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リズワディア学園編
先代勇者の起床と悪夢
朝、起きる際のまどろみと言うのは何にも代えがたい至福の時だ。
皆さんも味わった事があるだろう。
それを今、俺は存分に味わっていた。

元の世界、日本でのように毎日朝六時に起きて自分の弁当を作る必要もなく、学校で暇な時間を持て余す事もない。
こちらの世界で職についているわけでもない。何せ俺は自由気ままな冒険者。仕事に追われる訳でもない。
金に困ったらギルドで仕事をすれば良いだけで、そして俺は特にお金に困ってない。
あ、いや困ってた。持ち金が多すぎるのだ。

婆ちゃんから渡されたカードの中の金額然り、昨日のワイルドボアって言う魔物の素材が高く売れてしまったのも然り。
他人から見れば羨ましいのだろう。もちろん俺も羨ましいと思うだろう……第三者視点なら。何せ小心者な俺は、目につく人皆が俺の金を狙ってるんじゃないかと思ってたくらいだ。



まあ何が言いたいかと言うと、……こうやって何にせっつかれるわけもなく、だら~ってゆっくり出来るのが幸せなのだ。

ビバ・自堕落!

「うぐっ!?……っ~!」

しかし、眠気は残ったが、俺のまどろみタイムは痛みと共に終わりを告げる。
突然頭に走った激痛に起き上がったのだ。

「ぅ~、頭がガンガンする……あ~、なんだこれ、風邪か?…………いや、そう言えば昨日おっさんに酒飲まされたんたっけ。……ちくしょう、未成年に酒飲ませやがって………」

昨日、三年振りに再会したおっさんに馳走されたのだが、こともあろうにおっさんは俺に酒を飲ませやがったのだ。

マリーダさんのお酌を断れる筈がないじゃないか!


俺がお酌をしてくれたマリーダさんの事を思い浮かべながらにやついていると、隣で(・・)寝ていた、上半身裸のおっさんが起き上がった。


「よう、おはようさん」



「………」

窓から溢れた眩い朝日が俺とおっさんを優しく包む。




「うああああああああああぁぁぁっっ!?」



俺はベッドから転げ落ち、逃げるように這って部屋の隅まで駆けた。いや、もう逃げたんですけどね。


って、何で!?何で俺とおっさんが朝チュンしてんの!?
あってはならない想像が俺の脳裏に走る。
ふざけんなぁっ!俺×おっさんとか誰得だよ!


「お前が俺たちのベッドで先に寝ちまったからな、仕方なく挟む位置で俺たちが寝たんだ。全く、朝からうるさい奴だぜ」

布団を退かし立ち上がったおっさんが身体を伸ばしながら言う。

「ほ、ほんと?何もしてない?」

「何をしろって言うんだ? ま、ユウの叫び声で眠気も覚めた。サンキュな」

そう言いながら笑うおっさん。………ど、どうやら俺の処女は失われてないようだ………ふぅ、死ぬかと思ったぜ。

「って、まって。待っておっさん」

「あん?どうかしたか? ああ、飯ならもうできてると思うぞ?」

「それも、それも大事。……でもその前に聞きたい事が一つあるの。……俺たちって言った?……つまり、俺の隣には、マリーダさんも居たの?」

おっさんが言うのは俺を真ん中に川の字に寝たらしく…隣におっさんが居たのはショッキングではあったが、もう片方側にはマリーダさんが居たと言うことで………

「ああ。なんか、親子みたいだとか言って喜んで―――」

「マリーダさあああぁぁんっ!!」

部屋のドアを蹴破って、俺は朝御飯を作ってくれてるだろうマリーダさんの元へ駆けて行く。

「あら? おはようユウ君。よく眠れたかしら?」

嗚呼、エプロン姿の貴女も美しい……!!

「もう一度添い寝してください!!」

「あらあら、ユウ君は甘えん坊さんなのね」

うふふ、と笑いながらマリーダさんに頭を撫でられた。
も、もうなにも怖くない…っ!

「おっさん!俺と、マリーダさんを賭けて勝負だ!」

「バカ言ってねぇでさっさと食うぞ?折角マリーダが作ってくれた飯が冷めちまう」

「だな!」

四人掛けのテーブル一面に広げられた食事に、早速俺は手を伸ばす。

「やんっ。……ふふ、ユウ君はえっちねぇ」

「テメェ!マリーダの胸から手を離せ!」

「うるせぇ!この柔らかさを、俺は手放せない!この暖かさを、失いたくない!」


そこから始まる俺とおっさんの醜い戦いが始まる。
パンを食らい、ハムを相手の口に突っ込み、口に注がれたスープに喉を焼かれたりしたが、久しぶりに楽しい朝御飯だった。





朝食を終えた俺は、おっさん達の手伝いをする事に。
と言っても、子猫亭は宿屋としては客は少ないため専ら食堂として機能しているらしい。ので、昼の仕込み等の手伝いに勤しんだ。

「ユウ、どこまでやれた?」

「んー、これでラスト。……よぉし、全部剥いたぜ?」

店の裏庭に続くドアを開けて現れたおっさん。
それとほぼ同時に、俺は手に持った芋から、最後の皮を剥いた所だった。
借りた短刀が使い辛かったが、まあ中々の出来だ。

「うぉっ、樽三つ分の芋が!……ユウ、ここで働かないか?芋剥きの天才だぞお前は!」

「嬉しくない、全く嬉しくない誉められ方だ」

俺の胸ら辺の高さのある樽一杯にあったジャガイモは、その白い肌を衆目に晒していた。

「で、次は?」

「いや、特にねぇな。と言うかこれで十分過ぎる。昼飯まで好きに過ごしてな」

「そっか。じゃあちょっとギルド行ってくる」

樽を店の中に入れるのを手伝った俺は短刀を返して、借りてる部屋に向かい、装備を整える。

「うし」

ベルトでレザーの軽装を確り固定して完成。

腰には安い片手剣。

うん、どう見ても普通の冒険者ルックだ。やっぱり普通が一番だよ、本当。
全身真っ白の装備とか全身真っ黒の装備とか、派手な装備ばかり着てきたせいか余計に普通が一番だと思ってしまう。

「んじゃ、行ってくるわ」

「おう。昼には一度顔見せろよ?」

「おう」

そう言って、俺は子猫亭を後にする。



っと、そうだそうだ。



「ズィルバ~?起きてっか?」

広い馬小屋を貸し切り状態で使ってるだろうズィルバを見に行くと、そこには人間のように横たわっていびきをかいてるデカい鳥。


「……鳥ってもうちょっと上品な寝方をすると思ってた時期が、俺にもありました」

グケーと下品ないびきをかくズィルバを見てられず、蹴り起こした。


「グケェッ!?」

「珍鳥の異名はこの寝方にあると、俺は思う。……ズィルバ、ギルドに行くがお前も来るか? 」

「クケ……………クケー!」

「随分長い葛藤だったな。ま、良いか。軽く観光と洒落込もうぜ」

馬小屋からズィルバを出し、首輪を巻く。

そして俺の腕にも、皮の腕輪を巻く。これは馬やクルケルその他ペットなどが失踪した際にその位置を知らせる特殊な魔道具だ。

手順を守らず無理矢理外すと警報が鳴り響くため、動物の窃盗なども防げる優れものだ。

「はいよーズィルバー!」

「クケー!」

ズィルバに乗ると、ズィルバはてくてくとゆっくり歩き出す。

人を乗せて歩き慣れたらしいズィルバは、揺れも少なく乗り心地は更に良いものとなっていた。




リズワディアギルド。各国に置かれているギルドだが、ここリズワディアのギルドの規模はルクセリアと比べとても小さい。
何故かと言うと、仕事が少ないからだ。
殆どのクエストは、学生が小遣い稼ぎに受けてしまうため
近くに魔物の住み着く迷いの森があるものの、学園の生徒らの活躍により大きな被害は出ない。
むしろ、この街に優秀な傭兵がいるならば他国のギルドに推薦するくらいらしいのだ。

故に最低限の大きさしかないギルドは、昨日から蜂の巣を引っくり返したような大騒ぎになっていた。


「まだマスターは戻らないのか!?」

「学園の方に言ったきりっ…!」

「逃げやがったな!?…連れ戻せ!」

「もう行かせましたが、返り討ちに合いました!」

「くそぉっ、こんな時に!!」

クエストの斡旋より、殆ど役所として機能しているギルドでは、職員の殆どが学園関係者だ。
リズワディアのギルドマスターも学園に大きく関係する人物だ。



「二週間もせず、勇者が来訪するって言うのに!」


職員の手には、ルクセリア王家から届いた一枚の書状があった。


そこには、国の次代を担う者達の勉強ぶりを勇者が見に行くと言う内容が、記されていた。
この物語は未成年の飲酒を奨めるものではありせん!
お酒は二十歳から!



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