わりを通じて描いている。念願の再タッグを終えた2人に話しを聞いた。
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――実際の家庭をのぞき見てるような気持ちになる映画でした。完成した映画をご覧になってどのように感じましたか?
前田敦子(以下前田):お父さんと娘はこんな感じかもしれないなと想像しながら、見ていました。そういってもらえるとうれしいです。
山下敦弘監督(以下山下監督):お父さんってあれぐらい優しいの?
前田:お父さんってやっぱり娘には優しいんですよ! でも、それが思春期だと「ウザい」ってなっちゃうんです(笑)。そういう瞬間は、誰でもあると思います。
――劇中では父からのプレゼントに対して、タマ子は拒絶してしまいますが、その気持ちは共感できますか?
前田:うーん、そういうことはなかったんですけど。でも、恥ずかしいっていう気持ちはあるんじゃないですかね。もう、余計なことしなくていいから! みたいな感じで(笑)。
――今回の映画は"食卓"をとおして、父と娘のやりとりを描いていますが、そのあたりにはこだわりはあったのでしょうか。
山下監督:食材で季節を表すという目的があったんですが、両親が離婚していて父がご飯を作っているということで父が母親的な役割を果たしています。そういったところで父のキャラクター作りにもプラスになったなと思うし、なんだかんだ言いながらタマ子はご飯を食べるんですよね。そこは素直だなと(笑)。
――食べる前にきちんと「いただきます」と言うところなんかは育ちの良さを感じました。
山下監督:一応、テレビも消して形だけはきちんとしているんですよね。そういうところからも2人の関係性が見えますよね。
――前田さんが食事のシーンで心がけたことはありますか? ロールキャベツもおいしくなさそうに食べているように感じました。
前田:意識しないで食べるようにしていました。監督からもそこに対してはあまり深く言われなかったので、私も深く考えないほうがいいなと思いながら食べていました。人に見られていることを意識した上での食べ方ではなかったですね(笑)。
――タイトルに「もらとりあむ」とありますが、お二人に「もらとりあむ」はありましたか?
山下監督:僕は18歳の時に映画を作り出して今に至るんですが、ゆるく続いている気がするんですよね。自分が社会人にいつからなったのか、なってないのか分からない(笑)。就職して、家族がいて、子どもがいて、家を建ててみたいな同級生を見ていると、社会人だなぁって実感します。
前田:これから先あるかもしれませんが、まだないのかなぁ…。でも、この業界に入ってすぐはどうしていいのか分からないというか、そんな時期もありました。
山下監督:AKB48を卒業した後とかは、そんな感じなかったの?
前田:うーん。その頃は、そう思っていたんですけど、1カ月半くらいの話なので(笑)。よく考えたら普通の日常というか。
山下監督:ちょっとしたお休みをいただいた感じ?
前田:はい(笑)。……続きを読む。
●山下監督、女優・前田敦子は「全部ひっくるめて」面白い
――タマ子の自宅の甲府スポーツが実際にある店だったり、写真店の親子がとても似ていたりとすごくリアルな描写が印象的でしたが、それはどのように実現されたのでしょうか。
山下監督:無理に作り上げていくというよりかは、実際にある場所をお借りして撮りたいというのはありました。キャラクターを設定した上で、スポーツ用品店で撮りたいというのを制作部の人に伝えたらすごくいいところを見つけてくれたんです。特に秋と冬は家からほとんど出ない話なので、あの中だけでどう撮ろうかと考えていました。
前田:本当に1つの場所で撮っていましたよね。
山下監督:休憩中もあの部屋で寝てるし(笑)。まぁ、時間がない中撮っていたのでそんな帰る暇がないといのもあったんですけど。みんなすぐ暖簾にあたまをぶつけて、じゃらじゃら音が鳴って撮影に支障が出たり(笑)。
――『苦役列車』以来のタッグと聞いた時の感想をお聞かせください。
山下監督:またやれるのはうれしかったし、今回は脚本が向井(康介)ですけど、彼にも「前田敦子面白いよ」って言いたかったというか(笑)。だから、ちょっと誘ったんですよね。『苦役列車』の時は原作がありましたし、康子というキャラクターはオリジナルではありましたが、やはりゲストという感じで。今回はタマ子が主人公なので、前よりも近づけるというかやりがいがあるというか、そういう部分はあったかもしれません。
――"女優・前田敦子"が面白い?
山下監督:もう、全部ひっくるめてですね。できあがった『苦役列車』を見て、すごいなと思ったこともあったし、それとは別に舞台あいさつとか、取材とかで会う時の"前田敦子"も面白かったというか。そういうのもひっくるめてタマ子ができあがった感じがしましたね。
前田:私は『苦役列車』の初日舞台あいさつの時に「タマ子」の企画について聞きました。こういう話があると言われたんですけど、私は絶対にかなわないと思っていたんです。だって、公開してすぐの話ですよ(笑)。もう会えなくなるなと思っていたら、言われてビックリ。その場ですごく喜んで、あれよあれよという間に撮影になりました。ぎりぎりまで全然信じてなかったです。ぎりぎりまで台本もなかったですし、本当にあるんですかって(笑)。これから長いスパンで監督と会えることがわかって、すごく幸せだなと思いました。
山下監督:この1年くらい、なんか会ってるんですよ。『苦役列車』も意外としぶとかったよね(笑)。アカデミー賞もあったし、ずるずる会うんですよ(笑)。この1年は何かを一緒にやってきたという感じはしますね。
――山下監督のどの部分に魅力を感じますか?
前田:私はいつも言ってるんですけど、邦画に憧れを抱いたのは監督の『天コケ』(天然コケッコー)がきっかけなんです。同世代の子たちがすごくキラキラしていて、とってもうらやましいって思いました。
山下監督:全然、『天コケ』じゃないのを撮ってるけどね(笑)。
前田:そうですね(笑)。初期の頃の作品は監督が見なくていいと言うので見てないんですけど、『リンダリンダリンダ』や『マイ・バック・ページ』を映画館に見に行っても、その憧れは消えませんでした。『天コケ』だけじゃなかったので、私が本当に好きな監督さんなんだって…はい。ただの幸せ者です(笑)。
――タマ子と似ている部分はありますか。また、友人でタマ子のような人がいたらどう思いますか。
前田:どうだろう。でも、気になっちゃうと思います。すごく優しくしたくなっちゃいます。実際に、タマ子のまわりにいる人たちってみんな優しいじゃないですか。その気持ちがすごく分かります。絶対に悪い子じゃないと思います。たぶん誰にでもあることだと思うんですよ。駄目な時期を描いているだけであって。私は長い期間ではありませんけど、1日とか2日とか駄目になる瞬間は誰にでもありますよね(笑)。
山下監督:タマ子って友だちがまずいないんですよね。そういう子はやっぱり注目しちゃうというか。ついつい気になってしまう。もちろん、気にならない人もいると思うんですけど、タマ子はクラスの端っことかにいると気になるタイプですよね。誰ともつるまないけどなんか気になるみたいな(笑)。……続きを読む。
●前田敦子「誰かに言わないと実現しない。それが一番の難関」
――監督には「誰も見たことのない前田敦子を撮る」という狙いがあったと思いますが、今回実現して、次はどのように撮りたいですか。
山下監督:そうですね、具体的なキャラクターはまだ浮かばないですけど、ただ『苦役列車』も今回も実はあっちゃんに対してあまり恋愛的な要素は入れてないんですよ。例えばあっちゃんが異性を好きになるような描写は入れてないので。次にやるとしたらそういうことをやりたいです。恋愛映画になるんですかね。そうだ! 恋愛映画も撮ったことないですからね。それはチャレンジですね。『天コケ』は唯一、初恋の話でしたけど、あれは人を好きになるまでの話なので。俺、ないっすわ! 恋愛映画(笑)。
前田:えー! すごーい(笑)。私も恋愛ものはないです。恥ずかしいです、そんなの(笑)。
山下監督:そういうキャラをイメージしない人ではあるなと思っていたんですよね。
前田:私も想像できないです(笑)。
山下監督:いつか、誰かがやると思うんですけどやってみたいですね。
――2回目のタッグを終えて、あらためて互いの印象をお聞かせください。
山下監督:僕が思うのは、役の説明が10あるとしたら、あっちゃんは1か2くらいを言って、10全て言わない方がいい女優さんだなと思いました。2くらいで伝えればあとの8くらいは勝手に埋めてくれる気がします。持っているものを出したほうが魅力的です。監督として楽しんでしまいます(笑)。
前田:私はすごく見透かされていると思います。何も考えてないとそれがバレバレというか。何も考えないでやってみようとか思ったりするんですけど、それは駄目なんだというのが監督と一緒にやってすごく感じました。前後で、妄想や空想をすごく話してもらえるので、私もちゃんとしなきゃって(笑)。ついていきやすいですし、細かいことも言われるので厳しい監督だと思います。
――タマ子が目指す新たな一歩が「タレント」という選択肢でした。あれは監督の意向なのでしょうか。
山下監督:脚本の向井と2人で考えていましたね。半年くらいふらふらして、たどりついたのがそこだったというのは、面白いねって話はしてたんですよ。タマ子は春ぐらいからちょっとずつ動き出すと思っていたので、でもまぁ、あれくらいなのかな(笑)。
――タマ子はその夢を周囲に隠そうとしますが、前田さんがデビューする前もそのような気持ちはありましたか。
前田:誰にも言わなかったですね。親に言うのも嫌だったので、なかなか挑戦しようと思う機会もなかったですね。たぶん誰でも恥ずかしいと思うんですよ。でも、誰かに言わないと実現しない。それが一番の難関だと思います。
――『苦役列車』と比べると長い撮影期間でした。本作をとおしてあらためて知った前田さんの魅力は?
山下監督:俺、人見知りなところあがあるんですよ。たぶん、あっちゃんもあると思うんですよ。でも、ちょっとずつ半年くらいかけて撮影をしていくとようやくしゃべれるようになったりとか、ご飯も行けるようになったりとか。ちょっとずつ近づいている感じがすごく居心地が良かったですね。半年間の撮影と言ってもそんなに日数は、そういう経験ができたのは初めてだったので、最後の方は現場に行くのが楽しみというか。明日タマ子だなと思うとすごく楽しみな自分がいました。そういう特殊な映画だったんだと思います。
前田:本当にしゃべるまで時間がかかって、タマ子を撮りはじめた時も全然だったので。2人でしゃべったこともあったんですけど…(笑)。
山下監督:今もそうなんですけど…取材を受けている監督という立場なのでしゃべれますけど、外出てその辺であったら挙動不審で逃げてしまうと思います(笑)。
前田:私もそうかもしれないです(笑)。
(C)2013『もらとりあむタマ子』製作委員会
(水崎泰臣)
最終更新:11月19日(火)12時0分
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