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リズワディア学園編
月夜、骸の行進 【6】
何故か唐突に死にたくなったが気にしない。百合ロールの言葉なんて聞こえてないもん。

思わぬ所からの伏兵に思わず現実逃避しようとしてしまったがここは堪えて真面目モードだ。

けどどーすっかな~。俺ジャンプは出来るけど空を飛ぶなんて事できないし……とりあえず戻すか(・・・)

「開け、虚空の扉『ディメンジョン・ゲート』」

近代イシュレール語でそう呟くと、右手に付けた黒のフィンガーレス(・・・・・・・)グローブに淡い光が(ライン)の様に走る。
すると、一瞬の発光の後右手に連結した宝剣、蛇連双剣『真紅の刃(カルブンクルス)』が現れる。

そう、先ほどマナ達を追っていたドラゴンゾンビをやったのはこいつだ。
柄頭を合わせ両剣となったそれを槍代わりに投げたわけだ。

そして投げたそれを回収するために、周囲の魔力を吸い上げ発動する魔法陣をグローブに編みこんでおいたのだ。

さて、とりあえず斬る(・・)か。

俺を敵と認識し、襲い掛かってくる数体のドラゴンゾンビ。建物の屋根から飛び降りながらその内一体を叩き切り、それ(・・)を足場に、俺は飛び上がる。

「……っと」

ロケットのような速度で空を跳びながらすれ違いざまに真紅の刃(カルブンクルス)でドラゴンゾンビ達を両断して行く。首を胴体を叩き切り、空に肉片をばら撒く。

二十数体を斬った所で、浮遊感の後に重力に引かれる。跳ねて数秒で落下し始めたのだ。

「この調子だといつまで掛かることやら。……なら!」

周囲に散り、俺と一緒くらいの速度で落下し始めているドラゴンゾンビの翼を蹴り、俺は上ではなく、()に跳ぶ。

そして連結していた剣を双剣(・・)にして、襲来するドラゴンゾンビの背中(・・)に飛び乗った(・・・)

そしてドラゴンゾンビの背中の上で、俺は蒼と碧の夫婦剣を同時に振った。
軽く振った筈の水晶剣は風を斬り、加速(・・)する。加速した切先が作り出すは衝撃波。

風を斬った衝撃は、疾風(しっぷう)()となる!

双剣の切先から放たれた衝撃波、と言うよりも斬撃波(ざんげきは)と言った方が分かり易いかな? カッコイイし。

その斬撃波は足元のドラゴンゾンビを始め、俺に狙いを定めて襲い掛かって来ていたドラゴンゾンビ達を両断し尽くした。



「先ずは、約二十頭(・・・・)



それからは、あっ、と言う間だった。腐竜(ドラゴンゾンビ)を切り伏せてはその骸を踏み台にして風のように空を飛翔し、煌く双刃を振るうその姿は正に、死を与える風(ストームブリンガー)に相応しかった。

それはまるで意志を持つ暴風のようであった。

空を翔け抜け、双刃が振り抜かれる。
剣閃が腐竜を捉え、交錯した敵は一瞬にしてバラバラに引き裂かれた。
風に引き寄せるかのように腐竜は黒衣の戦士に群がる。 
ただ剣で切る、と言う単純な暴力だけで腐竜の死肉が空を舞う。
圧倒的なまでのその戦いは、わずか数分で片が付いた。


黒き執行者、死を与える風の、勝利である。

「……あれが、六刃将の一柱を退けたと言う黒き執行者の、戦い……!」

切り裂かれ、灰と化し消えて行く腐竜の躯を眼下に、ヘンリエッタは戦慄を覚えていた。
魔法すら使わずに、死霊と化したとは言え本来人を狩る存在である竜を圧倒した存在に、ヘンリエッタは怖れにも似た感情を覚えていた。

……黒き執行者、彼が敵ではないと知っている。
だが、その力が化け物と呼べる物だと言う事をヘンリエッタは思い知った。
人類の敵、その災厄の種族の頂点を駆逐する存在。
それは正に、化け物なのだと。

「どうやら終わったみたいね」

「! アリシア、さん?」

声に気づきヘンリエッタが振り返ると、銀色のクルケルに跨がった銀髪の美しき少女、アリシアがそこにはいた。

「みんな無事?」

「は、はひっ! ~っ!!?」

「今マナが舌を噛んだけど、概ね無事」

淡い桃色を基調としたドレスを身に纏ったアリシアが問うと、マナはアリシアの側に箒を降下させ、ヘンリエッタとエリの二人は箒から降りた。

「あっ、アリシアさんの方こそご無事で!? (わたくし)、心配してましたの!」

「あ、あはは……。うん、私は無事よ」

ヘンリエッタの鼻息荒い鬼気迫る様子に軽く引きながらアリシアは答え、その視線を高い建物かろ辺りを見回している黒衣の外套を身に纏った黒き執行者に向ける。

「……わ、私達っ、あの方に助けられたんです」

「でしょうね」

「……え?」

マナが状況を説明するが、それを承知とアリシアは視線を逸らさない。

「………、」

「?」

その視線を受けていた戦士が、何かに気付いたように視線を後ろに向け、

「あっちはどうだった?」

などと言い彼女らの直ぐ隣に降り立った。

「問題無さそうだ。この様子なら夜明けには復興作業に戻れそうだ」

「ふぇっ!?」

突然現れた大柄なエルフの男にマナが驚く。
エルフの男はマナの背後に立っていたからだ。

「! ……気づかなかった」

「まぁ嬢ちゃん達にバレる程やわじゃねぇからな」

咄嗟にエリがマナとエルフの男の前に立つ。

「彼はギレー。エルフの里と呼ばれる『ウェールス』出身のライトエルフよ。今はこの街で宿屋を営んでいるの」

「これでも元斥侯職でね。気配を消すのは得意なのさ」

アリシアの紹介に、大柄なエルフの男、ギレーは腕を組みニヤリと笑った。



おっさんの体格に合わない元職業(クラス)に絶句する三人を他所に、俺は少し高めの建物から辺りを見回していた。


何故見回しているのかと言えばウムブラの動きが不可解で、どうにも嫌な感じがするからだ。
三年前、俺達いわゆる勇者ご一行は旅の途中にとある街に訪れた。歓迎ムードなせいか安心しきっていたら実はそこは奴が支配する死者の街だったのだ。

今回の一件と前回の件は、罠に誘い込まれた所以外は合致する。
竜牙兵の存在と、ゾンビ系モンスターによる大規模な進行。……この二点は合致するのだ。

そして、前回は最後に死霊騎士と呼ばれるモンスターを投入してきたらしい。
死霊騎士とは、数百年前に生きていた騎士で、生前は何度も祖国を戦争で勝利に導いた英雄なのだと言う。
その力量はあのレオンハルトやシルヴィアを押さえ込み、知略では一緒に旅をしていた不良僧侶を凌いだと言う化け物……だったらしい。


………さっきから何故、らしいとかあやふやな言い方をしているのかと言うと、……まぁ俺は戦ってなかったからなのだ。
歓迎パーティーでご飯を食いすぎて、その後ベッドですやすやタイムだったからな!
今からもう四ヶ月くらいになるかな? 前にも言ったが俺はどんなところでもぐっすり寝られる自信があった(ギルドの簡易借家にその幻想をぶち殺されたわけだが)。

どんなところでも快眠できる。つまり、どんな環境でもぐっすり寝られるわけだ。
それが戦場の中とは言え、俺は寝続けていられる自信がある(流石に殺されちゃうと話は別だ)

事が終わった後で起きて、シルヴィアにボコされたのは良い思い出だ。


さて話を戻すが、前回と今回の一連の流れは妙に符合する。

ウムブラの得意戦略が死霊系モンスターによる物量戦なのは言わずもがなだろう。所詮外道に走った魔導師扱いだしな。
あ、ちなみに魔術師とか魔法使いとか魔導師とかいろいろ言って来たわけだが、この呼び名には大した違いはない。
魔術が一般的な、時間をかければ再現できる奇跡とか、そんな枠組みはない。

魔法使いを英語にするとマジシャンなのに手品師と読んだりするような感じだ。

んで、今のところ一致しているわけで、ウムブラの奴が次に何をしてくるのか警戒しているのだ。
一度あることは二度あって、二度あることは三度あるのだ。

同じ手は喰わねぇ! とか二回目で言ってる奴が居るように、何度も同じ手で来る奴は意外といるものだ。

ちなみに俺はって?

なんど喰らっても効かねぇ! かな? 一応不死身なわけだし。

なんて思っていたら、耳につけた通信石に声が響いた。

(勇っ!)

アリシアの声だ。

その焦った声に、俺は咄嗟に全神経を研ぎ澄まし、

「チョイヤー!!」

「……は?」


そこで全神経が弛緩した。そりゃもう全力で弛んだ。空気が抜けてベコッ、となったボールみたいに。
先程までシリアス全開だったこの戦場に、若干アホっぽいかけ声が響きわたったのだ。

この声にこのテンション、明らかにベルナデットだろ。
ったく、一体何ご……

「へっどっ!?」

振り返ろうとして、後頭部に衝撃が走ったと思った次の瞬間には、俺は空を飛んでいました。
……うん。後ろからやられて見れてないけど、大体何がどうやって俺を吹き飛ばしたのかは理解した。

「ぐっ……この、不良シスターがっ」

建物から真っ逆様に墜落し、受け身も取れず俺は頭を強打した。

「!」

そして、やけに久しぶりに作動した嫌な予感に従って前転してみると、俺の落下地点が()ぜた。



「私の名はベルナデット。『代行者』の任の為、私は貴方を討伐します!」

建物の上から俺を見下ろし、双銃を俺に向け構えるベルナデット。 
その目は、初めて会った時に見せた、真剣な目だった。

……おいおい、討伐とは穏やかじゃねぇな。つかやけに俺に付いて来ようとしてたから、公爵級の魔族が攻めて来から、マナ達を生贄、もとい、守ってもらおうと適当に言ったはずだったが……なんだっけ? マナの近くにはエリやヘンリエッタもいると思ったから一番分かりやすいマナの特徴を教えて出任せ言ったんだったっけ? 確か魔族に狙われるとかなんとか言った覚えが。

「だんまり、ですか。構いませんよ。私は貴方達魔族を討伐するだけですので」  

言うが早いか、魔力弾を躊躇なくぶっぱなして来るベルナデット。

……え、魔族? って危ねぇ!

咄嗟に剣で防いだものの、ベルナデットは躊躇なく連続で放って来た。

「待って! 彼は……!」

アリシアの制止の声が響くが、ベルナデットは双銃を手の中で回転させながら落下して来た。

「第八の公爵級……覚悟!!」

第八の公爵級って、………あの噂話かよ!!

どうやらこの不良シスターの中では、

今回の黒幕=俺、になっているらしい。

……い、急いでいるからって適当なことを言うんじゃなかった!

スマフォを買い替えPCでの投稿を頑張ろうとしたものの、やっぱスマフォで投稿の方がやり易いと気づいて結局スマフォで書いたのを軽く(等比社)推敲し直してからPCで投稿すると言うスタンスにしようと決意した今日この頃。と言うか昨夜決意しました。

お待たせしました。前回の12日に迫る十日目での更新になります。

いやー最初期、と言うか一章と比べると凄すぎですね、更新速度が。
一日一話とかよくできてたなと思います。

そんな昔を振り返りながら伏線回収しつつな最新話を投稿となります。(第八のとかいろいろ伏線だったのです)

そう言えば無双回、と言ってましたが無双回は今回はもう終わりです。

え? 速い? 無双すぎて瞬殺、いえ分殺だったので仕方ないです。



ではまた。

感想お待ちしています!


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