「ダメに決まってんだろうが!」
俺が怒鳴ると、シルヴィアは驚き、そして見るからに不機嫌になった。
「私の魔法を知り得ているだろう? グラキエスタ相手ならば、私は十分に戦える!」
「それ以前の問題だバカ! お前は今国のトップなんだろうが! トップの人間が何はっちゃけてんだよ!
そもそも、お前がテラキオと戦ってるのが間違いなんだよ!」
「あの時はそうでもしなければ軍に多くの被害が出ていた!」
「お前が死んでたらもっと酷い状況になっていただろくが!」
「アリシアが居る。血筋が途絶えるわけではないだろう!」
「こんのバカ野郎!」
「私はこれでも女だ!」
「そー言う事を言ってんじゃねーよ!」
俺達が顔を付き合わせて怒鳴りあっていると、低音の笑い声が聞こえた。
「相変わらず、ですなお二人は。しかし、夫婦のように仲が良いのは構いませんが、今は戦時ですよ」
ドルさんが若干呆れたように笑っていた。
くそっ、確かにその通りだ。
久し振りに会ったシルヴィアとの会話のせいで、俺こそが浮き足だっていたみたいぜ。
「ふ、夫婦!?」
「お前はお前で逐一反応するな!」
些細な事でリンゴみたいに顔真っ赤にさせやがって…っ。
「ちっ…。リリルリー、グラキエスタが来る正確な時間はわかるか?」
「凍てつく麗人?……ううん。そんなヒト、来ないよ?」
「は?」
リリルリーがわけがわからないと言わんばかりに首を傾げる。いやいや、貴女こそ何を言ってるんでせうか、この人は。
「いや、今さっき言ったばっかりじゃねぇか。グラキエスタが来るって……」
「ううん、私はそんは事言った覚えはないよ?」
おい、なんか急に一本の髪の毛がアンテナのように立った姿を幻視したぞ俺は。
え、何?この戦場に居て今の俺が苦戦する相手………公爵級並みってんならグラキエスタだけだろ?
見た目中性的なウェントスとも、テラキオやもう一人の野郎と裸の付き合いをした時に野郎だと確認し、落ち込んだ。
となると公爵級以外の魔族? 確かに理に敵ってはいるが、それはそれでないだろう。
確かに聖剣を用いない時の俺は劣化して大幅に戦力が下がる。
が、それでも公爵級相手に負けないくらいには強い。
数で攻められもしなけりゃ負ける要素が無い。
いや、違う。
違うのだ。
そもそも第一考から間違えている。
誰が最初から戦場に居た三人と言った?
そもそも戦場に居たのはグラキエスタとウェントスの二人。
テラキオのおっさんも、途中から現れたのだ。誰が来ても、おかしくはない!
「っ…………一つ聞きたい、リリルリー。……その女の髪は、何色だ?」
「え?」
ちくしょう、最悪だ。折角聖剣無しでおっさんを帰らせる事が出来たのに、意味が無くなった!
「?……どうしたと言うのだ?……私の後ろに………っ!?」
シルヴィアが俺の視線に気づき、後ろに振り返る。
そこには、空から降って来た、赤毛の女が居た。
猫のように三つの足で地面に降り、片手に真っ赤に燃える斧槍を持った、肌の青白い、魔族。
炎のように紅いその髪が、降り立った衝撃で持ち上がり、風になびく。
「あんな、バカみたいに赤い髪だったか?」
「うん。……あ、あの人だ」
今気づきましたと言わんばかりの少女。その少女が指差した場所に居たのは、
「テラキオがやられたっつーから来てみれば………なんだこりゃ? シルヴィア、あんたじゃあないよな?……つーとなんだ?そこのちんちくりんな格好の野郎が倒したってのか?あ?」
みてくれだけは俺好みな、常時絶ギレ状態の魔族。
六刃将、炎を司る戦姫。
「アグニエラ………!」
本来の名前を、尊き炎。
六刃将の中でも最強と言える実力を持つ『断罪のアグニエラ』だ。
今の俺じゃ、リリルリーの時の魔術による加速を用いても勝てない相手。
それもその筈だ。単純な攻撃力でテラキオのおっさんと並び、速度でアイツを越える。更に物理攻撃は意味を成さず、不死。
六刃将がそれぞれ高い能力を持っていても、徒党を組んでも、彼女だけは殺せない。
勇者や魔王と並ぶ程の不死性を持つ、不死鳥と同じ性質の転生を繰り返すのだ。
そしてその不死性に加え魔族最強クラスの強さ、そして後先考えない脳筋な頭。
殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても殺しても、喜んで炎の斧槍を振り回す狂人。
相手の汗が焼ける臭いが大好きな変態。
奴にだけは、このままじゃ勝てない。
「……あ゛?」
「え?」
何か、ゴムみたいなもんを引っ張ってちぎれたような音が聞こえた。バチっ…違う。ブツっ……これも違う。
「テメェ……俺を、その名前で呼んだな?」
あ、そーか、ぶちっ……か。
納得納得。だってアグニエラの表情が凄い事になってんだもん。
し、しまったあああああぁっ!!
キレてるあいつに、火に油を注いじゃったぞ!?
アグニエラだけに……なーんつっ(ry
「死ねよ、人間」
首もとに熱さを感じ、俺の意識は一度そこで切れた。
少し短めですがキリの良い所で。
風邪に関してはほぼ完治しています。ご心配おかけしました。
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