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核燃料取り出し開始 廃炉作業、新段階 福島4号機

河北新報 11月19日(火)6時10分配信

 福島第1原発事故で、東京電力は18日、4号機の核燃料プールからの燃料取り出しを始めた。事故を起こした1〜4号機のプールからの燃料取り出しは初めてで、最長40年かかる廃炉作業は新たな節目を迎えた。

 1体目の取り出しは同日午後3時18分に始まった。作業員が燃料交換器を操作して毎秒1センチの速さで長さ約4.5メートルの燃料棒をつり上げ、キャスクと呼ばれる全長5.5メートルの輸送容器に水中で移した。約40分に1体のペースで作業を繰り返し、午後6時45分までに4体を装填(そうてん)し、初日の作業を終えた。
 キャスク1基には22体の燃料が入り、装填完了は19日午後になる見通し。大型クレーンでキャスクごとつり上げ、約100メートル離れた共用プールに移す。
 プール内には原子炉建屋の爆発で落下した細かいがれきが残っている。燃料を引き抜く際、がれきが引っ掛かる可能性があり、東電は「今後も安全第一で作業を進めたい」と話した。
 プールには1533体の燃料が保管されている。うち202体は扱いが容易な新燃料で、先行して取り出す。残りの1331体は強い放射線を出す使用済み燃料で、2014年末までに全てを共用プールに移す。
 4号機プールには取り出しが困難な破損燃料が3体あり、東電は専用の輸送容器の製造を検討している。
 4号機は東日本大震災時、定期検査中で原子炉内の燃料は全て隣のプールに移されていた。炉心溶融は免れたが、プールの水がなくなれば大量の放射能が漏れ出すとして、世界各国が燃料の安全な保管を政府や東電に求めていた。
 1〜3号機プールの燃料は15年度以降に取り出す計画だ。1号機プールに保管されている使用済み燃料292体のうち70体が破損していることが判明、取り出し計画への影響が懸念されている。

◎許されぬ「想定外」

 【解説】福島第1原発4号機の使用済み核燃料プールからの燃料取り出しが始まった。汚染水問題や予期せぬ停電などで「見通しが甘い」と批判を浴びてきた東京電力は、今回の取り出しを「廃炉工程が順調に進んでいる」とアピールできる数少ない機会ととらえ、当面の大きな目標に位置付けてきた。
 作業で懸念されるのは、燃料輸送容器の落下だ。プールのある建屋5階から落ちると燃料が破損する恐れがある。容器が壊れれば、大気中への放射性物質拡散という極めて深刻な事態となる。
 東電は容器の落下以外に、プールの冷却停止や水の漏えい、大地震、火災、容器運搬中のトレーラーの事故など、さまざまなトラブルを想定して対策を講じ、それぞれのケースごとに対応を決めている。だが、トラブルが同時多発したらどう対処するのか。東電は「そんなことは起こるはずがない」という。
 通常の原発の燃料取り扱いクレーンは、取り出す燃料の上部まで自動で移動するが、今回は作業員が目視で行う。さらに作業員は全面マスクを着用しており、視界が狭くなる。通常と違う作業環境で人為的ミスが起きないとは言えない。
 2年8カ月前の事故は最悪の事態がいくつも重なって起きた。来年末まで続く作業の計画に抜かりがないか、東電には慎重に確認することが求められる。もう「想定外だった」では済まされない。

最終更新:11月19日(火)8時59分

河北新報

 

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