東日本大震災の被災地で最多の仮設住宅がある宮城県石巻市で、プロパンガスの契約業者を変更する住民が相次いでいる。安価で提供する市外の業者が進出したためだ。地元の業者も対抗し、値下げする動きが出てきた。光熱費の負担が増大する季節を迎え、住民はガス料金引き下げを歓迎している。
石巻仮設住宅自治連合推進会によると、推進会に所属する仮設住宅団地で、今月末までに6団地の計300世帯が名取市の業者に変更する見込みだという。
推進会が今夏、加入世帯のプロパンガス料金を調べたところ、1立方メートル当たり480〜520円程度だった。名取市の業者が提示している価格は380円で、100円以上安い。
契約を切り替えた仮設住宅で暮らす主婦(68)は「年間2万円以上安くなる計算。これから住宅再建などにお金がかかるので助かる」と喜ぶ。
新たな業者を橋渡ししたのは、一般社団法人プロパンガス料金適正化協会(東京)。昨年夏、協会の問い合わせで推進会が料金を調査し、東京などと比較して割高なことが分かった。
一部の仮設住宅団地は協会の支援を受け、地元業者に要望書を提出するなど値下げ交渉をしてきた。業者側の反応が鈍かったことから、要望している価格での供給を確約する業者を紹介した。
名取市の業者は年内に、石巻市に営業所を開設する予定。契約が500世帯になれば、さらに30円引き下げる方針も示している。
こうした事態を受け、地元業者も契約引き留めに乗り出した。380円に値下げするチラシを配布した業者は「住民が安いガスを求めるのは分かる。無制限の値下げは難しいが、料金には保安や緊急時の対応など総合的なサービスも含んでいると周知しながら、できる限りの企業努力をしていきたい」と説明する。
推進会の内海徹事務局長は「震災で何もかも失った上に高額な料金を払い続けてきた。住民の選択肢が増え、他の業者も適正価格にしてくれればいい」と話した。