家電に詳しい友人から聞いて、なんだかなぁと思ったお話。

カメラ付き冷蔵庫で買い忘れを防ぐ!

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東芝がカメラ付きの冷蔵庫を出しているそうな。

冷蔵庫「VEGETA(ベジータ) GR-G56FXV/GR0G51FXV」では、別売りのカメラをドアポケット内側に設置することで、外出先で庫内の様子を確認できるサービスを盛り込む。

スーパーなどで買い物するときに、自宅の冷蔵庫に何が入っているかを確認することで、買い忘れや、同じ商品をダブって購入ことを防ぐことができるという。カメラは、冷蔵庫1台につき最大3台まで設置可能で、野菜室などに設置することもできる。

東芝、スーパーで自宅の冷蔵庫の中身が確認できる「家電コンシェルジュ」サービス開始 - 家電Watch

まぁ確かに「あると便利」な機能であるようにも思います。言い換えれば「なくてもいい」というレベルでもありますが…。


カメラ別売り&月額525円!

ここまでならいいのですが、なんとカメラは別売りお値段は19,800円なり!

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そして、利用するためには「東芝フェミニティ倶楽部」への入会が必要。初期登録料1,050円、月額525円!

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これ、東芝の経営者・製品に関わる社員の方々に「あなた、2万円出して、毎月525円払って、冷蔵庫の中身を見たいですか?」と聞いてみたいですね…。契約する人いるのだろうか。


日本のモノづくりの課題

ぼくの感覚からすると、このデバイス&サービスを利用する人は、よほど金銭感覚に疎い人か、超ニッチなニーズ(「私は仕事の都合上、どうしても冷蔵庫をリアルタイムで見たいんだ」)を抱えている人にかぎられるのではないか、と感じます。

この件にかぎらず、日本の大企業がつくる製品には「とりあえず新機能を作ったから市場に出してみる」という、ある意味で逆説的なベンチャーマインドが見られることが多々あります。「開発チームがこんな機能作ったから、とりあえず宣伝して、使ってもらえるか試してみよう、えいっ」。


リーン・スタートアップ」というキーワードで議論が尽くされている話ですが、本来、製品というものは市場に投入する「前に」、そのニーズがあるかを検証するべきです。

「カメラ付き冷蔵庫」を例にすれば、エンドユーザーに入念なヒアリング、テスト利用を行ってもらい「十分な比率で課金してくれる」ことを、市場投入前に実証すべきなのです。

「ニーズの検証」を経ずに市場投入することは、開発・プロモーション費用のムダ遣いにつながります。売れないもの、使ってもらえないものを、お金を掛けて開発し、宣伝するわけですから。ドラッカーの名言に「やってはいけないことを素晴らしい効率で行うことほど無駄なことはない」ということばがあるそうですが、これは金言です。


日本のモノづくりに足りないのは「本格的な開発を始める前、市場投入をする前に、その製品・機能のニーズを検証する」という実践です

これを実践するためには、組織のあり方を作り替えるよう必要も出てくるでしょう。元半導体メーカーの人間としては、「エンジニアとマーケターの距離が遠い」「経営層が消費者ニーズを見ていない」「機能を追加することが価値になってしまっている」なんてところが、わかりやすい課題なのではないかと推察します。


「本格的な開発を始める前、市場投入をする前に、その製品・機能のニーズを検証する」というモノづくりのあり方に関しては、既に日本語でも多数の文献が翻訳されています。日本のモノづくりに関わる人が、漏れなくこれらの本を読めば、業界は一変すると思われます。もっと勉強してほしいですね。

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