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リズワディア学園編
月夜、骸の行進【2】
「『竜牙兵ドラゴントゥースウォーリアー』、ですか?」

「ええ。竜牙兵、名の通り竜の牙から作られた人形。……スカルウォーリアーに見えるように巧妙に作られてますが、その実態は強力な不死の軍団。アンデットにも属さないので朝日を待っても無駄でしょう」

リズワディア魔法学院の教師、レイゼリード・ドートランジェは倒され破片となった竜牙兵の欠片をつまみ上げて、他の教師達に説明する。

ドートランジェの話を聞いた男性教師は口をつぐみ、顔を真っ青にする。

「そ、そんな相手に………」

「勝機はあります。それをリーゼリオンの姫君が教えてくれました」

怯える教師達に、そこらのゾンビよりもホラーな顔のドートランジェが、手に持った杖を振るいながら答える。

「リーゼリオンの姫君……あの『神童』の、ですか?」

「ええ。彼女曰く竜牙兵は物理的な力には強いですが、我々が使う魔術。取り分け結界系の魔術には弱く、学院の結界を復活させることで弱体化、そして再生能力を無くす事が可能なのです。勇者一行もその方法で窮地を脱したそうです」

ドートランジェ率いる十数人の教師達は骸兵(スカルウォーリアー)に扮した竜牙兵を倒しながら目的地へ進む。

「結界を直せば、それで終わりです」

ドートランジェの言葉に意気消沈していた教師達に笑みが戻る。

(とは言え術者の姿が見えない………。それに、この学院結界を破るなど、公爵級とは言え不可能な筈。……一体どうやって………)

迫り来る竜牙兵を制圧しながら、ドートランジェ率いる教師達は結界を修復するために結界の起点となる場所に急ぐ。




「前に出すぎるな! 十分に距離を取り殲滅せよ!」

大通り。もっとも多く竜牙兵が押し寄せているここには、学院の半数以上の教師と、四科生から六科生までの上級生とが築いた防衛線が敷かれていた。

倒しても倒しても一定の間隔で立ち上がる竜牙兵達を相手に、学院の教師や生徒達は一歩も退かず、後方にある学院を守り切っていた。

「しかし、それもどこまで続くか、じゃな」

リズワディア魔法学院長、ルーガローンは均衡を保っている戦場を眺めながら呟いた。

いくら学院が誇る優秀な魔術師達を集めても、所詮は人。限界がある。

(そして竜牙兵をなんとかできたしても、それを操る術者はどうだ? ……第七の公爵級。それがこの程度で終わるとは思えん)

ルーガローンは自慢の髭を撫でながら思考を続ける。

(……と考えた所でこれ以上は良くわからんのぉ。相手の目的もわからんことだし)

ルーガローンはそう結論付けて、

立ち上がった。


「大通り方面の一般人の避難は終えた。ワシが出るぞい」

かつて世界の半分を手中に納めた覇王が立ち上がる。

「はっ。第一班から十七班は下がり道を開けろ! 学院長が出陣する!!」

ルーガローンの言葉を受け取った教師はあらん限りの声で叫ぶ。

「ホホッ。では、行くかのぉ……我が兵達よ」

そう行って手を空に掲げたルーガローンの背後に、数十、数百の魔法陣が現れる。

「――我が願いに応えよディマ・ヨルゲ・トゥール大地の精霊達ストーレン・エレメンティア

そこから現れるのは幾百幾千の、鋼の鎧を纏った兵。

軍勢(・・)ならばワシの得手分野じゃ」

鋼の鎧の兵達が、剣を、槍を、鉄槌を手に突撃する。

雄叫びなど聞こえず、ただただ鋼と鋼が擦れる音が、ガチャガチャと響く。

「さあ、どちらの錬金術が優れているか、勝負じゃい、死霊使い(ネクロマンサー)

大きく開いた防衛線。そこを、鋼の軍団が駆け抜け、骸の軍勢と激突する。

「蹂躙せよ、我が鋼人(ゴーレム)達よ!!」

戦線の均衡が、大きく傾いた。



「よかった、ヘンリエッタ様も避難できていたのですね!」

「貴女方も、よく無事で」

避難用に解放された闘技場の中で、マナとエリはヘンリエッタと再会していた。

「まさか訓練を終えた後でこんな事が起こるなんて………思ってもいませんでしたわ」

ため息をつくヘンリエッタにマナとエリも頷き、苦笑で返す。

「姫騎士の事だから外で戦っているかと思ってた」

(わたくし)は戦おうとしましたわ! なのにアリシアさんだけ駆り出され、私は不本意な待機を命じられましたの! くぅっ! アリシアさんに良い所をお見せするチャンスだと言うのに!」

エリの言葉にヘンリエッタは瞳に炎をたぎらせながら恨めしそうに語る。

「私の活躍をご覧になれば、必ずやアリシアさんのお心は私に傾くと言うのに……っ!」

「ヘンリエッタ様、最近そう言うのオープンになって来ましたよね」

「ヤシロ先生って言うライバル登場に焦ってる証し」

「焦ってなどいませんわ! ……所で、件のヤシロ先生のお姿は見ておいでで?」

「ううん。私とマナは見てない」

「はい。……来て、ないのですか?」

マナは辺りを見回して、遠目からでもわかるような濃いキャラクターの勇を探すも、見当たらない。

「闘技場の方には、居ない?」

「あと開放されているのは時計塔に各演習場。その何処かにはいるでしょうが………この闘技場では確認しておりませんわ」

「そう……ですか。でもヤシロ先生なら全くの無事だと思いますよ?」

「何故ですの?」

「負けてしまう姿が想像できないんです」

マナの言葉に同じように思っていたヘンリエッタもクスリと笑う。

「所でマナさん。貴女のお力をお借りしたいのですが、よろしくて?」

「ふぇ?」

突然の話題の切り替えに驚くマナだが、ヘンリエッタはそんな事をお構い無しに続ける。

「私、『姫騎士』の二つ名は気に入って居ますの。……そして私はその名を嘘にしたくない。
ですので、私を戦場へ連れていってくれませんこと?」

マナが大事そうに抱えている空飛ぶ箒を見ながら、そうヘンリエッタはお願いを装った命令をした。





「ふむ、随分と抵抗を受けている。現代の魔術師も中々侮れませんねぇ」

今や戦場と化しているリズワディアの街並みを見下ろしながら、そのボロボロのローブに身を包んだ何かは愉快そうに呟いた。

「まあ竜牙兵は所詮捨て駒。さて、そろそろ次の手を打つ事にしましょう」

ローブを纏ったソレは、フードに隠された口を大きくつり上げながら赤い月を見上げた。

「さぁ、生者を喰らい、己が糧とするのです!」

両手を大きく広げたソレの背後から、数十、数百を越える()の大軍が空からリズワディアに押し寄せる。

「見せて貰いましょうか。……人の、神秘を!!」

お待たせしました。

ネクロマンサーとか中二で良いですよね!


勇はいつ現れるのか………



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