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教科書検定―「重大な欠陥」の欠陥

執筆者と教科書会社を萎縮させる「改革」はやめるべきだ。文部科学省が教科書検定の基準改定を打ち出した。一番の問題は、「改正教育基本法の教育目標などに[記事全文]

核燃料の搬出―区切りにはほど遠い

福島第一原発の4号機で、核燃料の取り出しが始まった。危険性を下げるうえで重要な措置である。ただ、作業には1年以上かかる。福島第一全体の状況が飛躍的に改善するわけでもない[記事全文]

教科書検定―「重大な欠陥」の欠陥

 執筆者と教科書会社を萎縮させる「改革」はやめるべきだ。

 文部科学省が教科書検定の基準改定を打ち出した。

 一番の問題は、「改正教育基本法の教育目標などに照らし、重大な欠陥がある場合」は不合格にできるという点だ。

 その教育目標には、愛国心や郷土愛、国際協調の態度を養うといった項目がある。具体的には歴史や公民の教科書検定にかかわってくる。

 「目標に照らして重大な欠陥があれば、個々の記述の適否を吟味するまでもなく不合格とする」と下村文科相は説明する。

 個々の記述を吟味しないで、全体として重大な欠陥があるなどと判断できるのか。

 一つ一つ記述を積み上げ、あれもこれも一つの史観に偏っているから不合格だと言われるならまだしも反論はできる。が、「全体に自虐的だ」とか「自国中心主義に過ぎる」とか切り捨てられてしまうならば、抗弁も検証もしようがない。恣意(しい)的な検定になる危険がある。

 歴史学者の家永三郎氏との30年を超える教科書裁判で、国が史実の解釈に介入する是非が問われた。この経験から文科省は価値観への立ち入りを控え、学説に基づく客観的な指摘中心の検定姿勢にシフトした。日本の歴史教科書は他国より冷静で客観的だという評価が、海外の学者から出るようになった。

 書き手や出版社が、指導要領の枠内で特色ある教科書を自由に作り、採択を競い合う。そのことが教科書の質を高め、記述の妥当さを支えてきた。

 今回の改定方針は、その大転換になりかねない。抽象的な基準で不合格にされるかもしれないとなれば、執筆者や出版社は萎縮する。検定制度の根幹である多様さと客観主義が損なわれる。撤回すべきだ。

 文科省は、政府見解がある場合はそれをふまえた記述にすることも求めている。

 賛否にかかわらず自国の公式見解を知っておく必要はある。ただ、今でも、政府見解がある領土問題や、諸説ある南京大虐殺の犠牲者数の記述には、しばしば検定意見がつく。複数の説に目配りする定めがすでに検定基準にある。政府見解を強調する意図には首をかしげる。

 「もちろん、政府見解と違う見解を併記することまで否定しない」と文科相は語る。

 検定はこの一線を越えてはならないし、書く側も異論の併記をためらうべきではない。それが文科省のいう「バランスよく教えられる教科書」を作るために最も大切なことだからだ。

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核燃料の搬出―区切りにはほど遠い

 福島第一原発の4号機で、核燃料の取り出しが始まった。危険性を下げるうえで重要な措置である。

 ただ、作業には1年以上かかる。福島第一全体の状況が飛躍的に改善するわけでもない。原子炉本体が破損した1〜3号機に地下水が流入し、放射能汚染水となっている状況は何も変わっていない。

 電力業界や政府は、局所的な前進をことさらに強調して、国民をごまかしてはならない。常に全体状況を誇張なしに伝えていくべきである。

 大震災当時、4号機は定期検査のため停止中で、1〜3号機のような炉心溶融は起きなかった。だが、3号機から漏れたとみられる水素が爆発し、建屋は大きく壊れた。

 4号機の建屋上部にある燃料プールには1533体もの燃料集合体が入っている。1〜3号機の炉内にあった燃料集合体の合計1496体よりも多い。

 燃料集合体は、核燃料が自然に熱を出すので冷やし続けなければならない。燃料プールの水が抜けると、燃料集合体は過熱し火災を起こす恐れがある。万一、こうした事態になるとプルトニウムを含む大量の放射性物質が大気中にまき散らされ、手がつけられなくなる。

 余震が続き、不安定な4号機からの燃料取り出しは急務だった。だが、搬出装置やクレーンなどを一から造らねばならず、事故発生から2年8カ月たってようやく実現にこぎつけた。

 今後は燃料集合体22体が入る輸送容器をプールに沈め、燃料を1体ずつ慎重に入れていく。容器は100メートル離れた共用プールにピストン輸送し、来年中に移送を終える計画だ。

 作業自体、「潜在的には非常に大きなリスクを持っている。汚染水以上に心配なところがある」(田中俊一・原子力規制委員長)とされる。被曝(ひばく)リスクも高く、熟練作業員を確保するために、線量・労務管理がいっそう重要になる。

 スケジュール優先ではなく、安全第一で進めるべきだ。

 1〜3号機は燃料プールにある燃料取り出しさえ、開始時期が見極められずにいる。炉心で溶けてしまった燃料の取り出しには、技術開発も必要だ。

 さまざまな作業が複雑に入り組む福島第一原発で、気の抜けない作業がまた一つ始まったというのが実態である。

 燃料も共用プールに移せば終わりではない。最終的には水抜けの心配がない乾式保管容器へ移し替えるなど、より安全な道を考えるべきだろう。

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