青い空、白い雲。
絶好の散歩日和だ。レインブルクに再召喚され、約一月半経ったが、ここまで良い天気なのは久しぶりだなー。
「「「わあああああぁっ!! 」」」
そうだ。リズワディアには、来てからまだ五日しか経ってないんだった。
ベルナデットではないが観光なんてのも良いだろうな。
学生向けに、安くて美味しい料理が発達したリズワディアでは、屋台の出すメニューは多彩だ。
観光しながら食べ歩きってのは最高だろうなー。
「ヘンリエッタ様ぁー!」
「きゃあああぁっ!!」
「今日もお美しいですわぁっ!」
ベルナデットも誘おうか。アイツが居ると出費が凄まじいが、まあ今日は多目に見よう。
こんだけ天気が良いんだ、楽しまなきゃ損だ。
「レディース&ジェントルメン!! お待たせしました! 本日のメインイベント、二科生『姫騎士』ヘンリエッタ・デ・クレストリアと、臨時講師ユーヤ・シロウの魔法戦がもう間も無く始まります! 売店をご利用中のお客様方、急いで観戦の準備を!」
ああ、俺も売店行かなきゃ………。
『いつまで現実逃避してるの、バカ勇』
「っと……まだコレ慣れないな」
突然頭の中に響いたアリシアの声。変な感覚を覚え、左耳の碧色の宝石に、銀の縁のピアスに触れる。
「現実逃避もしたくもなるわい。……そもそもなんでこんな衆人環視の中で戦わにゃならんのだ」
周りを見ると、イタリアのコロッセオ(イタリアだったっけか?)見たいな観客席は、灰色のローブ一色となっていた。
座席完売満員御礼。……どうしてこうなった!
俺が今居るのは、観客席から見下ろされる形で囲まれた円状の闘技場だ。
爆音もかくやと言う歓声が、アナウンスの少年の言葉に呼応して闘技場を覆い尽くしている。正直やかましい。
『それだけクレストリアの姫騎士様が有名だからでしょ。彼女、あんな子だけど人気に関してはとても高いもの』
相も変わらず頭に響くアリシアの声。気付いているだろうが、左耳のピアスがその原因だ。
「やけにキツい言い方だな。そんなにシルヴィアの二つ名が使われるのが嫌か?」
爆音もかくや、と言うよりもはや爆音の歓声の中に掻き消されず俺に届く言葉は、やけに刺があった。
『ちっ、違うわよ! バカ勇!!』
「照れるな照れるな。お前らお姉ちゃんっ子だったもんな~」
『違うもん! 勇のバカ!』
ブツ、と言う音と共に途絶えたアリシアの言葉。
あ、あいつ、魔力切りやがったな!?
耳のピアスに使われてる碧色の宝石は、実は通信石と呼ばれる物で、魔力を通す事で対となる通信石と、念話に近い会話を行う事が可能なのだ。
もっとも一定距離内なのと、魔力を通さないと使えないと言う制約があるがな。
魔力を持たない俺は通信石を起動しバカと言い返す事もできずに、強化された目で観客席に居るであろうアリシアを探す。
「私相手に随分と余裕ですわね」
歓声の中にありながら、やけにくっきりと、その凛とした声が耳に届く。
「ほへ?」
突然声をかけられ、驚いて声が裏返る。
「所詮生徒などと思っているならば、……その考えを改めるのが宜しいかと」
金色の髪にアメジストを思わせる紫色の瞳。お嬢様系の髪型で有名な縦ロールだ、縦ロール。
にしても12にしては身長が高いな。
アリシアらと同じ学年ながら拳一つ分くらいの身長の差がある。
例に漏れず灰色のローブを纏ってる。
「聞いていまして!?」
「え? あ、ごめんごめん。聞いてたよ」
「っ! ……良いでしょう、貴方の身体に直接教え込むと致しましょう」
そう言ってローブの中から細剣を抜くヘンリエッタ。
レイピアか……それに持ち手の所に幾つかの宝石がある。……魔石か。
厄介だな。こりゃ本当にシルヴィア寄りの魔法使い、『魔法騎士』タイプの人間だ。
「はぁ……なんでこんな事に」
その問いは、歓声の中に消えた。
◇
一昨日の事だ。
自己紹介をして次の日、早速行われる俺の授業のために、少し早めに子猫亭から出て学院に向かっている時だった。
朝早く(俺にしては)からだと言うのに街には活気が溢れ、ローブを着た学生らしき少年少女達が学院に向け歩いている。
異世界でも登下校は同じようなもんだな~、なんて考えてた時だった。
「ユ~ウ!」
「のわっ!?」
背後からの腰に来る衝撃。すぐにわかった。アリシアの突撃だ。
「いつつ、……アリシア、お前自分がどういう立場か判ってる?」
振り替えると、銀の髪を左側面で纏めた髪型、いわゆるサイドテールにしたアリシアの姿が。
久しぶりに見たアリシアのサイドテールを若干嬉しく思いながらも口調は強めに。
「認識阻害とサイレントを並列発動してるから気づく人なんてそうそう居ないわよ~」
言いながら全力で抱きついてくるアリシア。
それで気づいたが、辺りの喧騒が消えていて、人が俺たちをまるで電柱か何かのように、避ける物として避けて行く。
じゃれつき方が三年前と変わってない。
ちなみに何気なく言われた並列発動と言う単語。複数の魔法を同時に発動させる意味なのだが、これがまた難しい。 できない訳ではない。訓練次第では誰でもできるらしいのだが、本来魔法とは複数同時に使うことを想定されておらず、同時に使用する魔法が増えれば増えるほど難しくなる。リーゼリオンの化け物宮廷魔導師達でも、四つが限界らしい。
例え二つとは言え、それを難なくやってしまうアリシア。
「たく、このお姫様は……」
齢12にして、婆ちゃんを越える魔術センスを持つ天才だ。
「あ、そうそう。勇にプレゼントだよ!」
ローブの中から、小箱を取り出したアリシア。いわゆるジュエリーボックス、っていうのか?
その小箱が開くと、そこには緑色の宝石のピアスが二つ。
「へぇー……綺麗だな」
「ふふん! 私が付けてあげるわ。ほら、しゃがんで!」
「いや、俺ピアス付けない派だし」
「男らしくて女の子にモテモテになれる」
確かにリア充達は大体空けてんな。
「ほい来あ痛ぁ!?」
耳を突き出したら問答無用で針で貫かれた。
「痛い、ピアスって痛いのね」
「もー、男の子なんだから泣いちゃダメじゃない。……まあそんな勇も可愛くて好きだけどね」
子供の癖に妖艶な感じを出すな!
「まあサンキュ、ありがとな。ほれ、そろそろ行くぞ?」
ピアスがある感覚が妙にくすぐったくて、ピアスに軽く触れながら礼を言う。
「ふふん。どーいたしまして」
ニコリと笑ったアリシアは、次の瞬間には姿勢を正し、子供に似つかわしくない表情に変わる。
「おはようございます社先生。今日が先生の初授業、……私、楽しみにしていますわ」
消えていた喧騒が甦るように聞こえてくる。
認識阻害とサイレントを解除したようだ。
「あ、ああ」
アリシア曰く姉妹の中では一番上手いと言われる猫かぶり。
本性を知らない男がやられればコロリだろう。
何故いきなり魔法を解いたかは知らないが、それを深く追求するのも変だと思い、納得する事にした。
多分ここから先は生徒と教師と言う関係になろうと言うことだろう。
しかし今思ったが俺がアリシアに教える事になるのか? だとしたら全く無意味じゃないか?
魔術に関して俺が知ってる事は、その全てアリシアを知っていて、アリシアが知ってることの全部を俺は知らない………と言う感じだ。俺の発想が褒められる事もあるが、あんなのは中二病が崩れた程度のもんだしな。
まあ教えるのはアリシアだけじゃない。俺程度で教えられるかは不安ではあるが、精一杯がんばっ―――
「あら? ……クレストリア様。おはようございます。今日も一緒に頑張りましょうね」
「お?」
アリシアが俺の後ろへ視線を向けていたので振り替えると、そこには顔を真っ赤にしてこちらを指差す金髪ロール娘。
「はっ…は、破廉恥ですわぁ!!」
どうやらアリシアの魔法は、彼女に効かなかったようだ。
…………なんで破廉恥かは、わからないが。
新キャラ登場! テンプレートなお嬢さまの一つ高飛車系でございます。
感想待ってます!
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