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疑念消えぬ秘密保護法案に賛成できない

2013/11/16付
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 特定秘密保護法案の審議が国会で続いている。政府・与党は並行して野党側との修正協議を急ぎ、今国会中に成立させる構えだ。

 安全保障にかかわる機密の漏洩を防ぐ枠組みが必要なことは理解できる。だがこの法案は依然として、国民の知る権利を損ないかねない問題を抱えたままだ。

 これまでの国会審議では、疑念がむしろ深まった印象さえある。このままの形で法案を成立させることには賛成できない。徹底した見直しが必要である。

 法案では防衛、外交、スパイ活動、テロの4分野で、特に秘匿すべきものについて各省の大臣が特定秘密に指定する。公務員がこれを外部に漏らした場合は、最長で懲役10年の刑罰を科す。

 法案が定めた秘密に指定できる範囲は、曖昧で広すぎる。政権や省庁が不都合な情報を隠すなど恣意的に利用するおそれがある。何が秘密なのか分からないまま、秘密が際限なく広がってしまう。

 指定できる対象は徹底して絞り込み、明確にしなければならない。そのうえで指定の適否を判断する第三者機関が必要となる。

 指定の期間は5年だが、何度でも延長できるので、永遠に秘密とされる可能性もある。最後は指定を解いて開示し、後世に検証できる仕組みが欠かせない。どうしても開示できない内容のものは、「護衛艦の性能」「自衛隊の暗号」などと理由を説明すべきだ。

 機密の漏洩でどのような場合が罪になるのかや、刑の重さについても、さらに見直しが必要ではないか。いまのままでは公務員が必要以上に萎縮してしまう。漏洩させた側にも広く刑罰を科す余地が残っているため、報道の自由を侵害し、意見が言いにくい息苦しい社会にしてしまう懸念がある。

 国会の審議では防衛相も務めた与党議員が、日々新聞が報じている首相の動静も秘密にあたるのではないかという指摘をした。懸念を裏付けるような発言である。

 法案を担当する森雅子少子化相は、成立後に秘密指定のあり方などを見直す可能性に触れた。不断の見直しといえば聞こえはいいが、懸念を解消しないまま成立を目指す姿勢は問題ではないか。

 法案が成立すると、国政調査権や国会議員の活動を制約するおそれもある。三権分立の根幹にかかわるこうした議論も深まっていない。このまま拙速に成立を急げば、将来に禍根を残すだろう。

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